Salt Lake 2002

オリンピック大会の舞台裏

オリンピック大会の舞台裏 開催危機を乗り越え大会の成功を支えた
「チームの結束力」

写真:ソルトレイク冬季オリンピック開会式セレモニーで、会場中央に炎で描かれた五輪マーク

21世紀初の冬季オリンピック、ソルトレイク冬季大会で、パナソニックはシドニー大会に引き続き、大型映像システムであるアストロビジョン、音響システムのRAMSA、さらに数多くの放送機器を納入。そのシステム運営を担った。冬季オリンピックの場合、降雪が始まる前に機器の設置や工事の準備を済ませておかなければならない。雪や寒さへの対策を万全にするためのテストなどを、山間部で降雪が始まる10月までに取りかかることが必要だからだ。刻々と迫るタイムリミット。しかし、思うように動き出せない理由があった。

思いも寄らぬ同時多発テロの影響

大会運営の機器を納入するサプライヤー契約が最終段階へと差し掛かった9月、あの米同時多発テロが起きたのだ。せっかく合意しかけていた契約も、危機管理に対応するために内容の見直しを迫られた。結局、最終合意に達したのは12月、日本に契約書が到着したのはクリスマスの直後だった。急ピッチで工事を進めたいパナソニック。通常よりも短い納期スケジュールに、システム担当参事の大町亮一は焦りを募らせた。

写真:ソルトレイク冬季オリンピック会場に設置された大型映像表示装置アストロビジョンに映し出された五輪マークとソルトレイク冬季オリンピックロゴ

「工事現場では、会場ごとに一枚一枚パスを申請し、朝6時から夜11時まで作業をする。しかも、その日のうちに作業が終わらないとパスが切れてしまう。まさに分刻みのスケジュールでした」
しかし、心強い援軍もいた。パナソニックが手を組んだ現地のパートナーは、ショービジネスの本場であるアメリカでも最大級の規模となるスポーツイベント、スーパーボウルの演出を手がけたこともあるチームだった。ビッグ・プロジェクトに慣れているスタッフとともにパナソニックは綱渡りのスケジュールを手際よくこなしていった。

写真:身分証明書を首から下げた工事現場の警備員やスタッフ

大会を華々しく締めくくった映像と音響

17日間にわたる熱戦の最後、夜空を染める花火を合図に閉会式が始まった。パナソニックの映像、音響システムのスタッフも大会を華々しく締めくくるための最後の準備を整えていた。スタジアムに設置されたパナソニックのアストロビジョンが、次回開催地イタリアのトリノ市長に手渡されたオリンピック旗を映し出すと、場内から地鳴りのような大歓声が沸き起こった。そして開会式のアトラクション“光の子”で少年が持っていた明かりが、トリノから来た10歳の少女の小さな手に。“祈り”の歌とともに聖火が静かに消えると、大会は無事に幕を閉じた。パナソニックのスタッフは誰からともなく、固く握手を交わし成功の喜びを噛みしめた。

写真:ソルトレイク冬季オリンピック会場でスピーカーの設置作業をしている音響システムのスタッフ