SPORTS CHANGE MAKERS

2021-04-15

パネルディスカッション:テクノロジーで壁を超えることは可能か?

若い学生のアイデアとテクノロジーで世界に存在するさまざまな壁を超えるチカラと可能性を、スポーツに吹き込むことができるだろうか?第1回SPORTS CHANGE MAKERSのテーマは、”GOING BEYOND BARRIERS”。2021年3月9日に開催したSPORTS CHANGE MAKERSプレイベント in Mirror Fieldでは、「スポーツ×テクノロジーでバリアを超えることができるのか」をテーマにパネルディスカッションが行われ、テクノロジーの持つ可能性や事例を語り合った。

小谷実可子さん(東京2020組織委員会 スポーツディレクター)

アーティスティックスイミングの選手時代に選手村で電話ボックスを探して、自分が通話する番が来るのを待っていた経験がある小谷さんは、スマートフォンの出現が大きいと語った。それは、単に通話が出来るというだけでなく、気軽に動画を撮影出来ることが、アーティスティックスイミングの競技を大きく飛躍させている。採点競技である以上、自分でいくら出来たと思っても、チームやパートナーと合っていると思っても、審判が違う角度から見て、違うと感じたらマイナス対象になってしまう。指導者の目視による確認から、ビデオカメラやスマートフォンで色々な角度から動画を撮影して確認することにより、どこから見てもシンクロされている演技を作り上げられるようになったと語った。

コロナ禍においては、スポーツ界のあらゆる会議にリモートで参加したり、興味のある大学のオンライン授業に参加したり、これまで時間や場所の壁で出来なかった勉強を重ねる機会が広がった。また、選手達が頑張ってきた成果を発揮する場がコロナによって失われたことは気の毒だが、アップロードした動画がスカウトの目に留まって人生が開けたということもあった。コロナによる大きな喪失や打撃はあるが、テクノロジーの力とアイデア、そして諦めないで前を向くという心があったことで可能性が広がった事例を紹介し、テクノロジーにより選択肢が増えたと言及した。

写真:小谷実可子さん(東京2020組織委員会 スポーツディレクター)

澤邊芳明さん(東京2020組織委員会 アドバイザー)

澤邉さんは、人類による壁を超える挑戦は今始まったものではない。過去からテクノロジーを少しづつ蓄積して今に繋がっていると語った。そして、SDGsの様な人類全体が持っている課題解決をITやICT技術を活用してこの10年ぐらい挑んでいくことで、「物理的な壁」は大分減らすことは出来るが、「精神的な壁」や「気持ちの壁」はテクノロジーだけでは変えられないと指摘した。

テクノロジーだけでは変えられない「精神的な壁」や「気持ちの壁」は、人が努力して意識を変えていかねばならない。テクノロジーの進化によって可処分時間が増えた時に余暇を楽しむことが出来ないと、何の為にテクノロジーを進化させてきたのか。本筋を問われるタイミングが来ると予想した。コロナ禍でスポーツは不要不急の扱いをされたが、スポーツの持つ喜怒哀楽や一喜一憂が人生を豊かにしてくるものであるはず。テクノロジーの進化と供に、心の満たし方を考えていくことが大事と語った。

写真:澤邊芳明さん(東京2020組織委員会 アドバイザー)

川合悠加さん(パナソニック株式会社 アプライアンス社 Game Changer Catapult)

パナソニックで新規事業創出プロジェクトに携わっている川合さんは、自身が開発検討を担当する「SPODIT(スポディット)」を事例として紹介した。SPODITは主に子どものスポーツを熱心に応援している保護者の方々をターゲットにした、スポーツの試合映像の自動撮影から編集・配信までを行うサービス。観戦に行きたくても、遠方に住んでいたり、コロナ禍で人数制限されたり、仕事の都合で行けなかったり、様々な理由で観戦に行けない人達がいる。観戦に行けても、子どもの撮影に集中するあまり、レンズ越しにしか観られなかったり、応援に集中出来ない人達も沢山いる。そういう人達にサービスを通じて、子どもの頑張りを観たり、記録を残せることで、スポーツの楽しみや喜びを親子で共有できる。今のテクノロジーがあれば、その様な世界が実現出来ると信じており、今後もサービスの開発に努めていきたいと宣言した。

写真:川合悠加さん(パナソニック株式会社 アプライアンス社 Game Changer Catapult)

横瀬健斗さん(SPORTS CHANGE MAKERS日本代表・京都工芸繊維大学 大学院生)

横瀬さんは、スマートフォンやインターネットにより、いつでもどこでもスポーツ大会を観られるようになった。それは一つのテクノロジーのあり方で、スポーツを観るという“受動的”な機会が増えている良い側面。今後はスポーツをするという“能動的”な機会が増えていくことに期待していると語った。

横瀬さんは、子ども達がスポーツを観るだけでなく、テクノロジーを活用して自分がやってみようと挑戦する心を促せるアイデアをSPORTS CHANGE MAKERSに募集し、日本代表に選出された。横瀬さんが、2021年3月9日に開催したSPORTS CHANGE MAKERSプレイベント in Mirror Field で8月に予定されている最終プレゼンテーションに向けての語った意気込みの詳細はこちらから。

写真:横瀬健斗さん(SPORTS CHANGE MAKERS日本代表・京都工芸繊維大学 大学院生)

モデレーターのITジャーナリストの林さんは、テクノロジーは、新たな可能性を切り開いて、新しい知見を見せてくれる部分もあれば、不可能を可能にして壁を超える部分に貢献する。一方でスポーツは、感動を与えたり、共感を生み出したり、元気を与えたりする力を持っている。スポーツとテクノロジーが合わさることによって次々と新しいものが生まれていくのではないかとまとめ、パネルディスカッションを閉幕した。

写真:林信行さん(モデレーター ITジャーナリスト)

世の中にはテクノロジーだけでは超えられない壁は確かに存在するが、テクノロジーを活用することで超えられる壁も存在する。また、既存のテクノロジーも違った視点のアイデアで活用することで超えることの出来る壁も増えるだろう。SPORTS CHANGE MAKERSでは、テクノロジーが社会に存在するあらゆる壁を超え、より良い未来つくることに貢献出来ると信じ、今後も学生達と供に挑戦の歩を進めていく。

パネルディスカッション全編