第19回:シリーズ『AI画像認識 再入門』(2/2)

「AI画像認識」実践活用の手引き

業務で使う頭脳はユーザーが作る

図1をご覧いただくと、AI画像認識の頭脳作りはそれほど難しいことではないように思えるはずです。

ただし、画像認識の頭脳を使って最終的にどんな業務システムを実現するかの目的が曖昧であると、「どのような頭脳を作るべきか」「学習用にどのような画像をどう用意(撮影)すべきか」「評価用画像をどう用意(撮影)すべきか」が見えなくなり、実活用に至らないまま、プロジェクトが頓挫してしまう恐れがあります。

また、AI画像認識を使う目的が明確であっても、教師データの作成がうまくいかず、思うように機械学習が進まない場合もあります。その要因としてよく見受けられるのが、画像認識の頭脳作りに、実際にそれを利用することになる現場の方が関与していないケースです。

例えば、製造ラインでの検品に、AI画像認識を使うと想定しましょう。このとき、良品/不良品の判定に必要とされるであろう画像を撮影して教師データを作っていく必要がありますが、それを行う上で大切なポイントは、検品を実際に担当している方が、どのような条件の下で、商品のどこをどうチェックし、何を基準に良品/不良品を判定しているかです。それに沿ったかたちで学習用画像を撮影し、教師データを作ったり、評価用画像を撮影したりしなければ、現場で役に立つ頭脳は作れません。

その意味で、業務で使う画像認識の頭脳は、それを実際に使う現場の方が自ら作っていかなければなりません。

そこで、パナソニック ソリューションテクノロジーでは「AI画像認識エンジン構築サービス」の中で、現場のユーザーによる頭脳作りを支援する機能を提供しています。

そうした機能の一つは、教師データを簡単に作れるようにする「ラベル作成ツール」(図2)です。このツールを使えば、極めて簡単な操作で、画像から認識対象物を指定し、それが何であるかの名称(ラベル)を付与して“教師データ”を作成することができます。

図2:ラベル作成ツールの活用イメージ
図2:ラベル作成ツールの活用イメージ
図3:「学習評価ツール」の活用イメージ
図3:「学習評価ツール」の活用イメージ

また、プログラミングやディープラーニングの知識がなくてもAI(の頭脳)が作成できる「学習設定ツール」や、実際の画面を見ながら、認識精度を確認するための「学習評価ツール」(図3)なども提供しています。

さらに、AI画像認識エンジン構築サービスでは、AI(の頭脳)を使用して画像認識処理を行う「画像認識エンジン(ライブラリー)」の作成も行います。このライブラリーは、通常のアプリケーション作成の手順を使って、業務システムに組み込むことが可能です(図4)。

図4:システムへ組み込み可能な画像認識ライブラリーの活用イメージ
図4:システムへ組み込み可能な画像認識ライブラリーの活用イメージ

AI画像認識が高める業務効率

パナソニック ソリューションテクノロジーのAI画像認識エンジン構築サービスは、すでにさまざまな業務の現場で導入が始まっています。一例は、食品製造ラインにおける検品システムへの適用です。

商品製造ラインは自動化が進み、検品についても「パターンマッチング」の技術を使ったシステムにより効率化が図られてきました。ただし、パターンマッチングを使った検品のシステムは、認識対象物の正確な計測によって作られたパターンと、インプットされたモノのパターンとのマッチングによって、良/不良を判定する仕組みです。認識対象の形状が常に一定である場合には有効ですが、食品のように、同じ正常品であっても形状にバラツキが大きいものの検品には適用しづらいという問題がありました。そうしたパターンマッチングの足りない能力を補完し、食品の加工不良検知の精度を上げる仕組みとして、AI画像認識が使われ始めているのです。

また、食品と同様に、パターンマッチングでは検知できないような小さなサイズのキズや、一定ではない形状のひび割れの検出にも、AI画像認識が使われています。

さらに、物流倉庫や製造ラインでは、段ボール箱に添付されたラベル内容を識別したり、梱包の不良を検知するシステムにAI画像認識を適用するなど、幅広い用途に活用の可能性が広がっています。

このように、ディープラーニングを使ったAI画像認識は、これまでの技術では成しえなかったことを可能にし、現場業務の効率化に役立てられ始めています。では、こうしたAIの技術は、今後どのように発展していくのでしょうか。次回は、その未来について検討します。

―― 監修 ――

中尾 雅俊

 

中尾 雅俊
パナソニック ソリューションテクノロジー株式会社
産業IoT SI部 ソリューション推進一課 主事

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