世界にひとつのおもてなし。

仲居頭

上田 舞

上田舞さん(仲居頭)の写真

あのお客さまと出会わなければ、いま頃なにをしていたのだろう、と思うときがあります。少なくとも仲居の仕事はつづけてなかったのではないでしょうか。
あれは、12年前。こちらで働きはじめて7カ月めの頃、私は一本の電話を受けました。相手は沖縄の方で、今度そちらの宿に泊まりたいと思っているのだけど行き方を教えてくれないか、とのことでした。山梨の山奥にある宿ですから、すぐに時間や乗り継ぎを調べ、手書きしたFAXをお送りしました。それから1カ月くらい後でしょうか。玄関でお出迎えをしていると、私のお送りしたFAXを手にした年配のご夫婦が、いらっしゃったのです。お話を伺うと、実は他にも候補があったのだけど、この手書きFAXが嬉しくて、ここに決めたとのこと。そしてお客さまは「できれば担当をあなたにお願いしたい」とおっしゃいました。あのときの気持ちをなんと表現するのか、いまでも分かりません。たぶん仲居だけが知る喜びです。精一杯お給仕をさせていただきましたが、お客さまからはそれ以上の言葉にできないものをいただきました。
すべてが変わりました。一人ひとりのお客さまに合ったおもてなしが、どうしたらできるかを考えるようになりました。お叱りを受けることもありましたがその度に考えて。「また来るよ」って言っていただける度、この仕事がもっと好きになって。気づくと仲居頭になっていました。若い子にいろいろ言わなくてはいけない立場ですが、あまり細かな指示をしないよう気をつけています。義務になってしまいますと、おもてなしではなくなってしまいますから。お客さまを見て、喜んでいただけることを考え本心で動く。そのとき、そのお客さまだけのおもてなし。それが、私の考えるおもてなしです。
こちらは山奥にある旅館です。はじめてのお客さまは、本当にこんなところにあるのかと途中で心細くなられる方も多いです。ですから到着されたとき、「お帰りなさいませ」の心でお出迎えすることが私たちの最初のおもてなしになります。

お仕事中の上田舞さん(仲居頭)の写真

上田 舞

西暦705年創業、1300年をこえる歴史を持つ老舗温泉旅館「慶雲館」の仲居頭。「目配り・気配り・心配り」を心掛けたおもてなしが信条。

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