オンラインイベント「ソウゾウするちから-ヒトのココロを想い、トキのあり方を考える-」イベントレポート

パナソニックセンター東京(以下、PC東京)では、社内外からさまざまな分野のゲストを招き、オンライン上で誰でも参加可能なウェビナー形式のイベント「ソウゾウするちから」シリーズを、5月より継続して開催しています。7月22日(水曜日)には、その第3弾としてデザインのもつソウゾウ力で社会について考えながら自分を見つめなおすトークイベントを開催。空間デザインのプロフェッショナル、株式会社乃村工藝社 エグゼクティブ クリエイティブ ディレクターの平田さんとパナソニック株式会社 デザイン本部 本部長の臼井さんをお招きし、デザイナー目線で変わりゆく日常と自分らしい生き方についてお話しいただきました。
ファシリテーターはアプライアンス社デザインセンター所属の今枝さん。3つのトークテーマについて視聴者意見も交えながら話を展開していきました。

写真:平田さん
写真:臼井さん
写真:今枝さん

「もう一度自分の原点に戻ってきている気がする」

最初のトークテーマは、「デザイナーとは?デザインとは?」。お二人がデザイナーの仕事に就かれたときから
その仕事に求められることがどう変化しているか、それぞれの思いを伺いました。
臼井さんは、入社時は色や形を考えスケッチを書く日々だったけれど、それをどう伝えるかという経営戦略の領域にも入っているのが現状、とその変遷を説明。しかし、海外での仕事もこなすなかで、日本のデザインとは?日本の美しさとは?と聞かれる度に、改めて学生時代に学んだことを思い返すようになったと自身の変化を語りました。「もう一度元に戻ってきた気がする。とデザイン部門の責任者として、改めてデザインについてちゃんと語れなければならない。その原点回帰している気がして、楽しい。」
平田さんは、「今までの空間デザインの役割は、集客するためにデザインすることでした」とご自身の仕事にふれつつ、コロナ禍をうけ今までの“当たり前”が変わっていることに言及。しかし、平田さんは、「この期間に多くの人が、自ら創ることの喜びを体験した」という変化にも着目されました。確かに、在宅期間にはパンケーキミックスが売り切れるなど、多くの人が何かをつくる楽しみを改めて感じる機会も多くありました。「皆が考えてクリエイティブすればもっと豊かで心がワクワクする社会になる。空間デザインも今までの定義を壊した時に何ができるのか、ワクワクしながら過ごしている」と笑顔で語りました。

質問 今のお仕事に就かれた当初と比べ、「デザイナー」という仕事への期待はどのように変化していますか。―デザインという言葉の定義の変化―

一人ひとりに丁寧に向き合う

次の「社会課題とデザイン」というテーマでは、「今日本に必要とされている空間は何か」という20代女性からの質問を取り上げながら話を膨らめます。この問いに対し、平田さんは「正直に言うと正解は無い。教科書通りの固定的な答えがない時代になった。今まで大勢を集めて一様の発信をする時代から、多様性を意識し、パーソナルに一人ひとりの価値観に合わせて丁寧に発信することが求められていると思う。」とこたえました。
臼井さんは、「丁寧なくらし」という言葉で自身の生活を例にあげながらこの問いに向き合います。「これまで出張などで家を空けることが多かったが、コロナ禍で、家で何もしないということが凄く贅沢な時間だと感じた。今までは、皆急いでいたように思う。急ぐと何事も雑になる。丁寧にしようとするとゆっくりになるが、深く物事を考えることができる。」
ゆったりと丁寧に過ごせる空間。それぞれの価値観に合致し、それぞれの速度で過ごすことがゆるされる空間が、今求められているのかもしれません。そこで向き合うべき「自分」については、イベント後半で深く考察します。

愛されるものをつくること

次に、世界で共有されている課題としてSDGsについてもお話しをうかがいました。臼井さんは「議論のフェーズは済んでいて、今は実行フェーズにあると思う。生活レベルからでも、仕事の中でも、自分ができることはいろいろある。大小関係なく、まずはアクションを起こすことが大事」と思いを語りました。
SDGsの中には、「作る責任と使う責任」という項目もあります。平田さんはデザイナーの大切な役割として「愛されるものをつくること」をあげました。「消費速度を少し遅らせてもいいかなと思う。大切にしたいと思えば簡単に捨てずに、メンテナンスもされる。そしてそれを買った側は、一生大事にしていくマインドが大事」。
メーカーのデザイナーとして臼井さんは、「昔は、製品の発売時しか見えていなかったが、それを使い続けていただく時間にまで責任を持ち、そこまで考えどうデザインするかを議論している」と作り手の責任に触れました。

自分らしさとは

最後のトークテーマは「自分らしさ」。イベントではチャット欄も活用しながら「自分らしいと感じるトキ・トコロは?」と参加者にも問いかけました。
平田さんは「自分探しは古くから議論されているが、よく分かっていない」と過去の哲学者にも触れながら「実は、僕もいまだに自分って何だろうと考え続けている」と思いを共有。ただ言えることは「人に生き方を決められてはいけない」と強調しました。問いについては、「こうして対談しているとき、自分の意見に対して反応してもらっている今が、一番自分らしさを感じられている」と回答しました。
臼井さんも平田さんの考えに共感を示しながら、「自分らしさは自問自答しても答えはないが、与えられた場所・コトを一生懸命やっているのが自分らしいと思っている。できないことは面白いし、難しいから気持ちが燃える。自分の気持ちがぐっと前に言っている時、そういう気持ちになれる時が自分らしいと感じる」と答えました。
チャット欄の意見では、「コロナの時代に自分らしく過ごすことが増えた。何が自分らしいかを言語化するのは難しいのは、自分らしいことしかしなくて済む時間が増えたからかもしれない」という投稿もあり、お二人も共感される場面もありました。

その後、イベント参加者から事前に寄せられた質問やチャット欄からの質問コーナーへうつりました。
参加者からの「デザインをするときのテーマは、どのようなことを考えて決めているか?」という質問に対して、臼井さんは「根っこには、喜ぶ人の顔を想像して決めている気がする。自分が面白いからとかではなく、知らないうちに誰かを想定しているのだと思う。」と回答。また「LGBTQなど、慎重に取り組むべきテーマに対して、どう向き合うべきと考えているか」という質問に平田さんは、「コロナ前の普通が壊れた今、ジェンダー観の普通なども壊してしまえば良いと思う。皆が普通という概念を取っ払うことが早いのではないか。これからのAfterコロナの新しい世界には、これまでの普通は普通でなくなる。」とアドバイスをおくり、盛況にイベントは終了しました。

質問 自分らしく・そして楽しんで仕事に取り組み、活躍なさっている方々の習慣、考え方、そして行動の共通点はどの様な事でしょうか?(20代男性)

参加者はイベント終了後のアンケートで、「当たり前の概念を壊すことはとても難しいことだけれど、壊すことはそれ以上の価値があると感じた。」「SDGsに関してお話ししてくださった内容が興味深かったので、SDGsに関するテーマで開催してほしい」とのご意見も頂きました。変化のスピードが速い現代において、自分らしさを見失わずにデザイン思考で物事を捉え、考える力を養うことの大切さを感じていました。

今回のイベントは20代を中心に若年層の参加が多くありました。また、事前アンケートやチャット欄により参加者とのコミュニケーションを取りながら、「(自分らしさを保つのにたいせつなことは)自分自身の価値基準、哲学を持ち、かつそれを実行できる精神力を兼ね備えていること。(10代女性)」という参加者の意見にお二人も感心する場面も見られました。

PC東京は今後も、オンライン上でもコミュニケーションを取りながら、互いに価値観を共有する機会や情報発信を積極的に展開していきます。

イベント終了後には、共同通信社キッズプレスセンターの子どもたちによるオンライン取材が行われました。その模様を一部ご紹介します。

Q:私はダンスをやっていて、承認欲求が良いダンスを踊る原動力になっています。『ヒトのことを考えてデザインを実現する』とのことですが、その根底にあるお二人の原動力はなんですか。

平田さん:ヒトのことを考えるとは、自分に置き換えること。色々な人がいるから、どう感じるかは分からないが、とりあえず自分に置き換えてシーンを想像する。それをベースにして、感情を空間化している。

臼井さん:好きな人にプレゼントを贈る感覚。開けたときの喜ぶ顔を想像して選ぶよね?僕らにとってのプレゼントはデザイン。相手がどう思ってくれるかと、自分らしい表現をどう出すかの掛け合わせだと思う。相手も喜んでくれると、気持ちが共有できたと感じて嬉しい。

Q:デザインとは何かを一言で表すと?

臼井さん:デザインは、お互いに豊かな気持ちになれることだと思っている。いい仕事をしたときは自分も幸せになれる。それにお金が発生してまた次につながっていく。独りよがりではないことが大切。

平田さん:アートは、認められなくても自分の表現をすること。デザインは、思いの共有。まずお客様がいないと存在価値がない。頼まれた通りにやるのは普通で終わってしまう。そこにどれだけ感動をこめられるかが大切。

Q:今の学校教育とデザインの関係をどのようにお考えですか?

平田さん:学校では、美術の時間はあるけど、デザインの時間は無い。でも学校外、例えばお母さんや友達との会話で学ぶこともある。何かが「カッコいい」と思ったら、なぜこれが心を打つのか考えてほしい。教育プログラムからはみ出ても興味があったら考えることはできる。北欧は小さいころから「私はこれを学びたい」という事に対して個々に教えていると聞いたことがある。日本の学校教育も、より主体的なものに変わっていけたらと思う。

臼井さん:実は、日々の学校生活のなかでも自然とデザインしていると思う。最近「仕事をデザインする」という言葉もあるが、デザインは対象者の課題を見つけて解決していくこと。その解決が美しいとクリエイティビティがあるといえる。文化祭をデザインする、とか数学をデザインするとか、リラックスして学校にいけるようにするには?とか。課題を解決して人を幸せな方向に導くという意味では、学校生活の中にもデザインはある。

※現在、PC東京のホームページ上で、お家で楽しめるコンテンツを掲載しています。ぜひご覧ください。
https://www.panasonic.com/jp/corporate/center-tokyo/funathome.html