1923年(大正12年)

砲弾型ランプを考案、発売

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得意先の意見を求め、市場のニーズに即して着想・開発された画期的な新製品「砲弾型ランプ」

実物宣伝で苦境を打開

所主の製品考案に対する熱意は大変なもので、夜寝るときも枕許に紙と鉛筆を置き、思いつくことがあるとメモした。

当時の自転車用の灯火はローソクか石油ランプがほとんどだった。電池式のものもあったが、2、3時間しかもたず、故障も多かった。所主は以前に自転車店に勤めていたこともあり、また夜間、自転車の灯火が消えて困った経験もあったので、電池式ランプの考案を思いついた。

約半年間、数10個の試作品を作って研究・開発を重ねた末、1923年3月、従来のものより約10倍、30~40時間も長くもつ画期的な「砲弾型電池式ランプ」を完成させた。

さっそく、問屋への売り込みを開始した。ところが、電池式は使い物にならないという先入観からか、いくら説明しても問屋では取り扱ってくれない。見通しは絶望的とも思えたが、所主は「いいものは必ず売れる」との信念から、小売店に無償で置いて回り、実際に点灯試験をした上で、結果がよければ買ってもらうという方法を採用した。これでだめなら会社はつぶれるというほどの思い切った売り出しであった。

この実物宣伝が功を奏し、小売店から次々と注文が入り始めた。

同年9月、関東大震災が起こった。幸い二人の駐在員は無事に帰ってきたが、東京方面の販売網は全滅状態になった。しかし翌年早々、出張所として再開、販路を拡大していく。