36. ランプの販売権を買い戻す 1926年(大正15年)

山本商店にランプの販売権を譲渡したものの、そのうちに、両者の間にかなりの意見の相違が出てきた。山本店主は「これは一時的な流行品である。3年間で売り切ってみせるから、心配するな」と言う。所主は、発売して1年もすると、むしろ永久的な実用商品であると確信するようになり、量産でコストを切り下げ、価格を安くして販売量を増やしていくことを提案した。ところが、山本店主は契約に固執し、この提案に反対した。

そこで、所主は考案中の角形の電池ランプについては、自分の方針で売りたいと考え、販売ルートを自転車店と電器店に分け、電器店ルートだけは松下が担当したいと申し入れた。すると、山本店主は、「契約期間中に、そういうことをするなら、ランプの販売権を返すが、その代償として1万円を払え」と言った。

所主は、あと1年半もすれば、契約期間が満了するが、ランプの普及のためには、現在考案中の角型ランプは自分の方針で売るのが最善との考えから、思い切ってこの申し出を受け入れることにし、大正15年10月、山本店主に1万円を払って販売権を買い戻し、角型ランプの生産体制を整えた。