63. 基本内規を制定 1935年(昭和10年)

当時、松下電器の業容はすでに従業員約3,500名、年間生産販売高約1,200万円に達し、製品種目も、配線器具、電熱器、電池ランプ、ラジオ受信機、小型モーターなど約600種と増加し、販売網も海外まで伸びて、創業18年もしないうちに、電気器具の有力メーカーに成長していた。

まさに旭日の進展ぶりであるが、改組はその中で断行された。このとき、社主は業容急進により、経営が放漫になり、従業員におごりの心が生まれることを戒めて、基本内規を制定した。

その第2条に、「本内規ハ松下電器産業株式会社及分立各社ノ経営ヲ行フ指導精神ヲ内規化シタル根幹原則ニシテ…」とし、全社が1つの経営理念に基づく運営がなされねばならないと明示した。

さらに、第15条に、「松下電器ガ将来如何ニ大ヲナストモ常ニ一商人ナリトノ観念ヲ忘レズ従業員マタソノ店員タル事ヲ自覚シ質実謙譲ヲ旨トシテ業務ニ処スル事」と定めた。この心得は、今日に至るまで脈々と伝えられ、全従業員の心の戒めとして、機会あるごとに強調されている。