3 モバイルパソコン編

徹底した顧客志向が生んだビジネスロングセラー

百家争鳴の中での忍従の時代

当社のコンピュータ事業は、1959(昭和34)年の科学用電子計算機「MADIC-1」の開発から始まる。1964年には大型汎用コンピュータ事業から撤退したが、小型コンピュータの事業は継続していた。1978年にプログラミング言語BASICが使える「JD-700(マイブレーン)」を発売してパソコン事業に参入したが、1980年代は国内シェア首位のNECが、日本における標準機の地位を確立していく中で、国内各社は百家争鳴の様相を呈しており、当社はIBM製パソコンのOEMや、NECに対抗するために多くの家電メーカーが採用したパソコンの共通規格であるMSXパソコンを展開していった。

「マイクロコンピュータショウ’84 大阪」に、MSXパソコンの
新製品「キングコングCF-3000」などを出展(1984 年)

熾烈な競争を勝ち抜くため、パソコンに特化した体制を構築

1990年代に入るとコンピュータ市場は急拡大、パソコンや周辺機器、ソフトウェアおよび携帯電話などの情報通信関連機器が年々倍近い勢いで伸びる中、熾烈な競争を勝ち抜くための当社の対応力は十分とはいえなかった。そこで1997年2月、パソコンの販売に特化した社内分社パナソニック・コンピューター・カンパニーと、開発・製造専門のパーソナルコンピュータ事業部を設立し、パソコンの専門性や特性に柔軟に対応できる開発・製造・販売・サービス体制を構築した。この組織再編の契機となったのが、前年の1996年に誕生した顧客を絞り込んだ2つのモバイルパソコン「タフブック」と「レッツノート」である。

パソコン事業の再編を報じた社内報『PanaNews』
(1997年)

目指したのは現場で“道具”として働けるパソコン

タフブック

※出典:VDC Quarterly Tracker, 2020Q4。台数ベース

日本でノートパソコンと言えば、まだオフィス機器のイメージが強かった1990年代半ば、既に欧米ではノートパソコンがフィールドワーク(現場作業)で使用され始めていた。しかし、埃まみれ、泥まみれの現場での使用になるため、何よりも頑丈さと防塵性が求められ、通常のノートパソコンを導入した企業は相次ぐ故障で修理コストが膨大なものになっていた。そうした中、イギリスで作業現場の様子を知った海外営業部のメンバーは「壊れないノートパソコンを提供すれば、必ずヒットする」と確信し、技術者と一緒に直接現場のお客様の声を吸い上げながら「タフなパソコン」の開発をスタートさせた。
「タフなモノ」と言わしめるためには、耐衝撃・耐振動・防滴・防塵の4つの要素が欠かせない。それらをクリアするために素材の選定、筐体のデザイン、部品のレイアウトなどを徹底的に検討し、落下試験をはじめとした様々な検証を何度も繰り返した。開発開始から3年の時を要して1996年に「タフブック」の1号機CF-25が誕生。この製品は米国国防省の厳しい性能試験(MIL規格)にも合格し、米国の警察や、電気・ガス・水道などの保守メンテ業務、過酷な工事現場での作業などに次々と採用されていった。

屋外での検査や計測で活躍
埃や泥まみれのタフな環境でも安定動作

<動画>タフブック耐久試験映像

現場のビジネスパーソンの仕事を止めない

レッツノート

※出典:IDC Japan, Japan Personal Computing Quarterly Model Analysis 2021Q1 Share By Company コンバーチブルノートPC、トラディショナルノートPCのビジネス市場(教育と官公庁を除く)において

海外向けの「タフブック」の開発と同じ頃、国内向けにはビジネスパーソン向けの独自性の高いノートパソコンの開発が進んでいた。まだ“モバイル”という言葉が一般化されていなかった当時、ターゲット顧客を「最新のプラットファーム、最新のデバイスを使うパワーユーザー」に絞り込み、彼らが気軽に持ち出して使えるパソコンの開発を目指した。コンセプトは「ユーザーの仕事を止めない」。そのために、頑丈でなおかつ軽量・高性能・長時間駆動の3点にこだわり徹底追求した。その結果、Intel Pentiumプロセッサー(120MHz)、10.4インチTFTカラー液晶、810MB HDDを搭載しながら、業界最軽量(当時)の1.47kg、新幹線の東京~大阪間の出張でもバッテリーが切れない、小型軽量、長時間駆動を実現したノートパソコンAL-N1が誕生。
「世界中のビジネスパーソンのカバンに、紙のノートのように収まりが良く、持ち運びができるパソコン」という意味を込めて、「レッツノート」という愛称が付けられた。高性能と軽さを両立したこの製品は一気に注目を浴び大ヒット。後継機種が次々と発売され、ビジネスモバイルパソコン市場を開拓していった。

ノートのようにビジネスバッグに収まる
外出先の屋外でも気軽に操作可能
(左から)「タフブック」CF-25、「レッツノート」AL-N1

(左から)「タフブック」CF-25、「レッツノート」AL-N1

関連リンク

パナソニック ミュージアム