■1927年 ナショナルランプの三行広告
1927(昭和2)年4月9日、大阪朝日新聞の第8面に「買って安心 使って徳用 ナショナルランプ」とうたう小さな広告が載った。後に日本の家電の代名詞となるナショナルが、初めてマスメディアに登場したのである。それから45年を経た1972年、松下幸之助はその年の経営方針発表会で、この広告を回想し、次のように語った。「ナショナルランプを考案しまして、これを世間に出す。それには第一に宣伝ですが、当時は資金は乏しいし、力もありませんから、新聞に広告を出すということは並みたいていではなかったのです。しかし、やりたいので、三行広告を出すことにした。私らにとっては大金を出すことになるわけですから、長い時間をかけて十分検討しました。『買って安心、使って徳用、ナショナルランプ』、これだけの文句ですが、それで三日かかったのです。なぜ三日もかかったかといいますと、その字の太さ、字と字の間隔、また周囲から見て、字はどういうような感覚になるかということを考えぬいたからです」。