埼玉

父から子へ、受け継がれたものづくりの技。

「製品は工芸品のようでなければいけない」――創業者松下幸之助は時に語り、大量生産でも工芸品のような精密さを求めていました。

陶芸、漆芸、染織、金工、木竹工さまざまな素材を駆使し伝統の技を磨き、時代の息吹を取り入れることで成り立つ日本の工芸作品。ここに、松下幸之助は『ものづくりのめざすべき姿』を見出し、作品のつくり手である工芸家を支援することで、日本のものづくりを未来に伝えていきたいと考えていました。そして、日本工芸会の役員を務め、資金面でも支援すると共に、工芸家との親交を深めていきました。私たちは松下幸之助の遺志を継ぎ、現在も、京都にある『松下真々庵』に、集めた工芸品を展示し伝統工芸の普及に努めています。

下でご覧の作品も、そのひとつ。埼玉県春日部市に在住の漆芸家、親子二代にわたって人間国宝に認定された増村紀一郎氏による『乾漆葉盤(かんしつようばん)』です。昭和16年、漆芸家、増村益城氏の長男として生まれた増村紀一郎氏は、父に伝統的なきゅう漆技能を学び、東京藝術大学大学院を修了後、宮内庁正倉院宝物『御物漆皮袈裟箱(おんものしっぴけさばこ)第1号』の復元にも関わるなど漆芸を極めました。「人の心を豊かにするために、私は工芸品をつくってきました。創業以来、人のくらしを豊かにするために製品をつくってこられたパナソニック。工芸品と工業製品の違いはあれど、通じ合うものを感じます」と、増村紀一郎氏は語ってくださいました。一方、増村益城氏とは、昭和55年に松下幸之助が、さまざまな分野の人間国宝を『松下美術 苑真々庵(現・松下真々庵)』にお招きした際、ご来会いただいたご縁があります。父の増村益城氏から子の増村紀一郎氏へ、たゆまぬ鍛錬と研鑽により受け継がれた、人間国宝のきゅう漆技能。それをお手本に、私たちも、ものづくりの技と心を絶やすことなく、未来につないでまいります。

大正7年の創業以来、私たちがここまで歩んでこられたことは埼玉のみなさまをはじめとする、たくさんの方々のご愛顧とご信頼の賜物と心より感謝申し上げます。これからも変わらぬご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

おかげさまで、パナソニックは創業100周年を迎えました。