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いわゆる「普通の新入社員」だった僕が、始動 Next Innovator 2018を経てシリコンバレーに行くまで

今回ご紹介するのは、普通の新入社員だった森川が社内のビジネスコンテストに応募し、始動 Next Innovator2018へ応募・選出、シリコンバレー派遣メンバーに選抜されるまでのお話。

どんな人に出会い、どんな機会を得て、どんなことを考え、行動したのか。そして、なぜそもそも自分が解決すべきペイン(課題)をみつけられたのか。

「新規事業をいつかはやってみたいけど・・・自分にできるのかな?」と思いながら普通の学生生活を送っている人たちに向けて送るメッセージとは。詳しく話を聞いてみました。

【森川 悠(もりかわ ゆう)】 ーパナソニック株式会社 アプライアンス社 キッチンアプライアンス事業部

2013年立命館大学理工学部を卒業後、同大学大学院へ進学し2015年理工学研究科機械システム専攻博士前期課程を修了、新卒でパナソニックに入社。現職まで卓上型食洗機の設計開発に従事。

入社2年目から社内ビジネスコンテスト(Game Changer Catapult)に応募し、2017年 同ビジネスコンテスト通過。2018年には、SXSW(サウスバイサウスウェスト)に出展し、始動 Next Innovator2018へ応募・選出、シリコンバレー派遣メンバーに選抜された。

「及第点でいいや」と思っていた僕が、挑戦できた環境

――ご自身のことを「いわゆる普通の学生」だったと学生時代をそんな風におっしゃっていますが、具体的にどのような学生時代でしたか。

大したことのない学生でしたよ。(笑)学生時代、テストがあっても、満点なんて目指さないタイプでしたから、及第点を取れば良いよねっていう気持ちで。ただ、人と同じことをする自分は嫌だ、という思いだけは持っていました。具体的なことはわからないものの、ふんわりとした思いばかりが常に頭の上をよぎっていたような学生時代でしたね。

就職活動では、「人が気付いていないような困りごとを解決したい」と漠然とした夢を掲げてそんな仕事ができる場所を探していました。ただなんとなく、既存事業に携わるだけでは顕在化した課題点しか見えてこないのではないか、と考えていたので「人が気付いていない困りごとを解決する」ためには新規事業開発だと思っていました。だから、具体的な新規事業のアイディアは全くなかったですが、事業内容や規模に関わらず新規事業に関われる機会がある会社を探していました。

周りの友人からは冗談半分に偽善者だね(笑)、と言われていました。具体案はなにも出てこないのに壮大な夢ばかり掲げているのですから、そう言われても仕方ありませんよね。

――最終的に就職先としてパナソニックを選んだ理由を教えてください。

先ほどもお話しましたが就職活動をしているときは、具体的な新規事業のイメージは全くありませんでした。だから、新規事業にチャレンジできる環境も必要でしたがその前に自分がどんな新規事業をしたいのかという事業の種を探す必要がありました。

パナソニックには37の事業があり、事業領域がデバイス・家電・車載・B2Bなどと広いので1つの会社に所属しながら様々な事業を知れるのではと思いました。また、社内公募制度(eチャレンジ・eアピール)などの成長を支援する制度が充実しており、設計開発・開発研究・調達・知的財産・情報システムなど職種の選択の幅も広いのであらゆる挑戦や経験ができると思いました。最後に、「人が気付いていないような困りごとを解決したい」という漠然とした夢を叶える場所として、企業が抱えている負ではなく個人の負を解決できる事業、特に“くらし”に密着している企業の方が自分がやりたいことに近いように感じました。

よって、関われる事業・チャレンジの機会の多さ・“くらし”に密着している企業という3つの観点からパナソニックがベストだと思い、就職先に選びました。

視野を広げて考え抜いたからこそたどり着いたアイディア

――パナソニックに入社してから現在まで食洗機の機能設計を担当されていますよね。本業(ユーザーの目線に立って、食洗機の機能面から設計を見直す仕事)とは別に社内のビジネスコンテスト(Game Changer Catapult)に挑戦された経緯を教えてください。

冒頭の経歴をみていただいてお分かりのように、新規事業を担当する部署に配属にはならなかったのですが、年齢や経験に関わらず新しい事業を開発・提案することができる社内のビジネスコンテスト(Game Changer Catapult)が大きな転機となりました。

最初の挑戦は入社2年目の時でした。2つのアイディアを応募しましたが、書類通過すらままならない散々な結果でした。それから1年間、通常業務で力をつけつつ、アイディアの種を探したり実際にアイディアを形にしたりしてみながら次の応募に向けた準備を行いました。

そして、次こそは!と挑んだ2度目の挑戦では考え抜いた3つのアイディアを応募しました。そのうちの1つのアイディアが無事、社内での選考を通過することができました。

審査通過後、ビジネスモデルの検証と同時にプロトタイプ制作までを行い、米国テキサス州オースティンで開催されているイノベーションの祭典「サウスバイ・サウスウエスト(以下SXSW)に 「Panasonic House @ SXSW」の一員として新しい価値やビジネスモデルを持つ未来の「カデン」を提案する機会を得ました。

――2回目の挑戦で社内の選考を通過されたということですが1回目の挑戦と2回目の挑戦では何が違ったのでしょうか。

1年目と2年目で提出したアイディア自体が異なるということはもちろんありますが、そのアイディアに込めた想いや熱量が圧倒的に違いますね。

1年目はとりあえず提出しただけでした。アイディア自体に想いや熱量が感じられなかったと思います。何のために誰のためになどの意義などがわからず手探り状態で・・・。

自分自身でも個人の負の解決のなかで具体的に解決したいペイン(課題)ターゲットも不明瞭で迷走していました。(笑)

そんな状況を打開するためにも2年目のビジネスコンテストを迎える前には、自分の固定観念や殻を破ろうと日本の伝統芸能である能を観に行ったり、農業に挑戦したりと、新しい経験を積んでいきました。直接、アイディアに反映されたわけではありませんが・・・これが何に繋がるかわからないことも沢山経験しましたが、実際経験することで自分自身が何に対しては想いをのせられない領域なのかを知ることができました。

これらの経験により、逆に自分が想いをのせられる領域の輪郭がはっきりしました。自分が本当に想いをのせられ、誰のどんなペイン(負)を解決したいのかが明確になった上で応募できたことが大きな変化のポイントだと思います。

――社内選考を通過し、「PanasonicHouse @ SXSW」で発表したアイディアは、どんなものだったのでしょうか。

「Panasonic House @ SXSW」で発表したアイディアは、離れた世帯へのテレビ電話を可能にするコミュニケーションデバイス「Famileel(ファミリール)」です。

通話中の音声を自然言語処理し、画面へ字幕として表示することで、聴覚だけでなく視覚でのコミュニケーションも可能にするというものです。

アイディアのきっかけをくれたのは、私の祖母と母親の電話での会話でした。2人はよく電話をしているのですが、祖母の耳が不自由なため母親の声が次第に大きくなり、最後は喧嘩のように怒鳴って電話を切ってしまう場面をよく見かけていました。

ある日、友人と話をしているときに友人の家族でも同じ課題感を持っていることを知りました。だったら、他にも同じような課題を抱えている人が大勢いるのではないか。と思い、コミュニケーションデバイス「Famileel(ファミリール)」開発をスタートしました。

――「Famileel(ファミリール)」についてもう少し詳しく教えてください。

Famileelの特徴は、電話を掛ける前を含めた家族のコミュニケーションが可能なことと、使用するデバイスがどの家庭でもリビングにあるテレビをディスプレイとして使うことです。

そもそも、電話中の会話を可視化することをサポートする前に、電話を掛けること自体に大きなハードルがあることに気付きました。例えば、高齢者の立場からすると電話を掛けたい気持ちはあるが「今、忙しいかもしれない・・・」と思うと「電話をかけていいタイミングなのか」がわからない。相手に迷惑をかけてしまうのではないかと、電話をかけるのを躊躇してしまいます。一方で子世帯は、高齢者がどう過ごしているか気になるけど、電話をかけてまで確認するまではなかなか行動に移せません。

つまり、親も子供も電話をかける前に相手の状況が知りたい。そこで「電話をかけていないときでも相手を感じることができる」ように、サービスを設計しました。

たとえば、子供がFamileelに近づくと、親世帯にあるFamileelが光ります。親世帯と子世帯を常時接続しており、「かけていい頃合い」をライトの色でお知らせしてくれます。

機器に近づくだけで「ここにいるよ」というメッセージになり、離れた家族へ自分の存在を伝えることができ、まるで一つ屋根の下で暮らしているように、家族の存在を感じられます。

また、デバイスがどの家庭でもリビングにあるテレビを使う理由としてはリビングのような「人が自然に集まる場所」で会話ができるようにしたかったからです。特に、高齢の方は基本的に「新しいもの」に抵抗がありますが、テレビはくらしの中でなじみ深いもの。会話のシステムとして重要なのは会話を始めるまでのステップのハードルをさげることが大切だと考えたからです。

――SXSW出展後の事業化検討会で事業化フェーズへ進むことができず、社内プロジェクトとしては終わってしまったとのことですが、そこからどのような経緯で始動 Next Innovator 2018に応募されたのですか。

社内の検討会では、当時想定していたFamileelのアイディアだけでは事業規模が小さいなど事業を広げていく道筋が甘かった点と事業化を進めるにあたってのチーム体制が整わなかった2点から事業化フェーズに進むことができませんでした。

しかし、SXSWに参加したことによって世界中の人にFamileelを紹介、フィードバックをもらうことで自分が解決したい課題(ペイン)は日本だけでなく、世界中にあると確信していました。また、ユーザーヒアリングや検証を重ねる中で実際にFamileelを使って会話をたのしんでいるお年寄りのうれしそうな表情、ターゲットユーザーであるご家族から「商品化されたらいくら出してもいい」という言葉をいただくなど、Famileelが必要だという実感を沢山得ていました。

だから、Famileelで1人でも多くの人を笑顔にしたいという思いから、社内で難しいなら社外でもいいから実現したいと思い応募しました。

※始動:「始動 Next Innovator 2018」。平成30年度予算「グローバル・ベンチャー・エコシステム連携強化事業」の一環として経済産業省が運営する、グローバルに通用するイノベーター人材の育成プログラム。

――始動 Next Innovator 2018との出会いを教えてください。

前の年に「始動 Next Innovator」に参加していたパナソニックの先輩が社内で「始動 Next Innovator」を紹介するイベントを開催していました。そこに参加したことで「始動」というプログラムがあることを知り、豪華なメンターに指導してもらえることや外部とのネットワークを構築できるということに惹かれ、応募を決意しました。

その先輩には半年間のプログラムを通して沢山のサポートしてもらいました。約350名応募の中から上位20名のみがシリコンバレー派遣に選ばれる狭き門にパナソニックの社員として初めて通過できたのは、その先輩や周りのサポートがあったことが非常に大きかったと思います。

世界視点で新規事業を考えるべき

――シリコンバレー派遣期間では実際に現地で働く起業家やスタートアップのメンバーとの対話をされたとのことですが、そこで得た気づきや学びはどのようなものでしたか。

僕たちのビジネスアイディア Famileelは、初めは高齢者とそのご家族との電話の時間をより良いものにすることしかできないものでした。しかし、シリコンバレーの起業家とディスカッションしたことで、Famileelにはもっと課題解決の可能性があることに気付きました。例えば、お年寄りが抱えている寂しさを緩和するためには電話で家族と会話することだけでなく『お年寄りがテレビ画面を通してコミュニティを作れるようなプラットフォームを作ってみたら?』などのアイディアをいただきました。

シリコンバレーから戻ってからは、シリコンバレーで得たアイディアや考え方を活かし、必ずこのFamileelを事業化させ、コミュニケーション問題を解決すべく日々奮闘しています。

現在、私が所属するアプライアンス社のチャレンジ起業制度を活用してパナソニックが出資しているファンドから出資してもらい事業化できないか交渉を行っている最中です。

また、志を持った人が事業化を目指していけるような道をつくっていきたいと考えています。現在、有志でインキュベーションサークル『BOOST』の立ち上げを幹事として取り組んでいます。世界にある課題を解決したい!新規事業をやりたい!など強い志を持っている方がいらっしゃれば全力でサポートします。

いわゆる普通で抽象度の高い志しかなかった学生でしたが、パナソニックに入社したことによって様々な人と出会うことができ、時には迷いながらでも行動を続けてきたからこそ、沢山のチャンスに恵まれてきたと感じています。だから、今はまだふんわりとした想いしかない自分のような学生さんにはいつかその想いの輪郭がはっきりしたときのために、より多くの選択肢をとれる場所を見つけ、その場所でまずは行動し続けることをお勧めします。

*所属・内容等は取材当時のものです。