社員紹介

研究開発 上松 弘幸

くらしのなかに、普通にロボットがいる社会をつくりたい。 くらしのなかに、普通にロボットがいる社会をつくりたい。

「これ、分解してみてもいい?」。おそるおそる母に聞いてみた。家にあったパタパタと時刻が切り替わっていく時計が、動かなくなったからだ。どんなしくみになっているんだろう。少年だった上松弘幸には、どんなオモチャよりも魅力的に見えた。あの日、夢中でバラバラにしたところまでは覚えている。修理なんてできなかったけれど、それから動くものが、どうやって動いているのか気になるようになった。今から思うと、あれが始まりだった。大学の学部を選ぶ時も「動くもの」をやりたくて、システムや電気電子よりも機械を学ぶことを選んだ。

そのなかでも基礎工学を選んだのは、人を支援するロボットや体の不自由な人にもやさしい住宅設備がつくりたかったから。「体が不自由であることの大変さを身近で見てきましたから、メカやシステムで何とか力になれないかってずっと思っていて。興味というか課題意識を持ってたんです」。大学院では、生体工学の研究室で義肢装具の研究に取り組んだ。本当の意味での誰にでも安心で快適なくらし。考えれば考えるほど、車いすや義肢装具だけでなく、住宅設備や生活環境に対する取り組みも欠かせないと思うようになった。就職先に住宅から住宅設備、家電までを手がけていた当時の松下電工(現パナソニック)を選んだのは、彼が思い描くくらしをつくるために必要な事業がすべてあったからだった。

入社して約10年間。彼は、看護師さんや薬剤師さんに代わり病院のなかで薬などを搬送するロボット「HOSPI(ホスピー)」の開発に携わってきた。地図情報を基にレーザーとスキャナーで障害物を感知し、避けながら目的地まで自律移動できることが特徴だ。「ロボットが『運ぶ』という仕事を担えば、看護師さんや薬剤師さんは本来の業務に専念できる。そうすれば患者の方ともっと向き合う時間ができるはず。そんな想いを込めています」。

HOSPIを開発する上でいちばん難しかったのは、自律移動技術ではなく「ロボットと人の共存」だった。多くの人がいる病院のなかでロボットがどう動くべきなのか。どれくらいのスピードで動けばいいのか。どれくらいまで人に近づいたところで止まれば、患者の方や面会者に恐怖感を与えないか。「試験室では想定できなかったことばかりで。何度も何度も検証をしました。実際に使っていただいている病院で『ホスピーちゃん』と呼ばれているのを見た時は嬉しかったですね」。2016年、HOSPIは国際安全認証を取得。「この認証を取得したのは、自律移動ロボットではHOSPIだけ。現場の声を一つひとつ実現していった結果、安全と認められるロボットとして世の中に出たんです」。現在の彼は、HOSPIで培った自律移動技術を活かした車イスの開発に携わっている。

「ロボットは、困った時にいつでも助けてくれる夢のような相棒であったり、しんどい作業を替わって完璧にこなしてくれる仲間であったり、夢の未来を想像した時に必ず出てくる象徴だと思っています。そんなロボットが、医療機関や商業施設や公共施設などのさまざまなシーンに導入されていけば、私たちの生活環境は大きく変わります。まだまだですが、くらしのなかで普通にロボットが活躍する社会を少しでも早く実現したいです」。かつて夢に見たワクワクするような未来。その日がやって来るのは、きっとそんなに遠くないはずだ。

仕事場と上松 弘幸さんの写真
上松 弘幸さんの写真

研究開発
上松 弘幸(うえまつ ひろゆき)
マニュファクチャリングイノベーション本部
2003年入社 基礎工学研究科卒

だんじり祭りで有名な大阪府岸和田市出身。マイペースで、何かに興味を持つと、すぐにのめり込んでしまう子どもだったそう。休日は家族と過ごす時間を大切にし、子どもたちの習い事や学校行事などの対応で終わることも多いとのこと。

*所属・内容等は取材当時のものです。

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