材料分析 Materials Analiysis

アルゴンガスクラスターイオン銃を用いたXPS分析のご紹介

2013年9月17日

分析解析サポートグループの礒谷です。
以前にご紹介しましたX線光電子分光分析(XPS)は、固体材料のごく表面の定性分析、定量分析、化学結合状態解析を行うことができます。また、アルゴンイオン銃を用いて試料表面をイオンエッチングしながら分析を繰り返すことによって、深さ方向の情報も得ることができます。XPS分析は材料の導電性を問わないため、有機材料の分析も行うことができるのが特徴です。

表面分析

しかし、樹脂試料表面の深さ方向分析を行うと、酸素、フッ素、硫黄などの軽元素が試料内部で徐々に減少して、検出されなくなる現象が現れる場合があります。PBT樹脂とフッ素含有樹脂を分析した例を図1に示します。実際には酸素やフッ素が内部でも存在する試料ですが、深さ5nmや10nmでは検出されていません。これでは正しい分析が行えていません。

図1 従来のアルゴンイオン銃を用いて得られる炭素ピーク
図1 従来のアルゴンイオン銃を用いて得られる炭素ピーク

そこで、当センターでは、アルバック・ファイ社製のXPS分析装置(PHI 5000 VersaProbe)に、アルゴンガスクラスターイオン銃(Gas Cluster Ion Beam:GCIB)を搭載しています。GCIBは、アルゴンガスから生成させたアルゴンクラスターをイオン化して、イオンビームとして試料に照射すると、深さ方向分析時のダメージを軽減できるイオン銃です。

従来のアルゴンイオン銃では、例えば加速電圧2kVのイオンビームを試料に照射した場合、アルゴンイオン1個に対して2000eVのエネルギーが加わるため、図2(a)のように試料内部にまでダメージを与えてしまいます。

一方、GCIBでは、約2500個のアルゴン原子からなるクラスターイオン1個に対して10kVの加速電圧で試料にイオンビーム照射した場合、クラスターイオン1個に加わるエネルギーは4eVとなり、従来のイオン銃に比べてイオン1個に加わるエネルギーが小さいため、図2(b)のようにダメージは試料のごく浅い部分に限定されます。
そのため、 GCIBを用いて樹脂試料の深さ方向分析を行うと、化学結合へ与えるダメージが軽減されて、酸素原子やフッ素原子が抜けることなく内部でも検出され、図3のように正確なデータを得ることができます。

図2 イオンビーム照射時の試料ダメージ
図2 イオンビーム照射時の試料ダメージ
図3 アルゴンガスクラスターイオン銃を用いて得られる炭素ピーク
図3 アルゴンガスクラスターイオン銃を用いて得られる炭素ピーク

当センターでは、XPS分析装置だけでなく、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)装置にもGCIBを搭載して、有機多層膜の深さ方向分析を行っており、精度の高い分析データのご提供に努めています。お問い合わせの際は、下記のホームページよりお願い致します。
材料分析HP

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