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テーマ:静電気

2021年12月23日

静電気可視化システムを活用した解析事例の紹介(1)

EMC設計・解析担当の政井です。

今回は、静電気可視化システムの機能の一つで、静電気(ESD)に弱い部分を可視化する「静電気耐量のマッピング」を活用した実製品の解析事例を紹介します。

課題は、デジタルフォトフレームの静電気試験において「フレーム部(金属)に放電ガンで静電気印加した場合に画面が消える」です。

図2. 静電気耐量のマッピング

この結果から、不具合の原因はSDRAMがフリーズし、またSDRAMとマイコン間の通信異常が発生したためにマイコンがフリーズすることでバックライト電源回路を制御できなくなり、スタンバイモードになっていると判断することができました。

経験則によるカット&トライ的な方法ではバックライト電源回路に問題があると推測し、この部位に対策してもうまくいかなく、マイコンやSDRAMがフリーズしているにたどり着くまでに相当な工数を要してしまうのではないかと予想されます。

しかし、今回はこの静電気可視化システムを活用することで、不具合の本質的な部分に短時間(今回は2時間程度)でたどり着くことができました。

本システムにご興味を持たれた方は、是非ご連絡ください。

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日本初の静電気可視化システムを導入!瞬時に正確に回路課題を解決します

EMC設計・解析担当の政井です。

これまで静電気試験でFailが起こった場合、電流経路や現象を計測することができないため経験則によるカット&トライ的な方法で対策を行っていました。
電流経路や脆弱なデバイスを見えるようにすれば、対策も施しやすくなります。

そこで、プロダクト解析センターでは電流経路の可視化と静電気耐量の低いデバイスを可視化できる2つの機能を有した静電気可視化システム装置を導入しました。

  1. 静電気に弱い部分を可視化する「静電気耐量のマッピング
  2. 静電気印加位置からの電流経路を可視化する「電流経路の可視化

構成は写真のようになっており、測定ステージは約40cm×40cmです。

静電気耐量のマッピング」と「電流経路の可視化」の測定例を示します。

装置構成

静電気耐量のマッピング」と「電流経路の可視化」の測定例を示します。

静電気耐量のマッピングと電流経路の可視化

次に具体的な事例として、この静電気可視化システムの電流経路の可視化を活用した「静電気におけるバイパスコンデンサ(パスコン)の効果」を確認したので紹介します。

皆さんはICの静電気対策として、図1のようにパスコンをピンの直近に挿入を用いることが多いと思いますが、本当に効果があるのだろうかと疑問に感じたことはないでしょうか?
(私はその効果を疑問に思っていました)

図1.静電気対策のパスコン

静電気可視化システムでは、静電気の電流によって発生する磁界をプローブで測定したものをマッピングすることで、どこまで静電気が流れ込んでいるかを可視化することができます。

図2はICピンの直近にパスコンを挿入しない場合の、電源ピンに静電気を印加した際の磁界分布です。
図中の赤線のエリアからも分かるように、静電気電流がピンからIC内部まで侵入していることがわかります。
ICに電流が侵入すると、多くは破壊や誤動作の要因となってしまいます。

IC内部まで侵入している図
パスコンが無いとIC内部まで電流が侵入する

図2.パスコンなしの電流経路

一方、図3はICピンにパスコンを挿入した場合の電源ピンに静電気を印加した際の磁界分布です。
図中の赤線のエリアからも分かるように、静電気電流はパスコンに向かって流れICの中には侵入してはいなく、パスコンでICを保護していることがわかります(静電気対策にパスコンは有効)。

IC内部には侵入していない図
パスコンが有るとIC内部には電流が侵入しない

図3.パスコンありの電流経路

このように、本システムを活用すれば、どこのICのどのピンに電流が流れているかまで明らかにすることができるので、これまでの経験則によるカット&トライ的な方法でなく、ピンポイントで対策を行うことができます。

ピンポイントの対策であれば、解析工数や部品点数の削減することもできますので、本システムにご興味を持たれた方は、是非ご連絡ください。

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