オリンピックとパラリンピックに関する
パナソニックの教育支援

オリンピックとパラリンピックを題材にした教育を考える
Terchers’セミナースペシャル

第3部 情報交換会

オリンピックとパラリンピックを題材にした学習活動の事例紹介と情報交換会

事例①

福岡県教育委員会 体育スポーツ健康課 三嶋 公王

平成27年から、スポーツ庁・筑波大学の委託で、「オリンピック・パラリンピック教育調査研究(全国展開)事業」を実施しています。

県下22校を推進校として取り組んできましたが、最初は、「オリ・パラ教育とは何をすればいいの?」という不安の声が多く聞かれました。

写真:福岡県教育委員会 体育スポーツ健康課 三嶋 公王 氏

5月に、教育委員会主催で、推進校の担当者へオリンピック・パラリンピック教育のセミナーとワークショップを実施しました。
実施に際しては、5つのテーマを用意し、各推進校が実態に応じてテーマを選択し、授業実施ができるようにしました。

実施校の中には、総合的な学習の時間の福祉をテーマにした学習で、パラリンピック競技「ボッチャ」「サウンドテーブルテニス」を取り上げ、共生社会について考えることができるようにした学校。「〇〇小オリンピック」と題した跳び箱運動大会。そして、自分で決めたことをねばりづよくやり抜くという道徳の授業など、さまざまな実践がされています。

オリンピック・パラリンピック教育で大切なのは、「効果性・効率性・継続性」の3つです。
特に基本となるのは各教科や領域等のねらいの達成に向けて、その効果を上げるために、オリンピック・パラリンピックを扱うということです。
新学習指導要領の実施も迫り、先生方も多忙で、「新しく〇〇教育をしなければ」となると、負担感が大きくなります。そのため「既存の学習に組み込む」という考えが大切となります。
これまでも話に出ていますが、オリンピック・パラリンピックをイベント的な取り組みで終わらせないように、年間指導計画に意図的、計画的に位置づけていくことが大切であると考えています。

事例②

長野市教育委員会事務局 大日方 正壽

長野市では、長野オリンピック・パラリンピックの資源を生かした教育が根づいています。
それらは、「子供の育ち(資質・能力の育成)」や、「長野市の文化継承」を促進することをねらいとしています。

長野市では、1998年招致決定に伴い、開催の2年前から一校一国運動を開始し、そこから20年以上にわたってさまざまな形でオリンピック・パラリンピック教育を実施しています。その中でも「一校一国運動」は長野発祥で、これ以降、世界各地の開催地で同様の取組が行われるようになりました。各学校で相手国を決め、交流するこの取組は、長野市内79校のうち約5割が今でも続いており、そのうち9校は、子供を派遣したり子供を招いたりする交流をしています。これは長野市におけるオリンピック・パラリンピック教育のレガシーと言えるものです。

写真:長野市教育委員会事務局 大日方 正壽 氏

今後も「オリンピック・パラリンピック」という鋭角的な視点ではなく、多くの活動の中にオリンピック・パラリンピック教育の視点が入っているという考え方で教育活動を展開していきます。
例えば、学校給食で相手国の代表的なメニューをいただく異文化理解教育。「フロアホッケー」「ボッチャ」「ブラインドサッカー」等を体験して障がい者と共に楽しみを分かち合う、スポーツを通した人権教育の推進などの計画も、その考え方に基づくものです。

ある卒業生は 小学校の時に一校一国運動を通してトルコと交流し、大人になって、トルコで働いています。このように、今後も長野市としての文化と未来を担う人材育成をしていきたいと考えています。

事例③

立命館宇治 谷口 玲子 先生

高校3年生の「探究Bスポーツ総合」という選択授業で実施しています。上限30人、3単位です。
生徒たちの多くは、スポーツに一生懸命取り組む高校生ですが、「将来どんな職業に就きたい?」と問うと…。
「今やっているスポーツで、仕事に就けるのか。」という問題に直面します。
現実的に、プロスポーツ選手以外を考えさせると、指導者、トレーナー、スポーツメーカー、そして学校の体育の先生…など、スポーツに関わる仕事が出てくるのが実情です。

写真:立命館宇治高等学校 谷口 玲子 先生

そこで、探究Bスポーツ総合のコンセプトを、「スポーツのさまざまな側面を探究する」としました。

1年目の取組は、2015年。大学教授と連携した授業にチャレンジしました。しかし、どこかしっくりきませんでした。
2年目に出会ったのが、パナソニックの教材。きれいな映像・無料だということに感動しました。そして今年は、パラリンピックの教材も導入しています。

私は、東京オリンピック・パラリンピックの招致に向けたPR動画を見て、「これだ!」と思いました。オリンピック・パラリンピックは、スポーツを中心にさまざまなものに取り組むことができるのです。
生徒に、大会というフィルターを通して、多面的な要素に気づかせ、スポーツによって広がる社会、さまざまな角度から仕事に就く可能性があることを伝えたいと考えています。
本当に、生徒の目が変わるのです。自分たちが競技と競技選手しか見えていなかったことに気づき、本当にいろいろなものを見つけられるようになるのです。
来年度は、実際にいろいろな形でスポーツを支えている人たちから、直接話を聞く授業を展開したいと考えています。

事例④

関西学院大学千里国際高等部
日本アクティブ・ラーニング学会 会長 米田 謙三 先生

オリンピック・パラリンピックという題材を教科で扱うメリットは、まず、社会的注目度が高く、生徒に「リアル」であること。
教科でいうと、体育・社会・英語・情報…。それぞれの教科の「部分」と、オリンピック・パラリンピックの「部分」を組み合わせることで、生徒に「リアル」な学びの題材を提供することができます。

写真:関西学院大学千里国際高等部 日本アクティブ・ラーニング学会会長 米田 謙三 先生

次に、オリンピック・パラリンピックは生徒の興味・関心を高めるということ。新しい単元や授業を構想せずとも、既存の関連がある授業の中で オリンピック・パラリンピックの写真を映すだけで、生徒の顔が上がります。
では、ここでみなさんに質問です。「オリンピックの輪の5色は、何色でしょう?」グループで15秒、話し合ってください。
では、第2問!「パラリンピックのマークの3色は、何色でしょう?」話し合ってください。では次は「3つのマークの意味・意義は?」とすると、少し内容が難しくなるので、発達段階に応じた使い分けも可能です。こんなふうに一部の要素を活用するだけで、生徒がより主体的に参加する授業ができます。
オリンピック・パラリンピックは題材としての幅が広く、深いので、各教科の幅や発達段階に合わせた授業への活用が可能なのです。

ここで、オリンピック・パラリンピックを題材にした授業実践を紹介します。
1つ目は、「経済社会と経済活動の在り方」の導入での実践です。オリンピック・パラリンピック大会に関る関係者を、経済活動に着目させながらイメージマップで考えさせました。生徒は、「リアル」に経済活動のつながりを理解することができました。

2つ目は、「現代経済の仕組みと特質」に関連させた実践です。大会に関る技術を学び、未来にあるとよい技術を考えるという学習から、ビジネスコンテストの応募へ発展させました。まさに、協働的・対話的で深い学びによって、「クリエイティビティ」と「イマジネーション」が育成できたと考えています。

今日は、オリンピック・パラリンピック教育について、来年の方向性、これからの実践のヒントになる具体的な情報をもらえたので、次年度もまた実践していきたいです。

参加した先生の声
  • オリンピック・パラリンピックが開催される東京、そしてその後の日本をイメージすると、オリンピック・パラリンピック教育がそこで途切れてしまうのがとてももったいないと思います。
    子供たちが、今、オリンピック・パラリンピック教育として学んだことが、2020年以降、何にいかされるのか、つまり、どういったところを目的に学ばせるのかをしっかり考えていかなければいけないと思いました。
    例えば、次のオリンピック。そして、大阪万博や、中にはノーベル賞に向けてがんばる子がでてくるかもしれません。
    また、1つの何かに対して、1つの何かの場面で活躍するだけではなくて、いろいろな役割があることを知り、自分ができることを考えて取り組むような子を育てていきたいと思いました。
  • 高校で体育と生徒会を担当しています。事例発表を聞いて、いろいろな学習ができると思いました。
    それぞれ違う切り口からスタートしても、オリンピック・パラリンピック教育につながることがわかりました。
    新しいことを一人で始めるのは難しいですが、あくまで、既存の学習にプラスするという考えならいろいろなことができると思います。
    自分が担当している授業全体で、また、学校全体で、探究的・教科横断的な学習につなげられればよいと考えました。
  • 教育委員会では、推進校を指定するなどして、事業を展開しているところです。
    教育委員会の役割として、多忙化改善が大きな課題です。
    今日のセミナーで、既存の教育活動の中に位置づけてのカリキュラム・マネジメントがますます重要だということがわかりました。
    新学習指導要領への移行とともに、オリンピック・パラリンピック教育を推進していきたいと考えています。
  • これまでは、正直、自分が知識をもっていないので、オリンピック・パラリンピック教育は難しいと思い込んでいました。
    今日、多くの先生の実践事例やお話を聞いて、これからできること、自分でもできることがたくさんあることを知りました。
    また、みなさんもそれぞれお悩みになっているということがわかり、まずは、自分が積極的になること、まわりと協働していくことが大切だということがわかりました。
写真:情報交換会の様子1
写真:情報交換会の様子2