【オンライン出前授業レポート~川棚町立川棚中学校】

日本の学校とアメリカ在住の講師をオンラインでつないだ授業

新型コロナ感染症予防及びGIGAスクール構想実現に向けた動きが加速する中、「私の行き方発見プログラム」は、2020年8月下旬よりオンラインによる出前授業を開始し、2021年2月26日現在、37の学校でオンライン授業を実施しました。
オンライン授業の特長のひとつに、インターネット環境が整っていれば、離れた場所からでも参加できる点を挙げることができます。
「パワーアップ情報ファイル」2月号では、このオンライン授業ならではの利点をいかし、初めて海外から社員講師を迎え、長崎県川棚町立川棚中学校で実施したオンライン授業について紹介します。

電子黒板に映しだされた講師と対話する生徒の様子
グーチョキパーでクイズに答える生徒の様子

授業のポイント

【ポイント1】地図・動画を活用し、グローバル感を体現
【ポイント2】講師のキャリアをいかした「Q&Aタイム」

今回、講師を務めていただいたのは、パナソニック株式会社ブランド戦略本部ブランドプランニング部北米ブランド統括センターに所属している小杉卓正さんです。現在は、アメリカ合衆国ニュージャージー州ニューアークにあるパナソニックノースアメリカ株式会社で北米ブランド戦略の業務を行っています。
受講したのは川棚町立川棚中学校2年生135名4クラス。受講生のみなさんは、各教室に設置された電子黒板を通して授業を受けました。
GIGAスクール構想に熱心に取り組まれている川棚町教育委員会のご支援を受け、川棚町で「私の行き方発見プログラム」オンライン授業が実施されるのは、12月の石木小学校に続いて2校目です。

■授業概要

  • 日時:2021年2月9日(火)9:45~10:40(55分間)
  • 場所:長崎県東彼杵郡 川棚町立川棚中学校
  • 受講生:2年生 135名(4クラス)各クラスから接続
  • 講師:パナソニック ノースアメリカ株式会社(アメリカ合衆国ニュージャージー州) 小杉卓正さん
  • 接続ツール:Web会議システム(Microsoft Teams)

■授業の流れ

授業の流れの図表

ポイント① 地図、動画を活用し、グローバル感を体現
川棚中学校のキャリア教育では、「地域とつながる」「世界とつながる」をテーマに掲げています。オンライン授業前日には、地元の講師を迎えて「地域とつながる」授業を実施、当日は海外から講師を迎えた「世界とつながる」授業となりました。 生徒のみなさんが「世界とつながっている」ことを実感できるよう、講師の小杉さんには様々な工夫をしていただきました。
■WEB上の地図を共有し、距離を確認
  • ニュージャージー州と日本の時差は14時間です。学校では2月9日(火)午前9時45分開始の授業でしたが、講師がいるニュージャージー州では2月8日(月)午後7時45分でした。
  • 午後遅い時間にも関わらず、小杉さんは元気に「おはようございます」と言って画面に登場しました。
    それに応じて、生徒の方からも「おはようございます」と大きな声が上がりました。
  • 授業冒頭、WEB上の地図を共有し、川棚中学校の場所と講師が勤務している会社の場所が提示されました。
    生徒は、講師とどれぐらい離れた場所からつながっているのか、地図を見ながら確認することができました。

出発点として川棚中学校のある場所が提示されました。

地図をズームアウトして日本の大きさを確認。

日本ーアメリカ間の距離が確認できるまで、更にズームアウト。

最後に講師の勤務地が提示されました。

■動画を活用した職場紹介
  • オンライン授業では、講師は学校に訪問することなく職場等から授業を行います。講師は、可能な範囲でカメラを通し職場の様子を紹介することができますが、今回は新型コロナ感染症対策のため出勤が難しく、動画を活用して職場紹介をしていただきました。
  • 自由の女神像やマンハッタンの高層ビルといった日本とは異なる風景の中で、通勤する人々やオフィスで働く人々など、講師が体感している海外での日常の様子を見ることができました。
  • 映像では、講師と一緒に働く人々が紹介され、生徒たちは世界をより身近に感じることができました。
画像をクリックすると動画を視聴できます。
ポイント② 講師のキャリアをいかした「Q&Aタイム」
  • 講師の小杉さんは、現在、パナソニックノースアメリカ株式会社でブランド担当唯一の日本人社員として北米ブランド戦略業務の重責を担っていますが、最初はパナソニック株式会社企業スポーツセンター野球部に選手として入社し、野球のフィールドでも活躍されてきました。また、野球部引退後は、仕事でも「スポーツに貢献したい」という思いからブランド部門に異動、オリンピック・パラリンピックのワールドワイドパートナー契約を担当する部署でスポーツマーケティング業務等に従事してきました。
私の仕事の図表
講師の現在の仕事を紹介するスライド。
展示会・イベントの企画運営やオリンピック・パラリンピック選手との社会貢献活動等を通じてブランディングとマーケティングの業務を行っている。
  • マルチな分野で活躍を続ける小杉さんを海外から迎えての授業ということで、生徒のみなさんには事前に質問を募り、講師に共有していただきました。
  • 「Q&Aタイム」では各クラス2人ずつ質問することとし、質問する生徒は、それぞれの教室の決められた位置でカメラの前に立ち、質問を読み上げるようにしました。
  • 生徒から海外のこと、仕事のこと、野球のことなど様々な質問が寄せられ、講師は実体験を基に、わかりやすく丁寧に応じていきました。
  • 「英語が苦手なのですが、どうやったら、海外で働く小杉さんのように英語が話せるようになれますか」という質問には「私も英語は今も勉強中です。英語はコミュニケーションツールなので、どうやったら相手に伝わるかを心掛けることが大事だと思います。あとは発音に気を付けること。英語の発音をまねて、慣れていくことが、上達のコツだと思っています」とアドバイスしました。
  • 「アメリカと日本の文化の違いは何ですか」という質問には、「最近知ってとても驚いたことは、バレンタインデーです。日本では女性が男性にチョコレートを送りますが、アメリカでは反対に男性が女性に贈り物をします」と答えました。
  • 「野球の体験が、今の仕事にどういかされていますか」という質問には、「野球の技術以外の部分ですが、目標設定ができることだと思います。例えば、優勝することが目標であれば、優勝するためにはどんな練習すればいいか等を考えるようになります。目標を決めて、達成するためにはどうしたらいいか逆算できるようになったことは仕事をする上でとても役に立っています」と回答しました。

講師と生徒が質疑応答しているオンライン画面

  • 続く「ワークタイム」では、生徒たちはワークシートに従い、「私の自己PR」「社会の中の自分の役割」
    「15年後のなりたい自分」について考えをまとめました。
    その後の「発表タイム」では、ウェディングプランナーや作業療法士など、「15年後のなりたい自分について」具体的で力強い発表がありました。
  • 最後に代表の生徒から「今日学んだことを是非今後に活かしていきたいと思います。将来を考える良いきっかけになりました」と感謝のメッセージがあり、授業が終了しました。
■海外講師と身近に接し、将来の可能性に広がりを感じる授業
今回、初めて海外から講師を迎えて実施したオンライン授業は、将来、海外で働くことを夢見ている生徒たちに自信を与え、それ以外の生徒たちにも大きな可能性の広がりを感じさせる良い機会になりました。
■教育委員会との連携で地域とのつながりを推進
今回のオンライン授業は、積極的にGIGAスクール構想に取り組まれている川棚町教育委員会との連携をとることで実施することができました。授業当日は、同委員会の教育長が学校を表敬訪問されるなど、地域ぐるみでご支援いただき、複数のメディアでも広く発信していただきました。
当プログラムでは、今後も機会があれば海外の社員講師によるオンライン授業実施や、教育委員会等を通した地域とのつながりの推進を図って参りたいと考えております。ぜひ、次年度以降も「私の行き方発見プログラム」オンライン出前受業をご活用いただけましたら幸いです。