環境分野 選考委員長総評

特定非営利活動法人
国際自然大学校
理事長 佐藤初雄

今年も7月より募集が始まり、全応募件数が27団体ありました。選考対象となったのは25団体で、そのうち5団体が2013年度の助成先から継続して申請があったものでした。結果、新規応募団体が6団体、継続応募団体が3団体、助成団体となりました。

さて、応募いただきながら、助成対象にならなかった団体の皆様には本当に残念でした。多くの時間と労力をかけて申請していただいたにもかかわらず、期待にこたえることができませんでした。私たちも選考する過程においてできるだけ理解しようと申請書類に目を通し時間をかけて議論もさせて頂きました。その中で、さらに、助成候補団体に対して事務局がヒアリングをするという徹底した選考システムになっているために、かなりしっかりとした計画になっていないと助成団体にはなれません。そして、一度助成団体として認められれば、今度は組織基盤強化に向けてその計画を実施していかなければなりません。そういった意味では、このPanasonic NPOサポート ファンドはかなりハードルが高いものであると思います。

だからこそ、本当の基盤強化につながるものになるのだと思います。
今年の選考結果から助成団体を見てみると、設立から50年以上も経っているいわゆる老舗団体で、しかも年間予算規模1億円を超える団体が2団体あるということは特筆すべきことだと思います。一見するとこのような団体は助成団体にはならないのではないかと思ってしまいますが、組織というものは常に生きているし、変化しているといえるでしょう。つまり、大手の老舗団体とて未来永劫に亘って不滅であるということはないということです。常に手をかけメンテナンスしていかなければならないということが分かります。したがって、今回の選考過程においても様々な議論はありましたが、このような結果となりました。

昨年も同様なことを思いましたが、今年も感じたことはまずは自団体のことを客観的に見るということが始まりとなります。つまり、しっかりとした課題を設定するということだと思います。何が問題であるのか表面的なものだけにとらわれずに、組織の根本的な課題を見つけ出すということです。そのために、本ファンドでは、組織診断フェーズで課題抽出・解決策立案を行います。ここのポイントがずれてしまうといわゆるピンボケになってしまい、そのあとの解決案や実際に様々なプランを実行しても、本当の意味での基盤強化にはつながらないということになってしまう訳です。こうした恐れのある団体には残念ながら助成団体として認められないということになります。

次に、その課題を解決するための計画です。この計画の有効性や実効性を私たちは議論しています。先ほど指摘しましたようにそもそもの課題設定がずれていては元も子もないのですが、その計画に基づいて実施すれば何らかの効果が期待できるものになっていなければなりません。さらに、予算積算についての妥当性もよく議論になります。なんとなく積み上げられたものや数字合わせのものはやはり計画性がないということになってしまいます。選考委員や事務局はこれまでの経験があり、厳しく査定されます。このあたりもしっかりとした合理性が求められます。

このほかにも、いくつかのポイントがありますが、最も厳しいことは、恐らくヒアリングでしょう。事務局が実際に団体事務所に赴き、面談をするということです。その団体に関わる代表理事や理事そして事務局の方々に、本当に、この計画が実行される状況になっているかを伺い、判断します。その意味では団体の本気度や実現性、その結果が組織基盤強化に繋がることが想像できるかという点だと思います。そのあたりの具体性が乏しい所は助成団体としては認められないでしょう。

こうした点をクリアできた団体が今年の助成団体となった訳です。この本ファンドには長い歴史がありますが、私が感じるところは年々レベルが上がっているのではないかと思います。その意味においても、今年、助成団体なられた団体はいい結果が出るよう期待もされています。少し時間のかかることだとは思いますが、頑張っていただき、少しでも団体が成長されることを期待します。

<選考委員>

★選考委員長

佐藤 初雄

特定非営利活動法人 国際自然大学校 理事長 ★

粉川 一郎

武蔵大学 社会学部 メディア社会学科 教授

木村 真樹

コミュニティ・ユース・バンクmomo 代表理事/
公益財団法人 あいちコミュニティ財団 代表理事

冨田 勝己

パナソニック株式会社 環境・品質センター
環境・品質渉外室 主幹