選考委員長 森本 真也子

特定非営利活動法人 
子ども劇場東京都協議会/

特定非営利活動法人
子ども文化地域
コーディネーター協会

Panasonic NPOサポート ファンド 子ども分野 2014年募集は、39件の応募がありました。すべての応募書類を各選考委員が目を通し、書類審査をした上で、9月30日に5時間かけて、選考委員4名で審査を行わせていただきました。選考委員が持つそれぞれの経験を生かし、事務局が把握している情報も含め、お互いの情報を共有しながら、審査をしていきました。その後、事務局による団体ヒアリングで収集した情報を加味して、助成先を決定させていただきました。選考を通して私自身に学びと発見がたくさんありましたが、その中から以下の3点について述べさせていただきたいと思います。

組織診断で、健康管理のできるNPOに

はじめに、応募団体の約半数が組織診断を希望されたことに、敬意を評したいと思います。組織診断は、自らを振り返り客観化するために行う、人間で言えば健康診断のようなものです。ともすると、健康診断でどこが悪いとか食生活や生活習慣を変えた方が良いと指摘されることが嫌だったり、忙しかったり、自分は健康だと思い込んで健康診断を受けなかったりして、自覚症状のないままに大きな病気になることがあります。組織の健康状態を診断すること=組織診断は、実は組織にとって生死にかかわる重大な問題なのです。とはいえ、組織診断に挑戦することは、まだまだ勇気のいることだと思います。ぜひ、組織診断の成果を語り、NPOの組織基盤強化のために必要であることを、多くの団体に広げていただければと願っています。

“ミッション”と“目的”の違いは明確に

NPOは思いが強いため、自分たちの目的は多くの人の共感と応援を得るはず、と思いがちです。そして、ときに賛同者が広がらないことに嘆き、社会が問題だと失望するといったこともあるかと思います。応募団体のミッションを拝見していると、「団体のミッション」と「自分たちのやりたいこと・自分たちの目的」との違いが明確になっていないのではないかと思うことがありました。NPOのミッションは、その対象とする地域・人々などに対して果たすべき社会的使命のことを言います。「やりたいこと」ではなく、「やるべきこと」なのです。この両者を混同せず、違いを明確にしていくことが組織基盤を整備する上でとても大切な要素であると思いました。
また、対象エリアが明確な団体については、その対象エリアの地域課題に団体がどのように向かっているのか、団体の活動は子どもたちが豊かに育つ地域づくりにつながっているのか、という観点が必要ではないかと思います。それぞれに特徴ある活動が、その団体の存在する“地域”へどのように貢献しているのかを明確にすることが出来れば、組織基盤強化の一歩につながるのではないかと思います。

子どもが豊かに育つには、様々な人間模様が必要

最後に、子どもに関わる活動を行っている団体の皆さんと、今の子どもの状況についてしっかりと共有しておきたいと思います。貧困・いじめ・自殺など様々な課題がありますが、私が一番問題だと思っているのは「格差の連鎖」です。人は人の中で育ちます。素敵な大人、立派な人とだけでなく、色々な人との出会いの中で、豊かに育っていくのです。格差の連鎖は、子どもたちが出会う世界を狭くしていきます。さらに、ネット社会の普及によって、子どもたちのコミュニケーションの取り方が大きく変化し、緊張した人間関係の中で子どもたちは生きています。こうした現状をしっかりと把握して活動することが大変重要であると考えています。

このたびの選考にあたり、各地で真剣に活動されている方々の熱い思いにふれ、私自身が勇気と知恵をいただきました。子どもと同様にNPOも、異なる分野の方々との出会いが自分たちの組織を豊かに育てることにつながります。このサポートファンドへの応募をきっかけに、様々な団体との情報交流が広がり、新しい風を組織内に取り入れることを願っております。

<選考委員>

★選考委員長

森本 真也子

特定非営利活動法人 子ども劇場東京都協議会 常任理事/
特定非営利活動法人 子ども文化地域コーディネーター協会 専務理事 ★

片山 信彦

認定特定非営利活動法人 ワールド・ビジョン・ジャパン 常務理事・事務局長

中村 国生

特定非営利活動法人 東京シューレ 事務局長

福田 里香

パナソニック株式会社 ブランドコミュニケーション本部
CSR・社会文化グループ グループマネージャー