アフリカ分野 2018年募集継続助成 選考委員長総評

日本からアフリカへは、年々行きやすくなっています。今年の1月から、成田からインチョンを経由してエチオピアのアディスアベバに向かう直行便が飛んでおり、また、ケニアの首都ナイロビには、中国の広州を経由して空港と空港が17時間程度で結ばれるようになりました。

アフリカと日本の市民の間の結びつきはどうでしょうか。
もしかすると、航空網の発達のスピードほどは早くないかもしれません。アフリカと日本の市民の結びつきが急速に強まったのはおそらく1980-1990年代です。アフリカの飢餓や貧困、保健、教育などの問題に取り組むために、日本でも多くのNGOが設立され、ボトムアップの「草の根からの開発」に取り組みました。
2000年代にも、いくつかの団体がアフリカに根を張って、HIV/AIDSなど保健の問題をはじめとして開発や紛争後復興などに取り組みました。一方、音楽、ダンス、映画、文学などを通した市民レベルの文化的交流や、ユース同士の交流などが拡大したのもこの時期です。こうした蓄積の上に「今」があるのですが、もしかすると、今までの流れが一服してきたのかもしれません。世界的なソーシャル・ビジネスの流れの中で、日本とアフリカの関係にも新しい波が出てきている中、市民レベルでの非営利の関係を深めるには、資金の流れのあり方の変革も含めた新たな動きが必要と思います。

今回、助成団体(継続)として選ばれた「ダイヤモンド・フォー・ピース」の活動は、アフリカと日本の市民レベルの関係に新たな風を吹き込むものとして期待されます。舞台は90年代の苛烈な内戦ののち、復興の歩みを新しく歴史に刻み付けつつあるリベリア共和国。エシカル・ダイヤモンドを世界に根付かせ、資金を現地に還元することで、ようやく定着し始めた平和を持続可能にしていく取り組みは、文化・経済・社会・環境を統合的にとらえ、全体を変革していくSDGsの考え方とも見事に合致しています。

折しもアフリカは、資源安の中でも一部諸国では高い経済成長が続いており、エチオピアとエリトリアの和解による「アフリカの角」地域の安定化の促進などポジティブな面も見られます。一方で、いくつかの国では以前からあった地域紛争が再燃し、深刻な人道問題も生じているなど、「二極化」の様相が出てきています。こんな中にあって「ダイヤモンド・フォー・ピース」をはじめとした、独創的なアプローチによる日本とアフリカの市民間の関係構築は、ますます必要とされています。

2019年は、6年ぶりに「アフリカ開発会議」(TICAD)が日本(横浜)で開かれます。これも一つのチャンスとしつつ、今回の助成が、アフリカと日本の市民レベルの関係に新たな1ページを開く一助となることを期待します。

写真:

アフリカ分野 選考委員長
稲場 雅紀

<選考委員>

★選考委員長

稲場 雅紀

特定非営利活動法人 アフリカ日本協議会 国際保健部門ディレクター
一般社団法人 SDGs市民社会ネットワーク 業務執行理事 ★

加藤 昌治

株式会社博報堂 PR戦略局 統合プラニング一部 部長

松尾 沢子

認定特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター(JANIC)連携グループ マネージャー

奥田 晴久

パナソニック株式会社 ブランドコミュニケーション本部
CSR・社会文化部 事業推進課 社会連携・社員参画係 係長