子ども分野 2018年募集継続助成 選考委員長総評

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子ども分野選考委員長
森本 真也子

応募状況と選考プロセス

2018年度の子ども分野は新規助成の募集は行わず、継続助成のみ募集しましたので、応募総数は、継続助成2年目が5件、同3年目が3件の計8件でした。
継続助成の場合、既に応募要件を新規助成の段階でクリアしているため、予備選考は実施せず、選考委員5名による本選考のみ行われました。すべての応募書類と報告書に各選考委員が目を通し、書類審査を行った上で、9月27日(木)に選考委員会を開催して、各委員の評価をもとに3時間かけて審議を行いました。

全ての団体に「継続して支援すること」が必要ではないのかとの思いもありましたが、総額が限られていることもあり、組織基盤強化を通じて「子どもたちにとって価値のある未来が見えるか」ということを重視して審査しました。また、採択されなかった団体へは助言や提案などの応援が出来るよう1件1件確認しながら審議を行いました。結果、8団体の内5団体を採択し、計700万円の助成を決定しました。採択された団体の推薦理由は別途掲載していますのでご一読いただければ幸いです。
以下、選考を通して感じたことを述べさせていただきたいと思います。

継続助成の選考ポイント

継続助成の選考の場合、一番大切なポイントは、前年度の取り組みを踏まえて次のステップが明確になっているかどうかということです。今年度は多くの団体で、これまでの組織診断の結果や基盤強化を踏まえた発展的なストーリーや展開が見え、組織基盤が強化されている確かな手応えが感じられました。けれども、基盤強化が組織自身の成果にとどまり、真に子どもや子どもが育つ環境に対して、どのような成果につながっているかが見えにくいということが議論になりました。

子どもの問題へのアプローチには、子どもに対する直接的な支援と、子どもが育つ環境を整備するための大人の組織づくりを支援するという間接的な支援があるため、組織基盤強化というテーマにおいては、どうしても大人に対するアプローチが中心となりがちです。子どもに関わるNPOの基盤強化を評価する指標として、NPOの基盤強化が子どもたちの育ちをどう助けるのかという視点をもつことも必要ではないかという議論は、今年度の大きな特徴だったと思います。

ミッションに「子どもたちにとっての価値ある未来」が見えるか

NPOの組織基盤強化の要はあらためて「ミッションにある」とここ数年実感しています。そもそもNPOの真髄は社会課題にどこまで真摯に向かい合えるかということにあると思っています。そのためには、子どもに関わる現代の社会課題を的確に捉えていくことが求められます。
子どもたちにとっては「今」がとても重要です。子どもは成長し続ける過程で生活環境が目まぐるしく変化し、子どもの抱える課題も常に変化し続けています。しかも、子どもたちの環境は、大人の社会状況により大きく変化せざるを得ません。自分の意思で決められる幅はとても狭く、選択できる道は環境に大きく左右されます。
このような認識のもと、子ども分野のNPOには、子どもには権利があるという世界共通のベーシックな子ども観は押さえていてほしいものです。また、子どもたちが自分で自分の人生を歩んでいけるように大人たちは伴走するのであって、ある方向性に導くものではないということも、市民社会をめざしているNPOとしては、もっていて欲しい考え方だと思っています。

子どもに関わるNPOとして、このような共通理念を基本に持ちながら、変化している社会の中で子どもの課題は何かを日々新鮮に捉え、その時代に即したミッションに作り直すことが必要です。目の前の活動だけに流されるのではなく、常に真摯に社会の変化とその先を見据えなければ、子どもたちにとっての価値ある未来が見出せない活動や組織になってしまうのではないかと私は考えています。

NPOは“生き物”

例年感じていることではありましたが、団体を選考する中で、今回改めてNPOは生き物だと感じました。組織の基盤を支える人材が豊富だとは言いきれない団体が多い中、昨年と同じ団体なのかと見紛うほど、大きく変化する団体があります。人が増えたり変わったりすることで、推進力が強くなり良い方向に変化することもありますが、昨年までの方向とは全く異なる方向に変化することもあります。
人材や資金などの基盤が脆弱なNPOであればあるほど、常に新しい人と出会い、新しい情報を手にして、新鮮な風を組織に取り入れ、自分たちの進むべき方向を見据えていかないと、組織は生き続けていけません。社会情勢をきちんと捉えながら、常に生き生きとした組織でありたいものです。

<選考委員>

★選考委員長

森本 真也子

特定非営利活動法人 子どもと文化全国フォーラム 代表理事 ★
特定非営利活動法人 子ども文化地域コーディネーター協会 専務理事

関 尚士

公益社団法人 シャンティ国際ボランティア会 理事・事務局長

中村 国生

特定非営利活動法人 東京シューレ 事務局長

林 大介

子どもの権利条約ネットワーク 事務局長・東洋大学 非常勤講師

乾 とし子

パナソニック株式会社 ブランドコミュニケーション本部
CSR・社会文化部 CSR・企画推進課 課長