ファンド設立時の背景

パナソニック CSR・社会文化部 部長 福田里香の写真2

パナソニック
CSR・社会文化部
部長 福田里香

福田 私どもパナソニックは「事業を通じて社会の発展に貢献する」という創業者・松下幸之助の言葉に基づき、事業活動とともに企業市民活動を行ってきました。企業市民活動では1990年代から、さまざまな社会貢献プログラムを通して市民活動団体とも接点をもつようになりました。
1998年に特定非営利活動促進法(NPO法)ができて、2001年に約7千だったNPO法人の数は今、5万を超える数に増えています。当時、NPOとおつき合いをする中で「活動資金の多くを助成金から調達してきたが、活動規模が大きくなるにつれて助成金への依存度が高くなってきた。もし助成金がなくなったら、どうなるのだろう」という不安の声も聞こえてくるようになりました。

そこでせっかくの素晴らしい活動を継続的に行い、NPOの持続的な発展をお手伝いできないだろうかと考えて生まれたのが、この助成プログラムです。
初めは「サポーターズ☆マッチング基金」の名称で、2001年に子ども分野、2002年に環境分野を立ち上げました。NPOの皆さんに有効なプログラムとするために、今日お越しいただいているお二人のようなNPOの中間支援組織の方々と協働で企画開発をさせていただいています。ここ数年をみてもNPOは大きな発言権をもつようになり、影響力の高まりを感じています。

山岡 私自身はトヨタ財団にいた1980年代中頃から市民活動助成を始めました。1990年代に入るとNPO法の立法過程で市民活動助成の重要性が少しずつ認識されるようになり、1995年の阪神・淡路大震災を契機に、自治体のプログラムなども含め、市民活動を育てていく助成プログラムが徐々に増えていきました。

2000年前後には外資系企業によるNPO助成のプログラムが現れ、2001年に、日本企業ではおそらく初の本格的な助成プログラムとなる、パナソニックの子ども分野の助成が始まりました。1998年にNPO法が成立したことで、それまでの任意団体もNPO法人になり、組織の運営を考えなければならなくなった時期でしたが、当時の助成金の多くはプロジェクトへの助成でした。そこに組織基盤の強化に着目した助成を始めたことは、大変先駆的でした。ただし当初は組織基盤強化といっても、ホームページやパンフレットづくりといった取り組みが主だったと思います。
その頃は子ども分野のNPOは設立からまだ間もない団体が多く、そういう意味では、この助成プログラムは子ども分野の新しい動きに対応しながら、一緒に成長してきたともいえます。

市民社会創造ファンド 運営委員長 山岡義典さんの写真2

市民社会創造ファンド
運営委員長 山岡義典さん

地球と未来の環境基金 理事長・事務局長 古瀬繁範さんの写真2

地球と未来の環境基金
理事長・事務局長
古瀬繁範さん

古瀬 環境団体の源流は1950~1960年代の公害問題に対する反対運動にあります。1970~1980年代にはオイルショックを契機としたリサイクル運動が盛んになり、1992年にリオで開催された地球サミットを機に、持続可能な社会や地球温暖化をテーマにした団体が多数立ち上がりました。私はその年に「日本リサイクル運動市民の会」という環境団体で森林保護を目的に製紙業界と協力して非木材紙を開発し、企業の売り上げの一部を市民活動団体に助成する「ツリーフリー基金」というプログラムを運営した経験があります。

その後2000年に日本リサイクル運動市民の会をスピンアウトした仲間とともに「地球と未来の環境基金」を設立し、翌年に環境分野の助成プログラムを立ち上げる相談をいただきました。当時、中小企業診断士の資格を取ったばかりでマネジメントには関心がありましたし、従来のプロジェクト助成に対する問題意識もあって引き受けましたが、自分たちの組織基盤も固まっていない中で大丈夫かという不安はありました。

2005~2006年までは「組織基盤強化助成」といっても「どんな内容を書けばよいのかわからない」という団体が多かったです。応募案件の内容も、プリンターを買いたいとか、団体案内パンフを作りたいという案件が多く、ミッションやビジョンを考えるレベルではなく、団体に「組織基盤強化」の言葉の意味合いを理解してもらうことから始めました。他方、1992年の地球サミットの頃に設立した団体は、10年ほど経って組織基盤を真剣に考える時期に差し掛かっていたこともあり、助成を受けるタイミングとしてよかったのではないかと思っています。

NPOの成長や社会課題の広がりに合わせて、プログラムを進化

山岡 私ども「市民社会創造ファンド」は市民活動助成の専門機関として「日本NPOセンター」の事業を引き継ぐ形で、2002年に設立しています。このプログラムが「NPOサポート ファンド」と名称を変えた2006年に子ども分野のご相談をいただき、以降、協働事務局として企画開発・運営に携わってきました。

助成団体の一つでもある「プレーパークせたがや」が組織診断を受けて組織基盤強化に取り組んだ例もあって、2011年に組織診断を採り入れましたが、当初は診断できる人がいるのか懸念もありました。組織診断を必ず経て組織基盤強化へ進むというコースにしたところ、子ども・環境分野を合わせて300件ほどあった応募件数が2011年には30件、2012年には15件まで減ったため、2013年からは組織診断を抜きにして組織基盤強化から始めてもいいけれど、組織診断から連続して取り組むことを推奨する仕組みにしました。

その頃には「組織基盤強化」という言葉も少しずつ広がって、NPOにおける組織診断とは何かを真剣に考える人たちも現れ始め、その後は地方のNPO支援センターなども組織診断に取り組んでくれるようになりました。パナソニックさんが、フォーラムやワークショップ、関連プログラムを合わせて、いわばハイブリッドな展開をされたことで、「組織基盤強化」や「組織診断」が日本のNPOの世界で普遍的な意味をもつようになってきたのではと思います。非営利セクター全体にリアリティーをもって、組織診断に基づく組織基盤強化の重要性を提示できたのだと思います。

組織基盤強化を実体ある言葉にした
プログラムの意味は大きい。

特定非営利活動法人 市民社会創造ファンド 運営委員長

山岡義典 Yoshinori Yamaoka

組織基盤強化を実体ある言葉にしたプログラムの意味は大きい。

特定非営利活動法人 市民社会創造ファンド 運営委員長 山岡義典さんの写真3

特定非営利活動法人 市民社会創造ファンド 運営委員長

山岡義典 Yoshinori Yamaoka

福田 ちょうどプログラムが10年目を迎えた2010年にアフリカ分野を立ち上げました。アフリカの課題に取り組むNPOの数も少ないし、取り組んでいる方も少なかったです。そのような中で2008年のアフリカ開発会議(TICAD Ⅳ)を契機に、アフリカが注目されるようになりました。パナソニックとしてもこれからは一層、事業でアフリカに注力していこうと関心度合を高めている時期でもありました。先行していた子ども・環境分野において、海外で活動する団体に助成していましたが、アジアがほとんどでした。アフリカに特化しない限り、アフリカの案件は出てこないのではないかということで新しく分野を立ち上げました。

アフリカは、市民にとっても企業にとっても一般的に遠い地域です。世界のどの地域よりも多くの大統領選が行われていた時でも、日本では報道も少ない。アフリカをテーマにしている団体は何もかもが知られていません。そこでまずは組織基盤強化の中でも広報基盤を強化して、団体や活動を知ってもらうことから始めることにしました。パナソニックとしても、海外の重要な地域として事業に力を注いでいるところです。