「環境分野」における成果

古瀬 環境分野では2006年の助成プログラム改変を機に、団体にとって最も大事なミッションや中期計画を選考委員会でしっかり問うようになりました。その結果、今では応募申請の段階からミッション、ビジョン、中期計画という言葉が団体側から普通に出てくるようになり、単年度だけでなく3年後、5年後の姿まで考えられるようになってきたのは、環境分野のNPOにとって大きな成果だと思っています。

長年取り組んできた伴走型支援に
世の中がようやく追いついてきた。

特定非営利活動法人 地球と未来の環境基金 理事長・事務局長

古瀬繁範 Shigenori Furuse

長年取り組んできた伴走型支援に世の中がようやく追いついてきた。

地球と未来の環境基金 理事長・事務局長 古瀬繁範さんの写真2

特定非営利活動法人 地球と未来の環境基金 理事長・事務局長

古瀬繁範 Shigenori Furuse

私自身も2000年に「地球と未来の環境基金」を立ち上げ、よそ様の団体の案件で勉強させてもらいながら、助成プログラムと一緒に成長してきたと思っています。2016年末には「休眠預金活用法」が成立しましたが、公聴会などの資料を見ると、NPOサポート ファンドが当初から行ってきた伴走型支援、非資金的支援、組織の能力強化といった文言が散見されます。

「子ども分野」における成果

山岡 子ども分野の活動には常に対人サービスが伴います。人権感覚を伴う重い責任と組織や活動の持続性が問われると同時に、制度化に馴染みやすい分野でもあります。NPOが頑張れば、その活動が自治体の支援制度になり、それらが積み重なって国の支援制度になる。制度化されると経営は安定しますが、制度にとらわれすぎると団体の自主性がなくなってしまう。やがて行政に依存し、自分たちの目指してきたものがわからなくなる。

設立から3~4年は勢いでやれますが、行政に依存しはじめると設立当初に思い描いたモデルが狂い始めます。5~6年たつとミッションが見えなくなって組織的な危機を迎える。そこで応募してきた団体に対しては、自主事業を行うための人や資金の安定的な確保や成長、それにアドボカシーの重視やその方法を一緒に考えることで成果を上げてきたのではないでしょうか。組織が次に危機を迎えるのは、設立から10~20年後のリーダー交代の時期です。子ども分野の多くの団体が間もなくこの危機に直面すると思います。環境分野とは、10年余りの遅れがあるわけです。
組織基盤強化に3年継続して取り組んだ団体は、大きな影響力をもつようになっています。また、フリースクールや子育て支援、アレルギーのお子さんへの支援というように同種の団体によるネットワークも広がりつつあります。

「アフリカ分野」における成果

福田 アフリカ分野は活動分野ではなく地域で区切っているため、子どもの学習支援や女性の就労支援など、幅広い活動内容になっています。広報といえば、当初はホームページづくりが多かったのですが、最近では、活動の様子や子どもたちの変化、その国で起こっている課題を映像にまとめたり、各地で講演できる人を養成することで活動を知ってもらうなど、バラエティーに富んだ取り組みが増え、より多くの方々に知ってもらえるようになってきています。

NPO/NGOとパートナーシップを組んで
社会の発展に貢献していきたい。

パナソニック株式会社 ブランドコミュニケーション本部 CSR・社会文化部 部長

福田里香 Rika Fukuda

NPO/NGOとパートナーシップを組んで社会の発展に貢献していきたい。

パナソニック CSR・社会文化部 部長 福田里香の写真2

パナソニック株式会社 ブランドコミュニケーション本部 CSR・社会文化部 部長

福田里香 Rika Fukuda

パナソニックはアフリカで、自社製のソーラーランタンを電気のない地域に寄贈する活動にも取り組んでいますが、寄贈先の選定にあたってはNPOサポート ファンドで支援した団体が間に入ってくれました。このような団体が私たちがアフリカで事業をする際にもパートナーになっていただけるとありがたいです。そして社会課題の第一線で活躍されているNPOの皆さんとの関わりは、当社社員にも刺激を与えていただいています。

社会に与えた価値

市民社会創造ファンド 運営委員長 山岡義典さんの写真2

市民社会創造ファンド
運営委員長 山岡義典さん

山岡 NPOサポート ファンドは17年にわたって「組織基盤強化」にこだわり続け、NPOセクターの成長とともに、この言葉の意味を豊かにしてきました。組織基盤強化に取り組んだ団体には、自分たちの経験をそれぞれの地域で、もっともっと語ってほしいと思います。組織基盤強化に取り組むことで、自分たちの組織運営の課題をしっかりと言語化し、取り組みの経験を一つの物語として話せるようになります。

実践に裏づけられた言葉は普遍性をもち、同じ分野で活動する団体のモデルにもなるでしょう。この助成プログラムからは、そんなヒントになる言葉がたくさん生まれてきました。「組織基盤強化」を観念的ではなく、実体ある言葉にしたことの意味は大きいと思います。
この助成プログラムがもたらした社会的影響についてはSROIなどの短期での評価もあるとは思いますが、個々の実践成果について、さらに長期的な視点で評価していく必要があると思います。助成を終えて5~6年経った頃に「組織診断で指摘されたことで思い切って方向転換して、本当によかったね」と振り返ることもあるかもしれません。組織基盤強化に3年取り組んだ団体であれば、おそらく10年以上は、その効果が及ぶのではないでしょうか。

今後に向けて、新たな挑戦

福田 組織基盤強化の取り組みは必要だけど地味ですし、すぐに成果が形になってみえてくるわけでもない。そんな中でも、この言葉が市民権を得てきたことをうれしく思います。組織基盤強化は「いつの頃からか何かが着実に変わってきた」と、ひそかに感じられるような、たとえるなら「じわっと効く漢方薬による体質改善」のようなものです。その中から、社会を動かす力をもつ団体も、たくさん生まれてきました。

一方で、これまでは「子ども」「環境」「アフリカ」をテーマに助成を続けてきましたが、分野が区切りづらくなってきたことも事実です。さらに今後の企業市民活動の方向性を検討すると、私たちパナソニックはグローバルな企業であり、従業員の半分以上は海外の人たちです。グローバルな課題として今後どこに焦点を合わせるか考えたとき、国連が採択した「持続可能な開発目標(SDGs)」に注目すると、17項目の冒頭に「貧困をなくそう」という目標が掲げられています。

パナソニック CSR・社会文化部 部長 福田里香の写真3

パナソニック
CSR・社会文化部
部長 福田里香

パナソニックは今年100周年を迎えます。「貧困は罪悪である」と語った創業者の言葉に立ち返り、NPOサポート ファンドでも貧困の解消につながる貢献ができないか、検討を進めているところです。

社会を変える大きな力をもつようになったNPO/NGOをはじめとするステークホルダーの皆さんとパートナーシップを組んで、より良い社会に向けて貢献できれば非常にうれしい限りです。

※ SROI = Social Return on Investment 企業の社会貢献活動やNPO活動等の社会的価値を投資対効果で測る計量的評価手法
※ SDGs = Sustainable Development Goals 国連加盟国が全会一致で採択した2030年までの持続可能な開発目標。「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」「エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」「気候変動に具体的な取り組みを」など17の目標からなる。