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Panasonic NPOサポート ファンド for アフリカ 2014年報告会、広報に関する勉強会

各団体発表者 / 広報勉強会WSの様子

パナソニックでは、貧困や飢餓、教育、保健医療などあらゆる分野で問題を抱えるアフリカ諸国において、課題解決に挑むNPO/NGOの広報基盤の強化を支援するプログラム『Panasonic NPOサポート ファンド for アフリカ』を2010年より実施しています。
このプログラムの2014年報告会を、2015年1月22日、パナソニックセンター東京で開催しました。報告会の後には、博報堂から講師を招き、NPOの広報活動についての勉強会も行いました。

■必要としている支援を具体的に伝えることが、支援者層の拡大につながる

今回、『Panasonic NPOサポート ファンド for アフリカ』のサポートを受けて、5団体が広報活動の強化に取り組みました。

まず報告に立ったのが、世界の子どもたちを児童労働から守る活動を続ける認定特定非営利活動法人 ACE アドボカシー事業チーフ/広報担当 召田安宏さんです。

「私たちACEは、カカオの産地として知られるガーナで働く子どもたちへのサポートを続けています。子どもや学生など特に若い人たちに、消費者としてできることを考え、行動のきっかけを提供することを目的に、全国の高校生や大学生が児童労働のないチョコレートを日本中に届ける映画『バレンタイン一揆』を製作しました。またアフリカをわかりやすく理解できるカルタなどのワークショップ教材も開発し、多くの問い合わせをいただいています。今後は教員向けに教材活用の講習会なども開いていく予定です」

2番目は、アフリカを中心に医療支援を行う認定特定非営利活動法人メドゥサン・デュ・モンド・ジャポン(世界の医療団)ファンドレイジングマネージャー 関 麻衣さんの報告です。「医療支援とともに重視してきた“証言”活動の一環として、生死にかかわる深刻な課題や紛争などをダイレクトに伝える映像や写真を多用してきましたが、子どもにとっては身近な内容ではありませんでした。そこで今回、明るい色調でイラストを多用した子ども向けの学習サイト『アフリカを知ろう!世界を治すお医者さん、「世界の医療団」』を作成しました。アフリカの実情をもっと身近に感じてもらえるよう、子ども目線のテーマや語り口を重視し、気軽に学べるコンテンツとなっています。夏休みの自由研究の題材としても多くの方に使っていただくことができました」

続いての報告は、SNSの活用強化を図った公益社団法人 日本国際民間協力会(NICCO) 広報・渉外担当 八木純二さんです。 「私たちはマラウイで、穴を掘っただけの不衛生なトイレが伝染病の原因などにつながっている問題の解決を目指し“エコサントイレ”と呼ばれる高床式のトイレをつくっています。今回、若い世代の支援者を増やしていくために、ソーシャルメディアを使ったキャンペーンを実施しました。『ツイート/いいね!でトイレを建てよう』と呼びかけ、Twitterやfacebookでツイート/いいね!されるごとにウェブサイトにブロックが積まれていき、300集まると、実際にマラウイにエコサントイレが一基建ちます。思うように数字が伸びずあせった時期もありましたが、広報チームを再編するなどし、結果的に2基の増設を実現。情報発信力の高い若い支援者の増加につながりました」

4番目は、日本全国から寄贈された着物と洋裁技術指導を通じて、ルワンダの女性や若者の自立を支援する特定非営利活動法人リボーン・京都 マネジャー 牧田宏子さんです。
「支援者の高齢化が進んでいるため、5年後10年後を考えて20~40代の女性を対象にした広報強化に取り組みました。ホームページやパンフレット、ちらしの改訂などを行ったほか、キャラクター「うにだんごちゃん」とコラボレーションした広報活動を展開。おかげで会員数や収入は少しずつ増えています。今年は広報ツールに動画を加えて展示即売会などで発信していくため、広報人材の新規雇用も予定しています」

そして最後の報告は、スーダンで医療支援活動を続ける認定特定非営利活動法人 ロシナンテス 東北事業部 副部長 田地野 茜さんです。
「理事長のテレビ出演などで団体の露出の機会が多く、実はこれまで広報にあまり力を入れてきませんでした。その反省に立ち、今回ウェブサイトのリニューアルに取り組みました。結果、現地スタッフの意識がとても高まり、今では動画の撮影から編集、アップまですべてこなすだけでなく、ブログやfacebookでの発信にも積極的です。また、支援者に直接ヒアリングするワークショップを実施したところ、『もっと具体的に支援して欲しいことを伝えて』といった具体的なアドバイスを多くいただきました。活動ばかりに目を向けず、支援者とのコミュニケーションにも力を入れていくことが組織の成長につながることを学びました」

■アフリカの魅力、伝える広報にも期待

選考・審査にあたった方々のご意見も伺いました。

「『Panasonic NPOサポート ファンド for アフリカ』は、アフリカに特化したユニークなプログラムです。NPO共通の課題として、伝えたいのに伝わらない難しさを感じている方は多いと思いますが、このサポートファンドを通じて、受け手の立場に立って伝える重要性に気づかされた人も多いのではないでしょうか。NPOの素晴らしい活動がより良く伝わるためにも、アフリカの暗いニュースばかりでなく、魅力的な部分を伝えていく広報にも期待しています」

特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター
常務理事・事務局長 山口 誠史さん

特定非営利活動法人 アフリカ日本協議会
国際保健部門 ディレクター 稲場 雅紀さん

「最近感じているのは、情報発信においてこれまであまりつながりのなかったアフリカのダンスや音楽、スポーツなどの文化や文化面で活動する人たちと連携していくことの重要性です。NGOだから飢餓や貧困のことしか伝えられないわけではありません。発想を広げて広く考えていくことで、新しい動画活用や広報戦略が見えてくるはずです」

「『支援してください』という抽象的な問いかけではなく、具体的なニーズや必要としている支援内容を伝え、判断してもらうための選択枠を提供して初めて、支援者は“選ぶ”ことができます。世の中にシェア100%の商品なんてありません。ある程度興味をもってくれる人たちが誰なのかをこちらからも見極めながら、自分たちの団体、活動を選んでもらうために最短で届くコミュニケーションが今、NPOの広報に必要な視点だと思います」

株式会社博報堂 PR戦略局
統合プラニング三部 部長 加藤 昌治さん

パナソニック株式会社 ブランドコミュニケーション本部
CSR・社会文化グループ グループマネージャー 福田 里香

「重要なことは、抱えている課題をどう明確に捉えるか。そしてそれをいかに組織内で共有し、それぞれが自分事化していくか。そして、外に向けてどう発信していくか。その一連のステップが、課題の解決につながっていきます。発表を聞いて皆さんが課題解決に向けて進んでいることを実感しました。私たちも新たな課題を捉えてさらなるプログラムの発展を試みていきます」

■ゴールを見据えて、事実を加工する戦略的な広報を

後半は、博報堂の加藤昌治さんによる勉強会「戦略的な広報活動とPDCAサイクルの回し方」を実施しました。「PRとは、人間の行動や習慣を変える仕事」という加藤さんは、NPOの皆さんに“伝わる”広報を目指してほしいとエールを送りました。

加藤さんは、NPOの広報に不可欠な4つの視点を紹介しました。

まず一つ目は、NPOにとって広報活動で重要なことを理解し、成功パターンを知ること。加藤さん曰く、「リソースも予算も潤沢ではないNPOにとって大事なことは、第一に、抽象度を下げ、何のためにやるのかをできるだけ具体的にする」こと。そこが明確になったら、今度はそれを伝える切り口として、時事問題や流行、季節の旬など社会や相手の状況に合わせて注目されやすいように仕掛けることで、注目度が高まります。

次に、戦略的な広報活動の重要性です。「ただ事実を淡々と伝えるのではなく、目的に沿って事実を探しに行き、加工して伝える情報発信が大切」と強調する加藤さん。目的を立てるにあたっては、理念や活動テーマに沿って達成するゴールと期限を明確にしていくことが重要です。

三つ目は、各組織に合った広報戦略の立て方。「目的を達成するために、『誰に、何を、どのような言い方で』伝えるか。さらに、発信した結果、どんな効果が得られるか。ゴールを見据えた上で戦略を練ることが大事」と訴えます。加藤さんは企業のニュースリリースを出す際、事前に理想とする新聞記事を自ら作るそうです。記者の立場になって考え、載せてほしい情報を逆算することで、リリースに載せるべき情報が見えてくるのです。

最後に挙げたのは、そうした戦略や目標を具体的な行動に落とし込むこと。その方法として、加藤さんは、広報カレンダーづくりを提案しました。「世の中や業界の行事、イベントなどが一目で分かるものと、所属する組織と個人のスケジュールを記したもの。この3つを並べてみることで、世の中に求められる情報発信と伝えたい内容のマッチングが可能になります。」加藤さんは以前このカレンダーをいつも持ち歩いていたそうです。行動後は、結果だけでなくプロセスも含めてKPIとし、活動の効果を検証してPDCAを回していきます。

広報に必要な視点を学んだ後は、実践の時間です。グループに分かれて、団体の課題を特定し、伝え方を具体的にしていくワークと、広報カレンダーをつくるワークが行われ、実践的な勉強会となりました。

参加者からは「実際に団体で使ってみる」「普段の活動を客観的にみる良い機会になった」などの声があがりました。