NPO法人 はっぴぃ21福祉会をプロボノ支援
ビジョンを共有するための「事業計画」を立案

パナソニックは、社員が仕事で培ったスキルや経験を活かしてNPOを支援する「Panasonic NPOサポート プロボノプログラム」に取り組んでいます。
今回は東京と大阪の社員8人がチームを組んで、大阪府東大阪市を拠点に活動する「NPO法人 はっぴぃ21福祉会」の事業計画立案に取り組みました。2020年8月25日から、活動現場の見学や事業・サービスの現状分析、就労支援事業の業界における位置づけの調査、関係者へのヒアリングなどを実施し、その結果を「事業計画」の形に落とし込みました。
2021年2月9日、オンラインによる最終提案が行われたので、その模様をご紹介します。

働きたくても働けない人の就労を支援
スタッフ間で理念を共有する「事業計画」立案へ

はっぴぃ21福祉会は、働きたいけど病気や障がいで働けない人や仕事が続かない人の就労支援を行っています。就労継続支援B型事業所「はっぴぃプラザ」と「リサイクルショップはっぴぃ」を運営すると同時に、精神的な困難を抱えた人が自分の力をリカバリーする「WRAP(Wellness Recovery Action Plan)プログラム」を日本でいち早く導入し、利用者以外の人々にも広めてきました。
2004年から活動を続けてきましたが、団体の理念やこれから進む方向性を理事・スタッフ間で共有できていないことに課題を感じていました。

代表理事の住吉小夜香さんは、今回プロボノの支援を受けることになった経緯をこのように話します。
「設立から15年経過した私たちの活動を整理し、それがどれだけ世の中に知られているか、さらに知っていただくにはどうすればいいかを、外部の客観的な視点を採り入れて考えたいと思いました」

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はっぴぃ21福祉会 代表理事
住吉 小夜香さん

関係者へのヒアリングを通し、強みと課題を分析
共有した理念を行動計画へつなげる道筋を提示

以上のような課題を受けてプロボノチームは、ビジョン・ミッション・スピリット・スローガンを明確にし、事業運営方針や目標を理事・スタッフが共有するための「事業計画」を提案することにしました。
初めに、「はっぴぃ21 設立から現在までのストーリー」を視聴覚資料としてまとめ、集客・運営・効果測定という三つの軸で団体の推移をデータ化しました。さらに、就労継続支継B型事業の業界における団体の位置づけや競合を調査した結果、対象とする利用者疾患の新規枠を広げるよりエリア拡大を目指したほうが効果的だとわかりました。

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最終提案の様子

続いて、SWOT分析により団体の強みと弱みを分析し、スタッフ・利用者・外部関係者へのヒアリングを行いました。その結果、利用者への対応やスタッフの働きやすさには絶賛の声が上がり、満足度が高い一方で、マーケティングや効果測定、計画の共有が弱く、現場は完璧にこなすけれど経営改善視点に意識が向きづらいことや、課題が出てこないことがむしろ課題であることが見えてきました。
さらに、事業ごとの急成長分野に注目して「5ヶ年事業計画」を立て、事業計画の優先順位を事業所ごとにつけたところ、施設内就労に対して施設外就労の比率が急増するのでスタッフの増員・配置バランスに注力すべきことが明らかになりました。

以上のまとめとして、プロボノチームは次のような重点施策方針を提案しました。

  • 設立からのストーリーをコンテンツとして提供し、ビジョンを共有する。
  • 経営視点に誘導するワークショップを開催し、業務改善を提案する際は目的・目標・測定方法をワンセットにする。
  • 団体の強みを「マーケティング作戦」でアピールする。

この作戦はTwitterやHPに加えて、有望利用者候補と接点のある場所にポスターやチラシを掲示し、QRコードと相談フォームで簡単に申し込めるようにするというものです。その一例として、ラジオを聴く時間が多いとされるひきこもりの人がハガキを投函する郵便ポスト近くにポスターを掲示することなどを提案しました。

最後に、これから取り組むべきことを「施策別行動計画表」に落とし込み、最大の課題だった団体の理念を共有し、スタッフの思いとマッチングする行動計画につなげるための事業評価指標として「行動振り返りシート」を作成。年に1度目標を設定し、数か月に1回程度、達成の度合を評価することを提案しました。
またサプライズとして、スタッフ一人ひとりのヒアリングから聞き出した想いを描いたデザインパネルをつくってプレゼントしました。そこには「自己アピールの素材として使ってほしい」というプロボノチームの願いが込められています。

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サプライズで作成したデザインパネル

最終提案を受けての感想

最終提案終了後、はっぴぃ21福祉会の皆さんに感想をうかがいました。

住吉代表理事からは、
「今回の事業計画立案に関しては周囲からさまざまな意見も出ましたが、私たちの今後に向けて必要な取り組みであり、最終的には、やって本当によかったと思っています。福祉の業界をご存じない方が、よくここまで調べてくださったと感動しています。提案を今後どう有効に使っていこうかと考えているところです。この出会いは私の中で大きなものになりました」

また、理事の岡本 貴弥さんから
「今日の提案の中に、私たちが理事会で取り上げてきたことのエッセンスに近いものが出てきて安心しました。課題がないのが課題とのご指摘をいただきましたが、あれはまさに経営層と現場との隔たりを表す言葉です。そこを現実的に埋めていく打ち手をご提案いただいたので、少しずつでも前に進めていきたいと思います」
との感想がありました。

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はっぴぃ21福祉会 理事
岡本 貴弥さん

プロボノチームの感想

最後に、パナソニックのプロボノチームの感想を紹介します。

●廣瀬 光子さん
プロボノも、社会福祉も、事業計画も、リモートチームも初めての経験でした。これで終わりにせず、これをきっかけとして福祉のことを考え関わっていきたいです。

●飯塚 貴士さん
普段は技術者をしており、相手の顔が見えづらいのですが、強い思いで現場と向き合う皆さんの姿を見て、どんな仕事もお客様のためであることを思い出しました。

●三好 美紀さん
利用者さんの回復だけでなく、夢を語れるところまで支援している姿に感銘を受けました。今回の経験を次の活動や、困っている方のために活かしていけたらと思っています。

●中村 冬斗さん
業務の棚卸やヒアリング、音楽療法の提案などに一心不乱に取り組み、これまでの仕事とは違う世界で新たな経験をさせていただきました。少しでも、お役に立てたなら幸せです。

●山崎 英明さん
プロボノ7年目の私以外、全員が未経験者。しかも未知の分野でしたが、団体設立の経緯から理解することで活動を疑似体験し、団体の一員になったつもりで取り組みました。サプライズで制作したデザインパネルが、スタッフの皆さんのやる気や将来を前向きに考える気持ちにつながってくれればうれしいです。

●青木 恵子さん
福祉や地域とのつながりがなく、心を病んでも助けを求めづらい社会の中で力強い活動だと思いました。そのことが結果として、スタッフの方が長く働きやすい環境につながっているのでしょう。今後、身近に心を病んで休職する方がいたら紹介したいと思います。

●杉江 拓治さん
中小企業診断士の資格を活かして貢献できればとの思いから参加しました。法人の理念を実現するには経営数値・事業的な視点も持って活動を継続させることが必要になるで、その部分で、お役に立てていればうれしいです。

プロボノ経験者は一人だけ。コロナ禍による制約も多い中での活動でしたが、それだけに「事業計画」最終提案の日を迎えた喜びはひとしおで、支援を受けた団体にとってもプロボノチームにとっても忘れがたい1日となりました。

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プロボノメンバーとはっぴぃ21との記念写真

NPO法人 はっぴぃ21福祉会

働きたいけど病気や障がいで働けない、自信がない方に対しての支援のため2004年に設立。仕事を提供し知識及び能力の向上に必要な訓練を行うことで、働く喜びを感じてもらうお手伝いをすることを目的に雇用契約を結ばない形態での障がい福祉サービスを行っている。