カンボジア特派員レポート
識字教室への寄贈と視察

2020.02

集合写真

2020年2月9日〜12日、社内公募で選ばれた海外ボランティア特派員3名が、「JHP・学校をつくる会(以下、JHP)」の活動地であるカンボジアのコンポンチャム州を訪問し、成人のための識字教室で活用されるソーラーランタンの様子を視察しました。

急成長の裏で広がる格差社会

カンボジアは、1953年にフランスから独立した後、1991年のパリ和平協定を結ぶまでの長い間、内戦やポルポト政権による知識人の大虐殺など苦難の歴史を歩んできた国で、今もなお、再建途上にあります。近年、中国や韓国をはじめとした海外企業からの投資が増加しており、急速な経済成長で、都市部では暮らしの近代化が進み、携帯電話の普及率はなんと125%。その理由に、通信費が月2ドル程度と非常に安いことが影響しているようです。一方で、電気代は物価に比べて非常に高く、日本とほぼ変わりません。村落部の電化率は90%を超えるまで向上しているものの、高い電気代が払えないので、電線がきていても電気を使えない家庭がまだまだ多いといいます。

パナソニックは、2013年にスタートした「ソーラーランタン10万台プロジェクト」の取り組みを引き継ぎ、2018年からは「みんなで“AKARI”アクション」として、一般の方にも参加を呼びかけ、無電化地域にソーラーランタンを届ける活動を行っています。

社員は、「ソーラーランタン10万台プロジェクト」時代から寄付に参加し、社内公募で選出された社員現地に派遣され、視察を行う海外ボランティア特派員は、今回で4度目となります。

教育を受けられなかった成人のための識字教室

JHPが運営する識字教室が開校されているコンポンチャム州は、プノンペンから北へ90kmほど移動したところにあります。村人は農業を営んでおり、農業ができない乾季は、縫製工場に働きにでたり小売業をしたりして、生計を立てています。カンボジアの農村部には、ポルポト政権時代に教育を受けられなかった人々や、生活が苦しく学校に行かせてもらえず、家の手伝いをしなければならなかった人々がたくさんいます。そうした15歳以上の非識字者を対象に、「成人のための識字教室」が開校されています。

識字教室は、月〜土の週6日、18時から20時まで授業が行われます。約8ヶ月かけて学び、読み・書き・計算のほか、生活に欠かせないさまざまな知識を身につけていきます。卒業までに4回テストがあり、その合計点が一定の基準をクリアすると、カンボジアで小学校卒業に相当する郡認定のディプロマが発行されます。そのディプロマがあると、たとえば縫製工場で働く際に、ディプロマがない人よりも高い給料がもらえるなど収入増にもつながります。

写真 @Panasonic Corporation
生徒100人中、93名は女性。学校に通ったことがなく、文字の読み書きが全くできない人が優先的に受講することができます。

通い続けてもらうために、
「楽しく学べるクラスづくり」が大事

識字教室を開校している4村のうち、チャンコン村とコンポート村の識字教室を見学しました。

日が暮れて、あたりがだいぶ薄暗くなってきた頃、昼間の農作業を終え、家族の夕飯の支度を済ませた生徒たちがぽつりぽつりと、ソーラーランタン持参でチャンコン村のコミュニティセンターに集まってきます。道に街灯はないので、暗い夜道を歩く際は、ソーラーランタンのあかりが頼りになります。識字教室が始まるころには、あたりはすっかり真っ暗闇になっていました。

写真 @Panasonic Corporation
授業が始まる前に、簡単な寄贈セレモニーを実施。社員による寄付でソーラーランタンを寄贈

ソン先生の授業は、とにかく生徒たちの笑い声が耐えず、先生も生徒もとても楽しそうです。「8ヶ月間通い続けてもらうためには、学ぶことは楽しいこと、間違えても大丈夫という雰囲気づくりや飽きさせない授業構成が大事。そうしたクラスを運営できるように、教師はしっかりと研修を受けているんですよ」と話すのは、JHPスタッフの辰川はる奈さん。ソン先生の話に生徒全員が熱心に耳を傾け、真剣に、そして楽しそうに授業に参加している様子を見て、生徒のみなさんの「学びたい」という純粋な気持ちが強く伝わってきました。

写真 @Panasonic Corporation
教師のソン・チャン先生は、午前中は公立小学校で教員をしていて、午後の農作業が終わったあと、識字教室で教えているそうです。

「卒業後は、スモールビジネスを立ち上げたい!」

コンポート村の識字教室では、数少ない男性生徒のひとり、Tet Tongさんに話を聞くことができました。

Tetさんは、コンポート村で農業を営んでおり、妻と1歳になるお子さんと3人で暮らしています。識字教室に通うまでは学校で学んだことがなく、読み書き、計算ができませんでした。そのため、家を借りるときにサインができなかったり、契約文書が読めなく騙されたりなど、悔しい思いを何度も経験したそうです。「農作業を終えたあとなので毎日とても疲れているが、授業が楽しいし、何より学べることがとてもうれしい。家族も『頑張って』と応援してくれている」とTetさん。識字教室に通うようになって読み書きができるようになったので、契約書類の内容も理解でき、サインもできるようになったと喜んでいました。

Tet Tongさんと会話中の写真 @Panasonic Corporation

識字教室に通うようになって、Tetさんには夢ができたそうです。「識字教室を卒業したら、トラクターを購入して、村の人たちにレンタルするスモールビジネスを始めたいと考えている。来年中には事業を始めたい」と目を輝かせながら、熱く語ってくれたのがとても印象的でした。

また、Tetさんは、識字教室に通って教育の大切さを身をもって痛感し、教育に対する意識が大きく変わったといいます。「自分たちは幼少時、教育を受ける機会がなかったけれども、知識がなければ貧しい生活から抜け出すことはできない。自分の子どもたちには、同じ思いをさせたくない。なにがあっても学校に通い続けて知識を身に着けて欲しい」と固く決意しているとのことでした。

ソーラーランタンが、ただのあかりとして役立っているのではなく、人々の教育に対する意識をも変え、その先にある豊かな暮らしへとつながるきっかけになっているのを確かめることができました。

パナソニックのカンボジア事務所が、海外の事業所として初めて「みんなでAKARIアクション」に協力

今回の視察には、カンボジア事務所から現地スタッフが同行しました。「みんなで“AKARI”アクション」に、海外の事業所が参画するのは、今回が初めてです。その理由について、パナソニック アジアパシフィック株式会社 カンボジア事務所シニア・マネージャー 佐藤誠さんは、「普段は、商品を通じた社会貢献に取り組んでいるが、ソーラーランタンを寄贈しているような地方の農村地に訪問する機会がなかなか持てていなかった。今後、カンボジア事務所として、地域にどのように貢献できるかを考えるきっかけにしたいと考え、今回、スタッフを2名派遣することにした」といいます。

パナソニック アジアパシフィック株式会社 カンボジア事務所シニア・マネージャーの佐藤 誠 氏

写真 @Panasonic Corporation

派遣されたスタッフの1人、Vichet Keovorleakさんは、カンボジア事務所に2019年8月に入社し、Facebookページで商品情報の発信などを担当しています。入社前は、6年間日本に留学していて、修士号を取得。「発展途上にある母国カンボジアの成長を支える人材になりたい」という、かねてからの思いを実現するために、製品をただ販売するだけでなく、よりよい社会の発展を支えるパナソニックの企業理念に共感し、入社を決めたといいます。

特派員と一緒に識字教室の生徒にインタビューするVichetさん(左から2番め)

写真 @Panasonic Corporation

今回、初めて無電化村を訪れたVichetさんは、「カンボジアという国が成長し、今ある貧困問題を解決するためには、人材育成がもっとも大事だと思う。「みんなで“AKARI”アクション」が、単にあかりを届けるだけでなく、人々のマインドセットを変えて、教育の大切さを次の世代へと伝えるきっかけづくりになっているのに感動した。今回の経験をチームで共有し、今後のカンボジア事務所でのCSR活動に活かしていきたい」と意気込みを語りました。

JHPの児童養護施設「CCH」の子どもたちとの交流

今回の視察では、JHPがプノンペンで運営している児童養護施設「幸せのこどもの家(CCH)」も訪問しました。CCHは、ゴミ山で生活していた孤児を支援するため、JHPが2002年に創設した児童養護施設で、地雷の被害や貧困による親の育児放棄、HIV/AIDSの危険な地域などから避難してきた6〜18歳までの子どもたち108名が寮生活を送りながら、読み書き計算を学び、縫製や美容師、コンピューター等の職業訓練を受けながら暮らしています。

CCHでは、特派員が企画したパナソニックや日本に関する○☓クイズをしたり、カンボジアの遊びを教えてもらうなど、交流を深めました。

写真:交流の様子 @Panasonic Corporation
写真:交流の様子 @Panasonic Corporation

現場に行ったからこそ見えてきたもの

2日間の視察を終えて、特派員3名の目には、無電化村の暮らし、そしてみんなでAKARIアクションの活動は、どのように映ったのでしょうか。最後に感想を聞きました。

多和 慎介 さん

「仕事のあと疲れているのにもかかわらず、識字教室に集まってきて、ソーラーランタンのあかりのもとで勉強している姿をみて、学びたいという強い気持ちが伝わってきた。同時に、そういった場面で、パナソニックのソーラーランタンが貢献できているのを見ることができてうれしかった。チャンコン村の村長の『毎朝、暴力などがなく、平和に目が覚めて一日がスタートできるときに幸せを感じる』という話がとても印象的だった。パナソニックの製品がひとりでも多くの人を笑顔にできるように、社内でまわりを巻き込みながらできることをやっていきたい」

写真 @Panasonic Corporation

馬場 壮也 さん

「無電化村ときくと、山奥の辺鄙な場所にあるようなイメージだったが、幹線道路から少し入ったところで、電気の使えない暮らしをしている人がまだこんなにもたくさんいることに驚いた。識字教室で学んだことが自信や収入アップにつながり、元生徒さんが堂々とした様子でインタビューに受け答えされているのが印象的だった。人々の生活を豊かに変える機会を、製品を通して提供しているパナソニックは、改めてすごい会社だなと感じた。『みんなでAKARIアクション』の活動を、社内外でより多くの人に知ってもらえるようにアクションをおこしていきたい」

写真 @Panasonic Corporation

島田 楓 さん

「ソーラーランタンが、あかりを届けるだけでなく、人々のよりよい暮らしに貢献しているのを見ることができうれしかったのと同時に、入社する前から抱いていた『社会貢献性の高いビジネスをパナソニックでやりたい』という思いが、よりいっそう強くなった。また、新入社員の私でも、自ら手を上げればチャンスをもらえるカルチャーがあるのも、改めてパナソニックのよいところだと思った。社員でもし特派員プログラムに関心がある方がいたら、ぜひ参加してみて欲しい」

写真 @Panasonic Corporation

※出典:EAC Salient Features of Power Development in Kingdom of Cambodia