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スーダンの人々を支える医療支援もっと多くの人に伝えるために 認定特定非営利活動法人ロシナンテス

長く内戦が続いたアフリカのスーダンで医療支援活動を続ける「認定NPO法人ロシナンテス」。約10年にわたる現場での活動やスーダンの現実について、より多くの人に知ってもらうため、「NPOサポートファンド」を通じて広報の強化に取り組んでいます。

後回しになりがちだった広報活動

ロシナンテス 東北事業部副部長
田地野 茜さん

アフリカ・スーダンで医療支援活動を行うロシナンテスは、元外務省医務官だった医師の川原尚行さんによって2006年に設立された。当時のスーダンは、テロ支援国家に指定され、日本からの援助が停止されていた時期だが、「内戦やマラリアなどの感染症で多くの国民が苦しむ現状を何とかしたい」と、満足な設備や機材がない中、無医村の巡回や病院支援などを開始した。活動は医療支援にとどまらず、子どもたちの成長や人々の生活改善を目指して、サッカースクールの開校や井戸の修復・保守管理、母子保健事業なども展開し、2014年には両国の交流を深めるため日本スーダン交流館「無東西」の設立も実現した。

「スーダンでの活動が広がりを見せる一方で、私たちの活動を支援してくれる方々への報告や広報活動は不十分でした」こう話すのは、ロシナンテス東北事業部副部長の田地野茜さん。田地野さんは事業部で活動する傍ら、広報も担当している。理事長のテレビ出演など注目される機会も多く、それ以外の広報が後回しになってしまっていたのだ。

しかし、ホームページの情報を更新しないまま放置してしまうなど、組織としての基本的な広報活動すらままならない状況だった。たとえば、スーダンでの活動について説明する際に用いる地図。2011年7月にスーダンから独立した南スーダンの国境線がひかれていない古い地図が、長い間、ホームページに掲載されてしまっていた。田地野さんは「スーダンで活動し続ける団体としてイメージ低下にもつながりかねません」と苦笑いする。

ホームページリニューアルが現地スタッフの意識改革に

そこで、2014年にパナソニックの「NPOサポートファンドfor アフリカ」の助成を活用し、広報活動に力を入れる決断をした。スーダンについてもっと多くの方に知ってもらえるよう、まず取り組んだのがホームページのリニューアルだ。見せたい項目をシンプルに作り替えたほか、動画やfacebookなどのSNSをトップページに掲載することで、最新情報が一目でみられるようにした。

トップに掲載したYouTube動画はスマートフォンやタブレット端末からも閲覧が可能。この動画は、2012年に製作したDVDを有効活用し、理事長の川原さんがスーダンでの取り組みについて話している映像に、診療現場や街の様子が分かる映像を組み合わせ、学校の授業やセミナーで活用してもらえるよう子どもにも分かりやすい内容になっている。

リニューアルオープンしたホームページは「見やすくなった」「活動の進捗が分かりやすい」と好評で、新規会員登録数の増加にもつながった。さらに、このリニューアルを通じて、大きな変化が生まれた。「これまでスーダンの現地スタッフから送られてきた写真や動画などの編集やアップロードの作業は、福岡の事務所で行っていました。タイムラグが発生するので、なんとかしたいと思っていましたが、リニューアルを機に現地スタッフの意識が変わったのです」と田地野さん。動画の撮影から編集、アップロードまですべて現地スタッフが積極的に実践するようになり、ホームページのページビュー数や“滞在時間”などを分析できるGoogle Analyticsも見るようになった。目に見える成果が出たこともあり、「活動を現地からタイムラグなしでもっと伝えたい」と更新頻度も上がり、今ではfacebookやブログも率先して投稿している。

支援者と会って分かった双方向コミュニケーションの重要性

そして、もう一つ取り組んだのが、支援者の声を直接聞くための「報告会」だ。東京で開いた会には31人が参加し、ロシナンテスを応援してくれる理由や団体の魅力、マイナス面、広報への要望やアドバイスなどを聞いた。その結果、「情報を流すタイミングが遅い」「求めている支援をもっと具体的に示してほしい」と様々な意見やアドバイスが寄せられた。「議論がヒートアップして、ときには耳がいたくなるような厳しい内容もありましたが、直接支援者の方から聞く意見は新鮮でとても貴重な内容でした」と田地野さんは言う。

この報告会で寄せられた意見は、団体内で共有し、次年度の広報計画に取り入れていく予定だ。また、「支援者とスタッフが直接話す場をもっと設けてほしい」との声を実現すべく、2015年度もこの報告会を開催する。

「今までは理事長の講演会が広報活動の中心で、支援者の方に対する一方通行のコミュニケーションしかありませんでした。でも今回、パナソニック様のご支援をきっかけに支援者の方との双方向のコミュニケーションの重要性に気づきました」と田地野さん。支援者がより深くロシナンテスを知り、一緒になってスーダンの人々の幸せを考える時間を、これからも意識的に作っていく計画だ。

理事長の川原さんも、広報基盤強化の取り組みを通じたスタッフの意識の変化を頼もしく見守っている。「今回パナソニックの助成金を頂き、当団体のホームページを改定できました。本当にありがとうございました。この改定をきっかけに、現場で精力的に力を注ぐのと同様に、広報の重要性に気が付き、各スタッフ、私自身が積極的に現場からの報告を送るようになりました。お陰様で、多くの方からの反響を頂けるようになり、我々の励みとなりました。次の段階では、海外向けの広報にスーダン人スタッフに頑張ってもらいたいと思っています。」

[団体プロフィール]認定NPO法人ロシナンテス

2006年、福岡県北九州市でNPO法人を設立。同年、スーダンでNGO登録し、医療を中心とした活動を開始。スーダンでの水・衛生事業、学校・教育事業、スポーツ事業、交流事業などのほか、2011年3月から東日本大震災で被害にあった宮城県名取市などで緊急医療支援を実施。医療支援のほか、瓦礫撤去や子どもたちの学習支援、農業支援など現地のニーズに合わせた活動を展開している。『ひとりはみんなの為に、みんなはひとりの為に』という哲学のもと、地元の方に寄り添い、共に歩む姿勢で活動継続中。

巡回診療中の川原理事長