環境:生物多様性保全

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生物多様性に関する考え方

私たちの社会における企業経営や人間生活は、土壌、大気、水、動植物から成る自然資本によって提供される様々な自然の恵み(生態系サービス)によって成り立っています。自然資本の恩恵を将来にわたって継続的に享受するためには生物多様性保全が重要ですが、その一方で、生物多様性は史上かつてない速さで大規模に損なわれています。
国連生物多様性条約COP10で採択された愛知目標および国連の持続可能な開発目標(SDGs)への貢献は、民間企業にも求められています。さらに2018年11月の生物多様性条約COP14シャルム・エル・シェイク宣言では「エネルギー分野、鉱業、インフラ分野、製造業及び加工業における生物多様性の主流化」が採択されました。当社は事業活動が生物多様性に与える影響を適切に把握し、その保全に貢献するという目標を掲げ、自治体や環境NGO、専門機関と連携して取り組みを推進しています。具体的には、生物多様性保全を事業へ落とし込んだ取り組みとして推進するため、土地利用・調達・商品の3つを重点分野と位置づけています。重点分野の推進にあたっては適宜、生物多様性条約 第6条の基本的な考え方である生物多様性行動計画(BAP)を策定した上で、施策の実践、達成状況の確認、取り組みの改善などを行っています。

土地利用分野の取り組み

事業所の緑地は、地域の生物多様性保全に貢献できる大きな可能性を持っています。とくに都市部では野生生物が生息・生育できる自然環境がほとんど残されていないため、たとえ小さくても、その地域本来の植生や水辺などを備えていれば、様々な生きものにとって大切な場所となります。

行政や専門家などと連携、生きものの生息空間を守る

事業所緑地と近隣に点在する緑地や公園とのつながりによるエコロジカルネットワーク形成で、鳥やチョウ、トンボなどの生きものが周辺に点在する緑地や水辺の間を移動できるようになり、生息できる空間が広がることになります。また地域の希少な動植物は、環境省や自治体から絶滅危惧種に指定され、行政との連携、専門家の指導や協力を得ながら保全活動を行っています。大阪府・大阪府立大学・大阪府立環境農林水産総合研究所とおおさか生物多様性パートナー協定を締結した門真市ライフソリューションズ社のビオトープ、大阪府みどりの風の道形成事業に参画して大阪府・豊中市・大阪府立大学・大阪府立環境農林水産総合研究所とおおさか生物多様性パートナー協定を締結した、パナソニックホームズ本社の「つながりのひろば」などがあります。

ビオトープによる希少種の保護と環境教育への活用

2009年3月、ライフソリューションズ社 門真地区構内に、約1万1,000m2の緑地であるはんえいの広場を造成し、その一角に約300m2のビオトープを設立しました。門真地区が淀川と花博記念公園鶴見緑地(大阪市鶴見区)の間の立地であることを活かし、多様な生物が自然に生息できる場となるように、ビオトープの企画段階から公立大学法人大阪府立大学に専門的な助言や指導をいただきながら、生物のモニタリングを継続的に実施してきました。設立当初から、ビオトープの維持管理は社内ボランティアが実施しています。毎年、春先にカルガモが営巣して雛鳥の姿が見られ、従業員の環境意識向上に寄与しています。
2012年6月からは、地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所水生生物センターからの提案と指導に基づき、環境省および大阪府絶滅危惧種のカワバタモロコ(淡水魚の一種)とミズアオイ(湿地に自生する水生植物)をビオトープに導入し、保護活動を行っています。2013年11月には、大阪府、大阪府立大学、環境農林水産総合研究所と当社の間の、おおさか生物多様性パートナー協定の調印式とあわせて、新たに北河内生まれのミナミメダカ(環境省及び大阪府絶滅危惧種)をビオトープに100匹導入しました。2016年10月には、地域の小学生を招待して、いきものとエコの教室を開催しました。子どもたちがビオトープにすむ身近な生き物の生態や、絶滅危惧種の存在を知り、自然や環境について考えるきっかけを提供することができました。
また、同社の活動は2015年9月、他の模範となる豊かな環境づくりに向けた取り組みで顕著な功績のあった個人・団体又は事業者に贈られる、平成27年度 おおさか環境賞(主催:大阪府)の奨励賞を受賞しました。併せて、大阪府立大学、大阪府立 環境農林水産総合研究所との取り組みも、同協働賞を受賞しました。
今後もビオトープを通じて、地域の生物多様性に対する貢献と従業員の意識向上に寄与していきます。

ビオトープでの、いきもの観察会

「つながりのひろば」の活用による子ども環境教育

創業50周年を迎えた2013年4月、本社ビルの敷地内に地球環境を未来へつなぐ(生物が集まる環境創出で地域環境と共存)ことを一つのコンセプトとしてオープンした「つながりのひろば」。在来種を中心とした植栽約2500本がとりかこむ「つながりの森」をはじめ、ビオトープ(150m2)に千里生まれのメダカを放流した「水のひろば」や11kwの太陽光発電システムを設置している「太陽のひろば」などで構成されています。
その後2014年に、大阪府、豊中市、公立大学法人大阪府立大学、地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所と全5者で、「おおさか生物多様性パートナー協定」を締結しました。本協定は、生物多様性保全に率先して取り組む企業に対して、大阪府、豊中市及び大学・試験研究機関等が連携して支援することにより、企業による生物多様性保全活動の取り組みを促すとともに、その重要性について、広く府民・市民に普及啓発することを目的としています。
協定の一環として、パナソニック ホームズ本社ビルと本社ビルに隣接する「つながりのひろば」では、“おおさか生物多様性普及啓発キャンペーンのぼり”を立て、従業員はもちろん、「つながりのひろば」に足を運んで下さったお客さまに向けて、生物多様性の保全の重要性を広く周知し、自主的な活動を促進しました。
開設から5年が経過した2017年6月には、ビオトープの池に保全している希少種のモニタリングを実施しました。捕獲したサンプルを「標識再捕獲法」で推定すると、それぞれ数十匹放流した「ミナミメダカ」と「カワバタモロコ」が繁殖しており、ビオトープという小さな生態系での保全活動が、順調に機能していることがわかりました。
今後も、生物多様性の恵みに基づく資源や生態系のもたらすサービスに支えられている企業の責務として、生物多様性の保全を含む自然環境保全の取り組みをさらに積極的に展開していきます。

つながりの広場 全景
おおさか生物多様性普及啓発キャンペーンのぼり

定量評価手法に基づく外部認証の取得

アプライアンス社草津拠点は、生物多様性に配慮した事業場として2018年3月に一般社団法人 いきもの共生事業推進協議会の「いきもの共生事業所認定(ABINC認証)」※1を取得しました。審査の中では、自然環境を適切に保全し多様な生きものに応じた緑地づくりを進めていること、特定外来種についても適宜管理が行われ、モニタリング設置で状況把握されていること、また、自治体や小学生など外部関連主体・地域の人とのコミュニケーションに緑地が積極的に活用されていること、などが評価されました。
2011年から継続しているモニタリング調査で840種の動植物が確認され、都市化が進む地域において重要なビオトープであり、地域のエコロジカルネットワークの形成にも貢献していることがわかりました。これらの取組みが評価され、滋賀県の「2018年度 しが生物多様性取組認証制度」※2で最高の3つ星を取得しました。

※1 ABINC認証は、企業と生物多様性イニシアチブ(JBIB)が開発した土地利用通信簿(環境アセスメントとしての生物多様性定量評価ツール)の実施といきもの共生事業所ガイドラインに基づき、事業場緑地の整備、管理を第三者の評価により認証する制度
※2「しが生物多様性取組認証制度」は、事業者が行う生物多様性保全に関する取り組みを、1つ星~ 3つ星で知事が認証するもので、都道府県が生物多様性に関する幅広い取り組みを認証するものとして、全国でも初めての制度

アプライアンス社
共存の森の生物多様性
レポートⅡ
しが生物多様性
取組認証制度
3つ星マーク

オートモーティブ社※3 松本工場は2015年9月JHEP認証※4のAランクを取得しました。これにより、毎年認証確認手続きが行われ、事業場緑地の生物多様性の保全活動は継続推進しています。

※3 認証取得時点の社名はオートモーティブ&インダストリアルシステムズ社
※4 環境アセスメントで用いられる「ハビタット評価手法(HEP)」をもとに、(公財)日本生態系協会が開発した生物多様性定量評価手法

アプライアンス社共存の森全景

調達分野の取り組み

生物多様性の保全と持続可能な利用を目指した木材グリーン調達ガイドラインを、WWF(世界自然保護基金)ジャパンと協議し策定しました。

伐採時の合法性が確認できない木材・木質材料(区分3)の排除

2018年度調査の結果、木材・木質材料の総調達量は約35万m3でした。区分ごとの内訳は、優先調達に努める区分1が79.3%(前年度差+2.0ポイント)、調達適合とする区分2が20.7%(前年度差−2.0ポイント)、調達排除に努める区分3が0%(前年度差±0ポイント)でした。調達ガイドラインの策定以来、区分3の調達ゼロ化を目指して取り組みを進めており、2014年度から連続でゼロを継続しています。今後も取り組みを継続推進し、区分3の調達ゼロを維持していきます。
毎年度末には達成状況の確認をするとともに、次年度に向けた対策の検討を行っています。

WWFジャパンと協議・策定した木材グリーン調達の考え方

WWFジャパンと協議・策定した木材グリーン調達の考え方。区分1「優先調達に努める木材・木質材料(環境面で保護価値の高い森林を破壊していないことを第三者から認証されたもの/持続可能な森林経営を実施していることを第三者から証明されたもの/木質系再生資源)」、区分2「調達適合とする木材・木質材料(伐採時の合法性が確認されたもの/業界団体等により合法性認定が得られたもの)」、区分3「調達排除に努める木材・木質材料(伐採時の合法性が確認できないもの)」

木材資源保全の観点から、天然素材の使用量削減にも取り組んでいます。フローリング(木質床材)のフィットフロアー(耐熱・非耐熱)は、リサイクルされた木質材料を100%(接着剤は除く)使用する、当社独自の新素材フィットボードを採用しています。

フィットフロアー(耐熱・非耐熱)断面図

商品分野の取り組み

生物多様性保全に貢献する商品の情報をお客様に提供できるよう、国際環境NGOバードライフ・インターナショナルと第三者評価手法を構築しました。この手法を用いて生物多様性に関わりの深い商品の評価を行っています。そして、グリーンプロダクツの判定基準により、生物多様性の保全に配慮した素材を主要な部位に活用した商品、生物多様性の保全に寄与する機能を有する商品などを生物多様性貢献商品と定義しています。

2013年度、パナソニック環境エンジニアリング(株)は船舶移動による周辺海域の海洋生態系破壊を抑制するバラスト水処理システム(BWMS)ATPS-BLUEsysを開発しました。バラスト水は、貨物船舶が船体バランスを保つために船舶空荷時に積載する海水です。航行による海域の移動で、バラストタンクに積み込んだバラスト水の採水国と排出国が異なることから、海水に含まれる外来性有害水生生物(プランクトン、バクテリアなど)による生態系、環境、資源への影響が問題となっています。ATPS-BLUEsysは、国内初のインライン電気分解方式により、フィルターを使用せずにバラスト水中の微生物を国際海事機関(IMO)に定められた排水基準以下に処理することができ、IMOによる基本承認(G9BA)を取得しました。2017年3月に国土交通省の相当指定を取得したことにより、2017年度から本格的な販売を開始しています。
また、現在は米国の独自規制に対応した認証取得試験を進めています。

また当社では、神奈川県藤沢市、横浜市にサスティナブル・スマートタウン(SST)を開発しました。現在は大阪府吹田市でもSSTの開発を予定しています。SSTでは、まちづくりのガイドラインに、温室効果ガス排出の削減などのほかに、まちの緑地に関して生物多様性の考え方を取り入れ、在来種を基本とした植栽、地域と共生する生態系ネットワークを形成することで、持続可能な街づくりに役立てています。これをもとに藤沢SSTと西日本最大のスマートシティ潮芦屋『そらしま』で、造園(植栽)侵略的外来種完全排除を行いました。

NGO・NPOとの協働や支援による生物多様性保全

当社は産業界と連携した生物多様性の取り組みと、NGO・NPOを通じたグローバルでの生物多様性保全活動の推進を目的に、経団連自然保護協議会に参加しています。経団連自然保護協議会は、当社を含む企業や個人からの募金による経団連自然保護基金を通じ、国内・海外のNGO活動などに対し、2018年度までの累計で、1,490件、約43億円の支援を実施しています。当社は、同協議会が推進するプロジェクトへの基金提供・参画だけでなく、現場視察などを通じ推進状況の見届け責任を果たしています。
2018年度は、サモア独立国において、本基金からの支援でコンサベーションインターナショナルが現地NGO、地域住民との協働による子供たちへの環境教育を行う現場を視察。島の生物多様性保全だけでなく、島嶼国ならではの気候変動の影響やサンゴの保全、海洋プラスチック問題、島で発生するゴミの問題などあらゆる環境問題を子供たちが学習することで、家族と地域へ波及させていることを確認しました。

サモアの子どもたちの環境学習の様子

また、当社は約20年にわたりWWFジャパンとの協業を通じて「海の豊かさを守る活動」※5を行っています。現在の主な活動は、2018年3月より本社から日本初でスタートしたMSC及びASC認証※6取得のサステナブル・シーフード※7(持続可能な水産物)の社員食堂での継続的な提供です。協力いただいた給食会社6社がCoC認証※8を取得し、当社と連携した他企業3社も導入、当社においても2018年度に12拠点まで拡大できました。2019年度には新規30拠点への導入を目標としており、2020年度には国内の全ての社員食堂での導入を目指しています。この社員食堂でのサステナブル・シーフード提供により、消費者である社員の消費行動の変革を促進し、SDGs「14:海の豊かさを守ろう」への貢献と生物多様性の主流化を推進しています。これらの活動が評価され国連生物多様性の10年日本委員会主催の生物多様性アクション大賞2018の「えらぼう部門」で優秀賞を受賞しました。

※5 有明海干潟保全支援(2001-2006年)、黄海エコリージョン支援(2007-2015年)等
※6 MSC認証は海洋管理協議会が持続可能で適切に管理された漁業を認証するもので、ASC認証は水産養殖管理協議会が環境と社会への負荷を最小限にする責任ある養殖業を認証するもの。
※7 MSC認証、ASC認証による持続可能な水産物の生産に加え、CoC認証で管理されたシーフード
※8 CoC:Chain of Custody の略。加工・流通・販売過程における管理やトレーサビリティ確保についての認証

社員食堂でのサステナブル・シーフード メニュー提供の様子
当社も支援し、日本初のASC認証取得を実現した
南三陸戸倉産のカキフライ
「サステナブル・シーフード」
生物多様性アクション大賞
「えらぼう部門」優秀賞

企業と生物多様性イニシアチブ等への参画と活動

当社は、企業と生物多様性イニシアチブ(JBIB)への参画により、世界の生物多様性の潮流やリスクを把握し、事業へのフィードバックを行っています。2018年度は海洋プラスチック問題について、エコプロ2018でシンポジウムを開催しました。また、電機・電子4団体※9生物多様性ワーキンググループへの参画で、2018年度は加盟企業に向けて「Let’s Try Biodiversity!」という企業が取り組むはじめての生物多様性の冊子をつくり、勉強会を3度開催しました。電機・電子4団体のワーキングではこの活動を生物多様性COP14のビジネスフォーラム等で発表し、海外への日本企業の生物多様性活動をアピールしました。これらの活動により、国連生物多様性の10年日本委員会主催の生物多様性アクション大賞2018「つたえよう部門」で優秀賞を受賞しました。

※9 (一社)日本電機工業会(JEMA)、(一社)電子情報技術産業協会(JEITA)、(一社)情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)、(一社)ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)の4団体

「Let’s Try Biodiversity!」
電機・電子4団体「Let’s Try Biodiversity!」
生物多様性アクション大賞「つたえよう部門」優秀賞

市民ネットワークとの連携で里山の再生を支援

当社では国内の会社・労働組合と定年退職者会が、パナソニックエコリレー ジャパン(PERJ)として一体となり、さまざまな環境保全活動を行っています。
PERJが活動を展開している「ユニトピアささやま里山再生活動」は、パナソニックグループ労働組合連合会が所有する休暇村施設「ユニトピアささやま」の約8万坪のフィールド内で、かつての里山を忠実に再現しながら「里山の循環的利用」を目指す取り組みです。企業の保養地を生物多様性保全の実践や環境教育の場として活かすユニークな取り組みや、自治体、企業、大学、NPO、地元農家など、様々なステークホルダーを巻き込みながら保全活動や教育普及活動を展開していることが評価され、2017年に国連生物多様性の10年日本委員会の推奨する連携事業に認定。また、これまで継続してきた取り組みに対して、生物多様性アクション大賞2018で入賞となりました。

「ユニトピアささやま里山再 生活動」
生物多様性アクション大賞入賞