環境:生物多様性保全

eco ideas

生物多様性に関する考え方

私たちの社会における企業経営や人間生活は、土壌、大気、水、動植物から成る自然資本によって提供される様々な自然がもたらすもの(生態系サービス)によって成り立っています。また持続可能な開発目標(SDGs)や国連生物多様性条約の長期ビジョンである自然共生社会の実現においても、気候変動対策や資源循環対策と生物多様性保全は密接に関連すると認識されています。
2020年は、国連生物多様性条約の愛知目標最終年ですが、すでにIPBES※1の報告で、自然がもたらすもの(生態系サービス)は世界的に劣化しているとされ、このままでは自然保護と自然の持続可能な利用に関する目標は達成されないと言われています。しかし、経済・社会・その他における横断的な社会変容(transformative change)により、2030年以降の目標を達成できる可能性があるとされています。
当社はこれまでも事業活動が生物多様性に与える影響を適切に把握し、その保全に貢献するという目標を掲げて取り組んできました。当社環境ビジョン2050の「より良いくらし」と「持続可能な地球環境」の両立の実践に向け、グリープラン2021を策定しました。グリープラン2021における生物多様性保全は、生物多様性条約の生物多様性行動計画(BAP)に相当します。これまでの取り組みの成果、達成状況の確認を行い、世界の動向を踏まえ2030年以降の目標に備えて見直し計画したものです。
当社が事業活動する上で、生物多様性保全はサプライチェーン全体で取り組むことを重要と考え、「持続可能な原材料調達」を中心に据え、これまで取り組んできた各事業所での生物多様性保全に配慮した「土地利用」、生物多様性保全に貢献する「商品・サービス」については継続を決めました。これら事業活動の3つの目標と社会貢献活動の両面で、これからも生物多様性保全を推進していきます。

※1 IPBES:生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム

持続可能な原材料調達の取り組み

グリーンプラン2021からは、木材調達に限らず、生物多様性保全に配慮した原材料調達を目標とし、さらに昨今は、合法だけでなく、人権など社会的な配慮も重要となっているため、「持続可能な原材料調達」を目指すこととしました。
木材調達に関しては、生物多様性保全と持続可能な利用を目指した木材グリーン調達ガイドラインを、WWF(世界自然保護基金)ジャパンと協議し策定しました。
また、「グリーン調達基準書」の中で生物多様性保全への配慮を記載し、サプライチェーン全体で取り組むこととしています。

伐採時の合法性が確認できない木材・木質材料(区分3)の排除

2019年度調査の結果、木材・木質材料の総調達量は約32万m3でした。区分ごとの内訳は、優先調達に努める区分1が82.2%(前年度差+2.9ポイント)、調達適合とする区分2が17.8%(前年度差−2.9ポイント)、調達排除に努める区分3が0%(前年度差±0ポイント)でした。調達ガイドラインの策定以来、区分3の調達ゼロ化を目指して取り組みを進めており、2014年度から連続でゼロを継続しています。今後も取り組みを継続推進し、区分3の調達ゼロを維持していきます。
毎年度末には達成状況の確認をするとともに、次年度に向けた対策の検討を行っています。

WWFジャパンと協議・策定した木材グリーン調達の考え方

WWFジャパンと協議・策定した木材グリーン調達の考え方。区分1「優先調達に努める木材・木質材料(環境面で保護価値の高い森林を破壊していないことを第三者から認証されたもの/持続可能な森林経営を実施していることを第三者から証明されたもの/木質系再生資源)」、区分2「調達適合とする木材・木質材料(伐採時の合法性が確認されたもの/業界団体等により合法性認定が得られたもの)」、区分3「調達排除に努める木材・木質材料(伐採時の合法性が確認できないもの)」

土地利用分野の取り組み

事業所の緑地は、地域の生物多様性保全に貢献できる大きな可能性を持っています。とくに都市部では野生生物が生息・生育できる自然環境がほとんど残されていないため、たとえ小さくても、その地域本来の植生や水辺などを備えていれば、様々な生きものにとって大切な場所となります。

行政や専門家などと連携、生きものの生息空間を守る

事業所緑地と近隣に点在する緑地や公園とのつながりによるエコロジカルネットワーク形成で、鳥やチョウ、トンボなどの生きものが周辺に点在する緑地や水辺の間を移動できるようになり、生息できる空間が広がることになります。また地域の希少な動植物は、環境省や自治体から絶滅危惧種に指定され、行政との連携、専門家の指導や協力を得ながら保全活動を行っています。大阪府・大阪府立大学・大阪府立環境農林水産総合研究所とおおさか生物多様性パートナー協定を締結した門真市ライフソリューションズ社のビオトープなどがあります。

ビオトープによる希少種の保護と環境教育への活用

2009年3月、ライフソリューションズ社 門真地区構内に、約1万1,000m2の緑地であるはんえいの広場を造成し、その一角に約300m2のビオトープを設立しました。門真地区が淀川と花博記念公園鶴見緑地(大阪市鶴見区)の間の立地であることを活かし、多様な生物が自然に生息できる場となるように、ビオトープの企画段階から公立大学法人大阪府立大学に専門的な助言や指導をいただきながら、生物のモニタリングを継続的に実施してきました。設立当初から、ビオトープの維持管理は社内ボランティアが実施しており、毎年、春先にカルガモが営巣して雛鳥の姿が見られます。
2012年6月からは、地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所水生生物センター(現 生物多様性センター)からの提案と指導に基づき、環境省および大阪府絶滅危惧種のカワバタモロコ(淡水魚の一種)とミズアオイ(湿地に自生する水生植物)をビオトープに導入しました。2013年11月には、大阪府、大阪府立大学、環境農林水産総合研究所と当社の間の、おおさか生物多様性パートナー協定の調印式とあわせて、新たに北河内生まれのミナミメダカ(環境省及び大阪府絶滅危惧種)をビオトープに100匹導入しました。2016年10月には、地域の小学生を招待して、いきものとエコの教室を開催しました。子どもたちがビオトープにすむ身近な生き物の生態や、絶滅危惧種の存在を知り、自然や環境について考えるきっかけを提供することができました。
また、同社の活動は2015年9月、他の模範となる豊かな環境づくりに向けた取り組みで顕著な功績のあった個人・団体又は事業者に贈られる、平成27年度おおさか環境賞(主催:大阪府)の奨励賞を受賞しました。併せて、大阪府立大学、大阪府立環境農林水産総合研究所との取り組みも、同協働賞を受賞しました。

ビオトープでの、いきもの観察会

定量評価手法に基づく外部認証の取得

アプライアンス社草津拠点は、生物多様性に配慮した事業場として2018年3月に一般社団法人 いきもの共生事業推進協議会の「いきもの共生事業所認定(ABINC認証)」※1を取得しました。審査の中では、自然環境を適切に保全し多様な生きものに応じた緑地づくりを進めていること、特定外来種についても適宜管理が行われ、継続的なモニタリングで状況把握されていること、また、自治体や小学生など外部関連主体・地域の人とのコミュニケーションに緑地が積極的に活用されていること、などが評価されました。
2011年から継続しているモニタリング調査で840種の動植物が確認され、都市化が進む地域において重要なビオトープであり、地域のエコロジカルネットワークの形成にも貢献していることがわかりました。また、ドングリをテーマとした小学生向け環境学習の継続的な実施が「生物多様性の主流化に貢献する取り組み」として高く評価され、2020年1月に第2回ABINC賞 優秀賞を受賞しました。

※1 ABINC認証は、企業と生物多様性イニシアチブ(JBIB)が開発した土地利用通信簿(環境アセスメントとしての生物多様性定量評価ツール)の実施といきもの共生事業所ガイドラインに基づき、事業場緑地の整備、管理を第三者の評価により認証する制度
※2「しが生物多様性取組認証制度」は、事業者が行う生物多様性保全に関する取り組みを、1つ星~ 3つ星で知事が認証するもので、都道府県が生物多様性に関する幅広い取り組みを認証するものとして、全国でも初めての制度

ABINC認証(優秀賞)
しが生物多様性
取組認証制度
3つ星マーク※2

オートモーティブ社※3 松本工場は2015年9月JHEP認証※4のAランクを取得しました。これにより、毎年認証確認手続きが行われ、事業場緑地の生物多様性の保全活動は継続推進しています。

※3 認証取得時点の社名はオートモーティブ&インダストリアルシステムズ社
※4 環境アセスメントで用いられる「ハビタット評価手法(HEP)」をもとに、(公財)日本生態系協会が開発した生物多様性定量評価手法

アプライアンス社共存の森全景

商品・サービス分野の取り組み

生物多様性保全に貢献する商品の情報をお客様に提供できるよう、国際環境NGOバードライフ・インターナショナルと第三者評価手法を構築しました。この手法を用いて生物多様性に関わりの深い商品の評価を行っています。そして、グリーンプロダクツの判定基準により、生物多様性の保全に配慮した素材を主要な部位に活用した商品、生物多様性の保全に寄与する機能を有する商品などを生物多様性貢献商品と定義しています。

当社では、神奈川県藤沢市、横浜市にサスティナブル・スマートタウン(SST)を開発しました。現在は大阪府吹田市でもSSTの開発を予定しています。SSTでは、まちづくりのガイドラインに、温室効果ガス排出の削減などのほかに、まちの緑地に関して生物多様性の考え方を取り入れ、在来種を基本とした植栽、地域と共生する生態系ネットワークを形成することで、持続可能な街づくりに役立てています。

また、ライフソリューションズ社では、木材資源保全の観点から、天然素材の使用量削減に取り組んでいます。

NGO・NPOとの協働や支援による生物多様性保全

MSC及びASC認証取得のサステナブル・シーフードの社員食堂への導入

当社は約20年にわたりWWFジャパンとの協業を通じて「海の豊かさを守る活動」※1を行っています。現在の主な活動は、2018年3月より本社から日本初でスタートしたMSC及びASC認証※2取得のサステナブル・シーフード※3(持続可能な水産物)の社員食堂での継続的な提供です。本年度は、給食会社のCoC認証※4取得のコストと業務負荷を大幅に削減する仕組みの構築、他企業の導入・認証取得支援などを行うことで、給食会社5社の認証取得(累計11社)、他企業2社の導入(累計5社)を実現。当社においても2019年度に新規30拠点に導入し、累計42拠点にまで拡大できました。2020年度は、全社員食堂への導入を目指すだけでなく、ユーザー企業のネットワークの立ち上げに挑戦予定。この社員食堂でのサステナブル・シーフード提供により、消費者である社員の消費行動の変革を促進し、SDGs「14:海の豊かさを守ろう」への貢献と生物多様性の主流化を推進しています。これらの活動が評価され、第1回ジャパン・サステナブルシーフード・アワードのイニシアチブ部門でのチャンピオン選出や、国連生物多様性の10年日本委員会の連携事業としての認定などを受けました。

※1 有明海干潟保全支援(2001-2006年)、黄海エコリージョン支援(2007-2015年)、南三陸の環境配慮型の養殖業復興支援(2014~現在)等
※2 MSC認証は海洋管理協議会が持続可能で適切に管理された漁業を認証するもので、ASC認証は水産養殖管理協議会が環境と社会への負荷を最小限にする責任ある養殖業を認証するもの。
※3 MSC認証、ASC認証による持続可能な水産物の生産に加え、CoC認証で管理されたシーフード
※4 CoC:Chain of Custodyの略。加工・流通・販売過程における管理やトレーサビリティ確保についての認証

第1回ジャパン・サステナブルシーフード・アワード イニシアチブ部門でチャンピオンに選出
ASC認証取得の南三陸戸倉産のカキフライ

NGO・NPOを通じたグローバルでの生物多様性保全活動推進

当社は産業界と連携した生物多様性の取り組みと、NGO・NPOを通じたグローバルでの生物多様性保全活動の推進を目的に、経団連自然保護協議会に参加しています。経団連自然保護協議会は、当社を含む企業や個人からの募金による経団連自然保護基金を通じ、国内・海外のNGO活動などに対し、2019年度までの累計で、1,490件、約42億円の支援を実施しています。当社は、同協議会が推進するプロジェクトへの基金提供・参画だけでなく、現場視察などを通じ推進状況の見届け責任を果たしています。
2019年度は、世界自然遺産のガラパゴスにおける絶滅危惧種であるスカレシア(キク科の植物)の保全活動の視察および植林活動を実施しました。スカレシア保全活動に対しては20年間支援をしていますが、わずか1%しか回復ができていません。現地チャールズダーウィン研究所の研究者からは、それでもスカレシアという植物を増やすことは、ガラパゴスの在来生物の生息の基盤となるので継続が必要と説明されました。

スカレシア植樹

企業と生物多様性イニシアチブ等への参画

当社は、企業と生物多様性イニシアチブ(JBIB)、産業と環境の会センターの生物多様性保全対策委員会に参画し、ポスト愛知目標など世界の生物多様性の潮流やリスク、または日本国内の方針の的確な把握により、当社事業へフィードバックを行っています。更にJBIBでは参加企業と協働で高校生への海洋プラスチック問題の啓発活動を実施しました。
電機・電子4団体※1生物多様性ワーキンググループ(WG)への参画において、2019年度は海洋生物に多大な影響を及ぼしている海洋プラスチック問題を取り上げ、本WGは(特非)荒川クリーンエイド・フォーラムの協力のもと、荒川河川敷の清掃活動を実施し、生物多様性保全実践集「Let's Try Biodiversity!」に海洋プラスチック問題に対する取り組み事例を追加しました。また、経団連の「業種別プラスチック関連目標」に対しては、製品や工場以外の分野として「清掃活動などにより生物多様性保全に資する海洋プラスチックごみ問題への取組みの実施」を目標とし、事業所周辺の清掃活動であっても海洋プラスチックごみの抑制となることをまとめ、4団体参加企業へ普及啓発を行います。
当社個別でも生物多様性COP15に向け「経団連生物多様性宣言等」への賛同企業として、世界に当社の生物多様性保全活動をアピールするため取り組み方針や事例を経団連へ提出しました。さらに海洋プラスチックごみ問題解決のイノベーションを加速するためのクリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)へ参加しています。

※1 (一社)日本電機工業会(JEMA)、(一社)電子情報技術産業協会(JEITA)、(一社)情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)、(一社)ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)の4団体

Let's Try Biodiversity!
海洋プラスチックごみ問題

市民ネットワークとの連携で天然記念物の保護を支援

当社では国内の会社・労働組合と定年退職者会が、パナソニックエコリレー ジャパン(PERJ)として一体となり、さまざまな環境保全活動を行っています。
PERJが活動を展開している「淀川・城北ワンド保全活動」は、「淀川水系イタセンパラ保全市民ネットワーク」の連携団体として、天然記念物イタセンパラ保護の取り組みを行っています。具体的には、大阪市内に残された貴重な自然である淀川ワンド※1での清掃、及び外来生物の駆除・調査や絶滅危惧種であるイタセンパラなどの保護を始めとする生物多様性の取り組みです。
また、鶴見緑地公園や中之島公園の清掃活動を継続して行っていること、また地元企業や近隣大学、市民団体などと連携し、環境活動を行う次世代の育成に貢献している点が評価され、2020年2月には「大阪市環境表彰」をいただきました。

※1 ワンドとは川の本流と繋がっているが、河川構造物などに囲まれて池のようになっている地形のこと。
魚類などの水生生 物に安定した棲み処を与えるとともに、様々な植生が繁殖する場ともなっている。

活動の様子
イタセンパラ

愛知目標とSDGsへの貢献事例まとめ(2010~2019年度)

取り組み事例 愛知目標 SDGs
木材調達
  • 木材グリーン調達ガイドラインに則った木材調達
    合法でない木材の排除 2014年よりゼロ継続
1普及啓発
4生産と消費
12つくる責任つかう責任
15陸の豊かさも守ろう
土地利用 周辺地域とのエコロジカルネットワークを築いた、事業所での生物多様性保全に配慮した緑地・ビオトープ(環境教育、啓発活動に利用)
  • 草津事業所(ABINC認証)
  • 松本工場(JHEP認証)
  • 大阪府で2か所 ほか
1普及啓発
5生息域の保護
9外来種の駆除
11保護地域
14生態系サービス
15陸の豊かさも守ろう
商品・サービス
  • 低誘虫照明器具・タフナレイ
  • バラスト水処理システム
  • SSTの生物多様性を配慮した植栽ガイドライン
  • (侵略的外来種の駆除実施)
  • フィットフロアー(リサイクル木質材使用)
5生息域の保護
9外来種の駆除
19知識技術
9産業と技術革新の基盤を作ろう
11住み続けられるまちづくりを
12つくる責任つかう責任
14海の豊かさを守ろう
15陸の豊かさも守ろう
社会貢献活動
  • 社員食堂へのサステナブル・シーフード導入
    (MSC/ASC認証水産物)
  • ユニトピアささやま里山保全活動
  • 淀川水系イタセンパラ保全活動
  • 和歌山県ながきの森 植林・保全活動
    ほか、パナソニックエコリレージャパンによる活動多数あり。海外拠点でも植林などCSR活動あり。
  • 寄付による保全活動の支援と支援事業への参加
1普及啓発
4生産と消費
5生息域の保護
6過剰漁獲回避
14海の豊かさを守ろう
15陸の豊かさも守ろう
17パートナーシップで目標を達成しよう
(波及で貢献する目標)
1貧困をなくそう
13気候変動に具体的な対策を