環境:生物多様性保全

eco ideas

生物多様性に関する考え方

私たちの社会における企業経営や人間生活は、土壌、大気、水、動植物から成る自然資本によって提供される様々な自然の恵み(生態系サービス)によって成り立っています。自然資本の恩恵を将来にわたって継続的に享受するためには生物多様性保全が重要ですが、その一方で、生物多様性は史上かつてない速さで大規模に損なわれています。
当社は事業活動が生物多様性に与える影響を適切に把握し、その保全に貢献するという目標を掲げ、自治体や環境NGO、専門機関と連携して取り組みを推進しています。具体的には、生物多様性保全を事業へ落とし込んだ取り組みとして推進するため、土地利用・調達・商品の3つを重点分野と位置づけています。重点分野の推進にあたっては適宜、生物多様性条約 第6条の基本的な考え方である生物多様性行動計画(BAP)を策定しています。
国連生物多様性条約COP10で採択された愛知目標および国連の持続可能な開発目標(SDGs)への貢献は、民間企業にも求められています。当社は生物多様性保全活動を外部組織と協働することで拡大しています。

土地利用分野の取り組み

事業所の緑地は、地域の生物多様性保全に貢献できる大きな可能性を持っています。とくに都市部では野生生物が生息・生育できる自然環境がほとんど残されていないため、たとえ小さくても、その地域本来の植生や水辺などを備えていれば、様々な生きものにとって大切な場所となります。

行政や専門家などと連携、生きものの生息空間を守る

事業所緑地と近隣に点在する緑地や公園とのつながりによるエコロジカルネットワーク形成で、鳥やチョウ、トンボなどの生きものが周辺に点在する緑地や水辺の間を移動できるようになり、生息できる空間が広がることになります。また地域の希少な動植物は、環境省や自治体から絶滅危惧種に指定され、行政との連携、専門家の指導や協力を得ながら保全活動を行っています。大阪府、大阪府立大学、大阪府立環境農林水産総合研究所とおおさか生物多様性パートナー協定を締結した門真市エコソリューションズ社のビオトープ、大阪府みどりの風の道形成事業に参画して大阪府・豊中市・大阪府立大学・大阪府立環境農林水産総合研究所とおおさか生物多様性パートナー協定を締結した、パナソニックホームズ本社の「つながりのひろば」などがあります。

ビオトープによる希少種の保護と環境教育への活用

2009年3月、エコソリューションズ社 門真地区構内に、約1万1,000m2の緑地であるはんえいの広場を造成し、その一角に約300m2のビオトープを設立しました。門真地区が淀川と花博記念公園鶴見緑地(大阪市鶴見区)の間の立地であることを活かし、多様な生物が自然に生息できる場となるように、ビオトープの企画段階から公立大学法人大阪府立大学に専門的な助言や指導をいただきながら、生物のモニタリングを継続的に実施してきました。設立当初から、ビオトープの維持管理は社内ボランティアが実施しています。毎年、春先にカルガモが営巣して雛鳥の姿が見られ、従業員の環境意識向上に寄与しています。
2012年6月からは、地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所水生生物センターからの提案と指導に基づき、環境省および大阪府絶滅危惧種のカワバタモロコ(淡水魚の一種)とミズアオイ(湿地に自生する水生植物)をビオトープに導入し、保護活動を行っています。2013年11月には、大阪府、大阪府立大学、環境農林水産総合研究所と当社の間の、おおさか生物多様性パートナー協定の調印式とあわせて、新たに北河内生まれのミナミメダカ(環境省及び大阪府絶滅危惧種)をビオトープに100匹導入、順調に生息していることを確認しています。
2016年10月には、地域の小学生を招待して、いきものとエコの教室を開催しました。子どもたちがビオトープにすむ身近な生き物の生態や、絶滅危惧種の存在を知り、自然や環境について考えるきっかけを提供することができました。
また、同社の活動は2015年9月、他の模範となる豊かな環境づくりに向けた取り組みで顕著な功績のあった個人・団体又は事業者に贈られる、平成27年度 おおさか環境賞(主催:大阪府)の奨励賞を受賞しました。併せて、大阪府立大学、大阪府立 環境農林水産総合研究所との取り組みも、同 協働賞を受賞しました。
今後もビオトープを通じて、地域の生物多様性に対する貢献と従業員の意識向上に寄与していきます。

ビオトープでの、いきもの観察会

「つながりのひろば」の活用による子ども環境教育

創業50周年を迎えた2013年4月、本社ビルの敷地内に地球環境を未来へつなぐ(生物が集まる環境創出で地域環境と共存)ことを一つのコンセプトとしてオープンした「つながりのひろば」。在来種を中心とした植栽約2500本がとりかこむ「つながりの森」をはじめ、ビオトープ(150m2)に千里生まれのメダカを放流した「水のひろば」や11kwの太陽光発電システムを設置している「太陽のひろば」などで構成されています。
その後2014年に、大阪府、豊中市、公立大学法人大阪府立大学、地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所と全5者で、「おおさか生物多様性パートナー協定」を締結しました。本協定は、生物多様性保全に率先して取り組む企業に対して、大阪府、豊中市及び大学・試験研究機関等が連携して支援することにより、企業による生物多様性保全活動の取り組みを促すとともに、その重要性について、広く府民・市民に普及啓発することを目的としています。
協定の一環として、パナソニック ホームズ本社ビルと本社ビルに隣接する「つながりのひろば」では、“おおさか生物多様性普及啓発キャンペーンのぼり”を立て、従業員はもちろん、「つながりのひろば」に足を運んで下さったお客さまに向けて、生物多様性の保全の重要性を広く周知し、自主的な活動を促進しました。
開設から4年が経過した2017年6月上旬には、ビオトープの池に保全している希少種のモニタリングを実施しました。捕獲したサンプルを「標識再捕獲法」で推定すると、それぞれ数十匹放流した「ミナミメダカ」と「カワバタモロコ」が繁殖しており、ビオトープという小さな生態系での保全活動が、順調に機能していることがわかりました。
梅雨が明け、本格的な夏がやってきた頃には、近隣の小学生を「つながりのひろば」に招き、環境体験学習を実施しました。これは、ビオトープで保全しているミナミメダカやカワバタモロコを網ですくい、観察をしながら生態などについてレクチャーするもので、子どもたちに生物多様性、絶滅危惧種、ビオトープの意味や必要性などについて学び、自らの手で生き物を守ることについて考えるきっかけを提供しているものです。環境体験学習を終え、児童からは「生き物の命を守るために、これからは地球環境のことをもっとよく考えたいと思った」「外国から来た生き物が人に与える影響をもっと知りたい」などの感想がありました。
今後も、生物多様性の恵みに基づく資源や生態系のもたらすサービスに支えられている企業の責務として、生物多様性の保全を含む自然環境保全の取り組みをさらに積極的に展開していきます。

つながりの広場 全景
おおさか生物多様性普及啓発キャンペーンのぼり

定量評価手法に基づく外部認証の取得

アプライアンス社草津拠点は、生物多様性に配慮した事業場として2018年3月に一般社団法人 いきもの共生事業推進協議会の「いきもの共生事業所認証(ABINC認証)」を取得しました。ABINC認証は、企業と生物多様性イニシアチブ(JBIB)が開発した土地利用通信簿(環境アセスメントとしての生物多様性定量評価ツール)の実施といきもの共生事業所ガイドラインに基づき、事業場緑地の整備、管理を第三者の評価により認証する制度です。審査の中では、自然環境を適切に保全し多様な生きものに応じた緑地づくりを進めていること、特定外来種についても適宜管理が行われ、モニタリング調査で状況把握されていること、また、自治体や小学生など外部関連主体・地域の人とのコミュニケーションに緑地が積極的に活用されていること、などが評価されました。2011年から継続しているモニタリング調査で838種の動植物が確認され、都市化が進む地域において重要なビオトープであり、地域のエコロジカルネットワークの形成にも貢献していることがわかりました。
オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 松本工場は、2015年9月JHEP認証※1のAランクを取得しました。これにより、毎年認証確認手続きが行われ、事業場緑地の生物多様性の保全活動は継続推進しています。

※1 環境アセスメントで用いられる「ハビタット評価手法(HEP)」をもとに、(公財)日本生態系協会が開発した生物多様性定量評価手法

水辺エリアの全景
工場敷地内で育った希少種ササゴイの雛たち

調達分野の取り組み

生物多様性の保全と持続可能な利用を目指した木材グリーン調達ガイドラインを、WWF(世界自然保護基金)ジャパンと協議し策定しました。

伐採時の合法性が確認できない木材・木質材料(区分3)の排除

2017年度調査の結果、木材・木質材料の総調達量は約35万m3でした。区分ごとの内訳は、優先調達に努める区分1が77.3%(前年度差−0.3ポイント)、調達適合とする区分2が22.7%(前年度差+0.3ポイント)、調達排除に努める区分3が0%(前年度差±0ポイント)でした。調達ガイドラインの策定以来、区分3の調達ゼロ化を目指して取り組みを進めており、2014年度から連続でゼロを継続しています。今後も取り組みを継続推進し、区分3の調達ゼロを維持していきます。
毎年度末には達成状況の確認をするとともに、次年度に向けた対策の検討を行っています。

WWFジャパンと協議・策定した木材グリーン調達の考え方。区分1「優先調達に努める木材・木質材料(環境面で保護価値の高い森林を破壊していないことを第三者から認証されたもの/持続可能な森林経営を実施していることを第三者から証明されたもの/木質系再生資源)」、区分2「調達適合とする木材・木質材料(伐採時の合法性が確認されたもの/業界団体等により合法性認定が得られたもの)」、区分3「調達排除に努める木材・木質材料(伐採時の合法性が確認できないもの)」

木材資源保全の観点から、天然素材の使用量削減にも取り組んでいます。フローリング(木質床材)のフィットフロアー(耐熱・非耐熱)は、リサイクルされた木質材料を100%(接着剤は除く)使用する、当社独自の新素材フィットボードを採用しています。

「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律(通称「クリーンウッド法」)」が、2017年5月20日に施行されました。以下のURLにて当社の木材製品がクリーンウッド法に基づく合法性に関する情報提供を行っております。

フィットフロアー(耐熱・非耐熱)断面図

商品分野の取り組み

生物多様性保全に貢献する商品の情報をお客様に提供できるよう、国際環境NGOバードライフ・インターナショナルと第三者評価手法を構築しました。この手法を用いて生物多様性に関わりの深い商品の評価を行っています。そして、グリーンプロダクツの判定基準により、生物多様性の保全に配慮した素材を主要な部位に活用した商品、生物多様性の保全に寄与する機能を有する商品などを生物多様性貢献商品と定義しています。

2013年度、パナソニック環境エンジニアリング(株)は船舶移動による周辺海域の海洋生態系破壊を抑制するバラスト水処理システム(BWMS)ATPS-BLUEsysを開発しました。バラスト水は、貨物船舶が船体バランスを保つために船舶空荷時に積載する海水です。航行による海域の移動で、バラストタンクに積み込んだバラスト水の採水国と排出国が異なることから、海水に含まれる外来性有害水生生物(プランクトン、バクテリアなど)による生態系、環境、資源への影響が問題となっています。ATPS-BLUEsysは、国内初のインライン電気分解方式により、フィルターを使用せずにバラスト水中の微生物を国際海事機関(IMO)に定められた排水基準以下に処理することができ、IMOによる基本承認(G9BA)を取得しました。2017年3月に国土交通省の相当指定を取得したことにより、2017年度から本格的な販売を開始しています。

また当社では、神奈川県藤沢市、横浜市にサスティナブル・スマートタウン(SST)を開発しました。現在は大阪府吹田市でもSSTの開発を予定しています。SSTでは、まちづくりのガイドラインに、温室効果ガス排出の削減などのほかに、まちの緑地に関して生物多様性の考え方を取り入れ、在来種を基本とした植栽、地域と共生する生態系ネットワークを形成することで、持続可能な街づくりに役立てています。

NGO・NPOとの協働や支援による生物多様性保全

当社は産業界と連携した生物多様性の取り組みと、NGO・NPOを通じたグローバルでの生物多様性保全活動の推進を目的に、経団連自然保護協議会に参加しています。経団連自然保護協議会は、当社を含む企業や個人からの募金による経団連自然保護基金を通じ、国内・海外のNGO活動などに対し、2017年度までの累計で、1,345件、約39億円の支援を実施しています。
当社は、同協議会が推進するプロジェクトへの基金提供・参画だけでなく、現場視察などを通じ推進状況の見届け責任を果たしています。
2017年度はインドネシアのスマトラ島のブキ・バリサン・スラタン国立公園のWWFジャパン(公益財団法人世界自然保護基金ジャパン)の活動拠点と、ジャワ島のグヌン・ハリムン・サラック国立公園で日本環境教育フォーラムが運営する事業の進捗状況を視察し、国立公園の地域住民による保全活動と彼らの生活について直接対話し、将来に渡る自然保護活動と自立した生活の両立が重要であると確認しました。

インドネシア ブキ・バリサン・スラタン国立公園での植樹活動

また、当社は約20年にわたりWWFジャパンとの協業を通じて「海の豊かさを守る活動」※2を行っています。2018年3月から本社を含む2拠点の社員食堂に、MSC及びASC認証※3を取得した持続可能な水産物(サステナブル・シーフード※4)を、WWFジャパンやサプライヤー企業の協力を得て導入しました。企業が社員食堂で継続的に提供するのは日本国内では初めて※5となります。今後、順次、頻度や導入拠点を増やし、2020年に国内の全ての社員食堂での導入を目指します。このサステナブル・シーフードやMSCとASC認証の認知拡大により、消費者である社員の消費行動の変革を促進し、SDGs「14:海の豊かさを守ろう」への貢献と生物多様性の主流化を推進します。

※2 有明海干潟保全支援(2001-2006年)、黄海エコリージョン支援(2007-2015年)等
※3 MSC認証は海洋管理協議会が持続可能で適切に管理された漁業を認証するもので、ASC認証は水産養殖管理協議会が環境と社会への負荷を最小限にする責任ある養殖業を認証するもの。いずれも第三者の認証機関が厳格な基準に基づいて審査しています
※4 持続可能な生産(漁獲・養殖)に加え、加工・流通・販売過程における管理やトレーサビリティの確保について認証を取得しているシーフード
※5 MSC/ASCの認証ラベル付きで提供されるものとして

サステナブルシーフードメニュー
MSC認証ロゴマーク
ASC認証ロゴマーク

企業と生物多様性イニシアチブ等への参画

当社は、企業と生物多様性イニシアチブ(JBIB)への参画により、世界の生物多様性の潮流やリスクを把握し、事業へのフィードバックを行っています。
また、電機電子4団体※6生物多様性ワーキンググループへの参画で、2017年度は、当社事例も含めた各社の生物多様性保全活動と愛知目標の関連付けの事例データベースを愛知目標達成プロジェクト※7のにじゅうまる宣言との連携を行い、生物多様性活動の普及と発信に貢献しました。

※6 (一社)日本電機工業会(JEMA)、(一社)電子情報技術産業協会(JEITA)、(一社)情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)、(一社)ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)の4団体
※7 愛知目標達成のために国際自然保護連合日本委員会が立ち上げた「にじゅうまるプロジェクト」

市民ネットワークとの連携で里山の再生を支援

当社では国内の会社・労働組合と定年退職者会が、パナソニックエコリレー ジャパン(PERJ)として一体となり、さまざまな環境保全活動を行っています。
PERJが活動を展開している「ユニトピアささやま里山再生活動」は、パナソニックグループ労働組合連合会が所有する休暇村施設「ユニトピアささやま」の約8万坪のフィールド内で、かつての里山を忠実に再現しながら「里山の循環的利用」を目指す取り組みです。企業の保養地を生物多様性保全の実践や環境教育の場として活かすユニークな取り組みや、自治体、企業、大学、NPO、地元農家など、様々なステークホルダーを巻き込みながら保全活動や教育普及活動を展開していることが評価され、「国連生物多様性の10年日本委員会」の推奨する連携事業に認定されました。

認定書の授与式