環境:気候変動のリスクと機会およびシナリオ分析による戦略のレジリエンス

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リスクの特定(代表例)

低炭素経済への移行リスク

製品のエネルギー効率規準は次第に厳しくなっており、規準を満たさない製品は販売ができなくなる恐れがあります。具体的には、米国連邦法やカリフォルニア州法、欧州のErP指令に代表される最低エネルギー効率規制は、先進国のみならず多くの途上国でも強制的な法規制として制定されており、基準に満たない製品の販売が禁止されています。また、製品の省エネ性能をランク付けして表示することにより、消費者が購入時に環境配慮製品を選び易くする省エネラベル制度も多くの国で採用されています。これら電気電子製品の最低エネルギー効率規制や省エネラベル制度は、電気電子製品のライフサイクルで最も多くを占める使用時のCO2削減に大きく貢献しています。これら規制、制度は絶えず見直しが検討されており、それぞれの国・地域ではその規制の対象製品の範囲が拡大されると共に、基準値の厳格化も進められています。これら世界各地で実施されている規制、制度は基準値も測定法もまちまちであり、常に最新の動向を把握した設計対応が不十分な場合、多額の経営資源を投じて開発した製品の販売機会の損失につながり、大きな事業上の損失を招くリスクを抱えています。

物理的リスク

当社グループはグローバルに事業を展開しているため、洪水など温暖化にともなう異常気象が発生した場合には物理的なリスクとして、製造拠点の操業に影響が出る可能性があります。工場・設備が直接被害を受けるほか、被害が甚大な場合操業停止による損失なども考えられます。このような事態が発生すれば、事業再建に莫大な費用が必要であると考えています。

機会の特定(代表例)

事業運営

当社は、生産活動において、工場ではファクトリーエネルギーマネジメントシステム(FEMS)を導入し、エネルギー使用量の最適化を行っています。また、太陽光発電など地域ごとの特性に応じた再生可能エネルギーの導入もグローバルで積極的に推進しています。当社は太陽電池も含めたエネルギーソリューション事業を展開することにより、再生可能エネルギーの活用を推進しています。さらに、クリーンなエネルギー由来の水素をエネルギー源として電気をつくり出す燃料電池技術の開発を進めており、再生可能エネルギーを利用した水電解で製造した水素を燃料電池フォークリフトに供給する実証を2019年度から行っています。(環境ビジョン2050実現に向けた活動方向)また、BtoB顧客からの再生可能エネルギーによる生産活動を要望されることも想定され、CO2ゼロの工場づくりを進めています。

製品・サービス

国内では、国土交通省により、2018年省エネ住宅支援制度が導入されました。これは、省エネルギー性能の高い住宅の新築、断熱改修リフォーム、エコ住宅設備設置などを行った場合に設備や施工費に対する一定割合のインセンティブを提供する制度です。当社は創エネルギー商品、蓄エネルギー商品などを幅広く手がけており、この制度導入は当社にとって大きなビジネスチャンスとなり、他社との共創を進めながら、省エネ性能の高い住宅の開発と販売、普及に注力しています。
また、各国の温室効果ガス排出削減を中心とした環境政策に伴い、エンジン搭載自動車への規制が厳しくなってきています。その結果として自動車の電動化が進展し、HV、EVの伸びが予測されています。当社は、高性能車載電池を生産、販売しています。HV、EVの普及に伴い、その中核部材である二次電池の需要拡大が期待できます。その機会獲得に向けた活動として、2017年には米国の車載電池工場を本格稼動させ、また他社との協業も並行して進めております。

戦略

社会は、ますます化石燃料を使わないクリーンなエネルギーに向けて進んでいくと認識しています。当社は、「より良いくらし」と「持続可能な地球環境」の両立に向け、環境ビジョン2050を策定しました。その中で当社は、使うエネルギーの削減と、それを超えるエネルギーの創出・活用を進めることを目指しています。言い換えると、自社製品による再生可能エネルギー創出・活用による貢献量が、自社工場及び製品で消費するエネルギー量を上回るということです。このビジョンは2050年に目指す会社の姿として、事業方針にも盛り込まれています。
エネルギーの削減目標については、パリ協定の2℃目標の基準に沿うSBTとして認定された2030年、2050年のGHG排出削減目標をその前提として持っています。

シナリオ分析

国際エネルギー機関(IEA)が発行したWorld Energy Outlook 2017(WEO2017)において、パリ協定での各国が提示した目標の実現に必要な政策から想定されるメインシナリオ(NPS=4℃シナリオ)と、産業革命時期比で気温上昇を2度未満とする持続可能な開発シナリオ(SDS=2℃シナリオ)が提示されています。

当社は環境ビジョン2050の実現に向けて、当社の事業活動について上記シナリオを前提に気候変動がもたらす影響を分析し、その対応策を検討し、当社の戦略のレジリエンスを検証しました。

SDSおよびNPSそれぞれのシナリオは、2100年に平均気温が2℃または4℃に上昇する予測の下でつくられています。現在の事業活動を前提に、2030年時点での事業への影響を分析しました。
2℃シナリオ(SDS)では、2030年までに温室効果ガス排出量を抑制するために社会の急速な変化が予測されています。例えば、炭素価格はCO2:1tあたり100ドル以上になるというような排出抑制措置が講じられることを予測しています。当社は、2℃シナリオの下では、2030年までには気候変動による水不足や異常気象の増大などの物理的リスクによる事業への大きな影響はないと仮定し、規制の変更による事業への影響を分析しました。
一方、4℃シナリオ(NPS)の下では、当社は、規制による制約の影響は小さく2030年までには気候変動の物理的な変化がますます明らかになっていると仮定し、物理的変化による事業への影響を分析しました。

これらのシナリオに基づき分析した結果、2℃シナリオの主な影響として、炭素価格が主要国で導入されCO2排出による負担が増える一方、当社は、パナソニック環境ビジョン2050実現に向けて、省エネ性能向上や創エネ商品の創出による商品でのCO2削減や、CO2ゼロモデル工場の展開等による製造時のCO2削減に取り組んでおり、負担が少なく影響も軽微であります。
また、環境法規制の変更は、幅広い省エネ製品を扱う家電事業に大きな影響を与えると考えています。この影響への対応策として、グローバル各地域の統括部門と環境部門で連携し、グローバルに環境法令を把握しています。環境法令データベースを使い、環境法令に関する最新情報を入手し、その内容について関連部門に共有を図っています。また、対策が必要な案件があった場合は、カンパニー、事業部門と情報・状況を共有し、対策を講じており、影響も軽微であります。
次に、4℃シナリオの主な影響として、異常気象(洪水、熱帯性低気圧等)の増加により、当社のサプライチェーンへの影響や、社会的に経済活動の低下が考えられます。事例として、2011年に起こったタイの洪水では、当社においても多額の損失があり様々な対策を講じていますが、それでも洪水などによって自社、サプライチェーンの操業が影響を受けた場合、販売に影響を与え、さらに操業設備回復のための多大な費用が必要となります。この影響への対応策として、当社では、過去の異常気象による経験を踏まえ事業継続計画(BCP)の策定に取り組んでいます。2012年初めには、事業継続マネジメントシステムに則り、洪水リスクを含む様々なリスクを低減し、事業場のリスクやオペレーションリスクを最小限に抑えることを重視した新しい事業継続マネジメント(BCM)構築ガイドラインを策定しました。また、災害・事故対策の体制強化の取り組みとして、リスク管理担当役員を委員長とし本社の職能部門責任者で構成されるグローバル&グループリスクマネジメント委員会の傘下に「災害・事故対策委員会」を設置し、地震や洪水等の自然災害から火災・爆発等の大規模事故などの重大リスクに関する対応体制の強化に取り組んでいます。また、同委員会傘下に各種対策ワーキンググループを設置し、リスク発現時に備えた対策等の検討を関係部門合同で行っています。調達活動においては、調達部材の重要度や代替可能性を評価の上、代替調達先の確保、緊急時の在庫の積み上げなどの管理を行っています。これらの取り組みにより、影響は軽微であります。

今後、気候変動がサプライチェーンに及ぼす影響と、気候変動が重要である市場や製造に及ぼす影響についてさらに分析していく予定です。また、社会動向やベースシナリオの変更については環境部門、実際の投資や協業の推進については対象となるカンパニーで監視を行う予定です。

※シナリオは、不確実性が高い未来像です。記載したシナリオに基づき分析した結果は、IEAが提示するシナリオに対する認識です。中長期の将来見通しについては、シナリオと異なる可能性があります