当社は2019年5月にTCFD※1提言への賛同を表明しました。当社は気候変動に関するリスクと機会を重要な経営課題と認識しており、TCFD提言を踏まえ、リスクと機会を特定し、シナリオ分析による戦略のレジリエンスを検証しています。また、投資家等とのエンゲージメントを実施することを想定し、TCFDが推奨する開示項目である「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」について情報開示を行っています。
※1 Task Force on Climate-related Financial Disclosuresの略で、G20財務大臣・中央銀行総裁会議の要請を受けて、金融安定理事会により設置された気候関連財務情報開示タスクフォースのことであり、2017年に提言を公開
ガバナンス
当社では、環境経営推進体制のトップには取締役会が位置しており、全社環境経営について取締役会への報告を実施しています。
また、グリーンプラン2021で社会に約束した環境目標の主要項目に対する進捗と実績や、パナソニック環境ビジョン2050は、社長とカンパニー社長などの経営幹部が出席するグループ戦略会議で確認し、方向性や課題、特に重要な施策について意思決定しています。
2016年度から、環境担当役員とカンパニー環境責任者による環境責任者会議(年2回開催)を設置し、全社環境経営に関する意思決定を迅速に行っています。さらに、カンパニーや地域が実践した成功事例や推進上の課題、中長期目標の考え方については、カンパニーや地域統括会社の環境責任者/環境実務責任者で構成する環境運営委員会(年2回開催)で共有・討議して、PDCAのマネジメントサイクルを回し、全社環境経営のレベルアップを図っています。
戦略
当社は、気候変動の影響を受けやすいと判断した家電事業、住宅設備事業、車載事業を含めたリスクと機会を特定しています。リスクについては、低炭素経済への移行に関するリスク、気候変動による物理的変化に関するリスクに分類し検討しています。また、機会については、事業運営、製品・サービスを中心に、新たな機会を創出するために検討しています。
また、環境ビジョン2050の実現に向けて、当社の事業活動について外部シナリオを前提に気候変動がもたらす影響を分析し、その対応策を検討し、当社の戦略のレジリエンスを検証しました。
気候変動のリスク(代表例)
種類 |
対象 |
内容 |
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移行リスク |
家電事業 |
製品のエネルギー効率規制の強化により、設計対応不十分な場合、販売機会の損失につながる可能性がある |
物理的リスク |
製造 |
洪水など異常気象により、自社製造拠点やサプライチェーンの操業が影響を受けた場合、販売に影響を与え、さらに操業設備回復のための多大な費用が必要となる可能性がある |
気候変動の機会(代表例)
種類 |
対象 |
内容 |
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事業運営 |
製造/再エネ |
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製品・サービス |
住宅設備事業 |
省エネ住宅支援制度が導入され、他社との共創を進めながら、省エネ性能の高い住宅の開発と販売、普及に注力する |
車載事業 |
エンジン搭載自動車への規制強化により、自動車の電動化が進展し、他社との協業も並行して進めながら、高性能車載電池事業が伸長する |
シナリオ分析の概要
シナリオ |
想定される状況 |
当社への影響 |
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2℃シナリオ |
規制の強化:炭素価格の導入 |
省エネ性能向上や創エネ商品の創出による商品でのCO2削減や、CO2ゼロモデル工場の展開等による製造時のCO2削減に取り組んでおり、影響は軽微である |
規制の強化:環境法規制の変更 |
グローバル各地域の統括部門と環境部門で連携し、グローバルに環境法令を把握しており、影響は軽微である |
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4℃シナリオ |
異常気象の増加 |
BCPの策定により、BCM構築ガイドラインを策定し、リスクへの対応体制の強化に取り組んでおり、影響は軽微である |
リスク管理
当社は環境リスクを継続的に低減させていくためのマネジメント体制として、カンパニーごとの環境リスク管理体制を組織し、全社のリスクマネジメントの基本的な考え方に則り、(1)毎年度、環境リスクの洗い出しと全社リスクマネジメント推進、(2)環境リスク発現時の迅速な対応、を進めています。
また、全社的見地から全社重要リスクとして取り上げるべきリスクをグローバル&グループリスクマネジメント委員会で検討、選定し、対策進捗のモニタリング、改善を行い、全社的なリスク対策の強化を図っています。2020年度は、全社重要リスクの1つとして、自然災害リスク(地震・水害)が取り上げられています。
指標と目標
当社は、エネルギーを機軸とした環境ビジョン2050を公表し、環境ビジョン2050の実現に向けて、グリーンプラン2021を定めエネルギー量を指標とした短期の目標を設定しています。
また、エネルギーの指標に加え、温室効果ガス(GHG)削減の中長期の目標を設定し、2017年10月にSBT※1として認定を受けました。エネルギーの指標については、環境行動計画「グリーンプラン2021」で詳しく紹介しています。
※1 Science Based Targetsの略で、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べ2度未満に抑えるという目標に向け、科学的知見と整合した削減目標
GHG排出量目標(SBT認定)
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2030年 |
2050年 |
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当社事業活動における排出量(スコープ1、2) |
30%削減(2013年度比) |
ゼロ |
当社製品使用に伴う排出量(スコープ3) |
30%削減(2013年度比) |
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