高速電力線通信技術「HD-PLC」

コンセントからIoT社会のネットワークインフラ課題を解決

あらゆるものがインターネットにつながるIoT社会を前に、無線ネットワークによる通信の制約や不安定さ、多大な導入コストが問題となっています。一方、身近なコンセントなど電力線や既設線を、電力供給と有線ネットワークの2つの用途で使う「PLC」が研究されてきました。

イメージ写真:松下幸之助創業者が開発した「二灯クラスター(通称:二股ソケット)」は電灯のソケットを二股にして、他の家電製品を同時に使えるようにした。電力線通信は一般的なコンセントを電力とデータの2つの用途に使えるようにした現代の二股ソケットともいえる。

かつて家庭に電灯用ソケットしかなかった時代、パナソニックの創業者である松下幸之助は「二灯クラスター(通称“二股ソケット”)」を発明し、電灯と電化製品という2つの用途での電力共有を叶えました。

それから100年が経った現在、パナソニックでは“Dual Usage Concept”を掲げ、既設の電力線を情報線として再定義しようとしています。次世代インフラの実現に向けてPLCからさらに広い帯域を使い、実用的なレベルまで高めた、パナソニック独自の高速電力線通信「HD-PLC*1」(High Definition Power Line Communication)の研究開発や実証実験に取り組んでいます。

「HD-PLC」の効率性・安全性・接続性

現在の「HD-PLC」は、効率性・安全性・接続性で、従来と比べて優れた通信を実現します。

まず、通信の効率性の面では、データ伝送時のデジタル信号変調方式としてパナソニック独自の「Wavelet OFDM」を採用。従来の方式(FFT OFDM)に比べて、計算量を45.5%、メモリ使用量を12.5%も減らし、通信速度の高速化(同軸線利用で約1Gbpsのデータ通信速度)を達成。一方でチップ面積の小型化、50%の低電力化を果たし、高効率化を実現しています。また、「伝送路推定技術」(Channel Estimation / 各経路の伝送特性に応じて情報量を最適化する技術)によって、高速でありながら安定した多重化通信を実現しています。

安全性の面では「AES-128」暗号化規格を採用し、データそのものの安全性を高めています。さらに前述の多重化通信によって、1つの伝送路(例えば「特定のコンセント」)からデータを盗聴することが困難になっています。

接続数や距離の面で、従来の技術では2端末間・数百メートルの限られた範囲でしか接続できませんでした。
パナソニック「HD-PLC」は10段に渡って最適な通信経路を選びながらパケット中継できる「マルチホップ機能」を研究・開発、規格として実用化し、接続台数1024台・数キロの通信距離にまで拡大することができました。

通信回線に混雑が発生した場合、自動的に通信経路を変更して通信するイメージ図。「マルチホップ通信」によって、1000台規模の端末へデータ転送が可能に。数キロに渡る長距離伝送もでき、通信エリアを大幅に拡大。

拡大する「HD-PLC」の活用

「HD-PLC」の優れた通信性によって、これまでの限られた場所・用途から、より柔軟で広範囲での活用が期待されています。「HD-PLC」による省線化・軽量化によって制御線配置の膨大な労力を省き、屋外での照明演出や住宅のエクステリア等、無線通信が届きにくい場所もカバーします。これまで工事の難しかった文化財や神社仏閣等、地下トンネルや貯水ダム内といった特殊な環境下でも、既設線と無線等の既存技術を組み合わせることで、比較的容易なネットワーク構築が可能になります。

実際に、今後の利用拡大に向けて「パナソニックスタジアム吹田」や「パナソニックセンター東京」で、より大きな規模で既存の三相電力線を使った「照明設備の制御」や「漏洩測定」、電力線を屋外に配線した群衆誘導システム「スマートガイド」等の実証実験を始めています。

既存の三相電力を使った照明設備の制御

写真:群衆誘導システム「スマートガイド」なしの場合

群衆誘導システム「スマートガイド」

写真:群衆誘導システム「スマートガイド」ありの場合

さらに将来の広範囲での利用を想定し、2017年度から事業化を開始した「スマート街灯システム」では、通り道にIPカメラとPM2.5センサーを搭載した街灯を複数設置。それらをHD-PLCマルチホップ接続でつなぎ、「調光制御」「故障検知」「映像監視」「WiFiホットスポット設置」といった付加機能を街全体にインフラとして提供することができます。

国産のIoT基盤技術を国際標準へ

2000年以降で技術開発を進めてきた「HD-PLC」。この技術を広く世界に普及するため、パナソニックは業界団体HD-PLCアライアンスを発起。中国、日本、欧州、米国の各国規制にも対応し、市場の拡大を見込んで「HD-PLC」のライセンスを提供するなど、関連企業と連携しながら標準化活動に取り組んできました。

HD-PLCロゴ画像

そして2018年、パナソニックの提案する第四世代「HD-PLC」技術をベースとする仕様書が国際標準規格IEEE 1901.3ワーキングドラフトとして承認されました。既にIEEE 1901*2規格となったWavelet OFDM方式に加え、周波数帯域を利用状況に応じて制御することにより、通信距離の拡大および通信モードをスケーラブルに切り替える、新たなパナソニックの独自技術が国際標準規格となります。

  • *1 HD-PLC:パナソニック(株)が提唱する高速電力線通信方式の名称で、日本及びその他の国での登録商標もしくは商標です。なお、PLCはPower Line Communicationの略称です。
  • *2 IEEE 1901:米国電気電子学会(IEEE:Institute of Electrical and Electronics Engineers)傘下の通信規格に関する標準化委員会

最新動向

パナソニックは今後も「HD-PLC」の開発と普及を通じて、IoT社会を新たなネットワーク基盤で支えていきます。