Universal Design ユニバーサルデザインを通じて、より多くの人が生き生きと暮らせる生活の実現を目指すパナソニック。 「いきいきライフデザインマガジン」では、様々な専門家から人生をさらに豊かにするヒントをお届けしてまいります。

いきいきライフデザインマガジン

第32回:印象分析のプロが教える男性のための「自分プロデュース術」 第32回:印象分析のプロが教える男性のための「自分プロデュース術」
写真:小林照子さん 写真:小林照子さん

美容研究家/ヘア・メイクアップアーティスト

小林照子(こばやしてるこ)さん

人生百年時代の現代の定年後は、「老後」ではありません。新たな仕事や趣味を始めるもよし、これまでに培ったスキルを生かして地域で活躍するもよし。これからが本当の人生の始まりといってもいいくらいです。新たな出会いやつながりも増えていくなかで、人に好ましい印象を与える方法を知っておくことは、女性のみならず男性にとっても長い人生を豊かに生きるための戦略と言えます。
85歳(2020年1月時点)にして第一線で活躍されている美容研究家、小林照子さんに、当社で実施した男性向けの美容講座を通じて、中高年男性が“見せたい自分”を演出する方法をうかがいました。

「自意識」と「美意識」をもって生きる! 「自意識」と「美意識」をもって生きる!

写真:美容講座の様子

女性は見た目に非常に気をつかいますが、男性は「外見なんかより中身だ」と考える方が多いようです。たしかに、男性の魅力は美醜ではなく、個性だと思います。自分というものを持っていて、かつ「自分はどんなふうに見られているか」「どう見せたいか」という意識を持っている人は魅力的です。
たとえば一流のビジネスマンはみな自分の外見に気をつかっています。「自分をどんなふうに見せるか」を意識し、「人にどんな印象を与えると得か」を考えるからです。外見に気をつかうことは、自分の印象を大事にすることです。仕事も、人生も、どんな印象を与えるかによって変わっていくといっても過言ではありません。これからますます心豊かな人生を送っていくために、男性も「自意識」と「美意識」をもつことが必要です。
自分がどんなふうに見られているかを知るには、写真や動画が役に立ちます。自分の姿や立ち居ふるまいを客観的に振り返ってみましょう。集合写真の中でひとりだけ不機嫌そうに見える。姿勢が悪いなとか、周りはすばらしい景観なのに服装が合ってないなとか、いろいろな気づきや発見があると思います。あまり印象がよくないぞと思ったら、よくない点を反省して「もっと明るく若々しく見せたい」「TPOにふさわしい自分を見せよう」という意識を持ってみる。それが美意識です。

外見に気をつかうことは、自分の印象を大事にすること。男性は「自意識」と「美意識」をもつことが必要。

印象を変えた男たち 印象を変えた男たち

私の研究所は「印象分析」についての研究を長く続けてきて、その成果をもとに、経営者の方をはじめさまざまな業界の方の相談に乗ってきました。
あるとき「外見なんかどうでもいい」とおっしゃる大学教授から、「パーティに着る衣装を選んでほしい」と頼まれたことがありました。一流ブランドのロング丈のジャケットとパンツにシャツの裾を出して着ていただいたところ、「いやあ、こんな格好、ふだんはとてもできないよ」とおっしゃっていた教授ですが、なんと1週間もこのコーディネートで過ごされたそうです。当日、いろいろな方から褒められた。学生たちが寄ってきた。それですっかり宗旨替えされたわけです。人間というのは、ひとつスイッチが入ると、変わっていくのです。
アメリカでビジネスを展開するので社員の印象をアップさせたいと依頼してこられたIT企業のオーナーはご自身もとてもいい感じに変わられました。最初は「自分はこのままでいい」とおっしゃっていましたが、「アメリカに行かれるのでしたら、サムライのような意識で行かれてはいかがですか」とご本人のセルフプロデュースもお手伝いさせていただいたところ、大成功。もちろんビジネスも大成功して、今ではIT業界のカリスマ的存在になっておられます。

古い脂を取り去り、若々しい肌に 古い脂を取り去り、若々しい肌に

印象を変えるためには、男性の場合は、“外見を変える”というより“自分の持っている素材を良くしていく”という意識をもっていただけるといいと思います。具体的にいうと、肌、眉、髪の3点を意識して手を加えると、印象が大きく変わります。
まずは肌ですが、男性の肌は額、鼻の周りなど正中線に沿って皮脂の分泌が旺盛です。この脂が固まると古い角質を巻き込んで毛穴を広げていきます。毛穴の汚れを一度に全部とるのは難しいので、指にガーゼを巻いて洗う、ブラシで洗うなど、皮脂分泌の多い部分を毎日丁寧に洗うことが大切です。最も効果的なのは、スチームを当てたり、ホットタオルを使ったりして、42℃くらいの、肌が気持ちいいと感じる温度で肌を蒸すことで毛穴をゆるめ、拭き取ることです。
こうしたお手入れを続けていくと、確実に肌のキメが細かく、つややかになり、それだけでも若々しい印象に変わっていきます。

男性の肌は額、鼻の周りなどの皮脂の分泌が旺盛なので、その部分を毎日丁寧に洗うことが大切。 最も効果的なのは、肌を蒸して毛穴をゆるめ、拭き取ること。

男の顔は眉で決まる 男の顔は眉で決まる

歳を重ねると、眉毛がぼうぼうに垂れ下がっている方がいらっしゃいます。これは加齢により眉毛の生え替わりのサイクルが遅くなり、本来は抜けて新しい毛に場所を譲るべき古い毛がいつまでものさばっている状態です。逆に、年齢と共に眉毛がどんどん抜けて薄くなっていく方もいます。これも新陳代謝が悪くなっている状態です。
いずれにしても眉ブラシ(新しい歯ブラシで代用できます)を用意して、丁寧にブラッシングして毛根を刺激してあげることが大切です。そして、長すぎる毛はカットしましょう。
眉毛は、形や毛量、勢いなどの違いにより、顔の印象を大きく変えるパーツです(図1参照)。ちょっと気をつかって、“眉毛を育てる”意識を持っていただくといいかと思います。

図:眉毛のインプレッション・マップ
眉毛は、顔の印象を大きく変えるパーツです。新陳代謝が悪くなって、垂れ下がったり、薄くなった眉は、眉ブラシでブラッシングして毛根を刺激してあげましょう。

頭皮マッサージで毛穴の汚れを掻き出す 頭皮マッサージで毛穴の汚れを掻き出す

髪のケアは頭皮のケア次第。頭皮は10万本の髪が生えている畑です。ストレスの多い人ほど頭皮も固くなり、そうなると、いい髪が育ちません。頭皮からは皮脂がたくさん分泌されます。全身から出る皮脂の60%は頭皮から出るそうです。だから、毎日しっかり汚れを落とさないと、皮脂や汚れがどんどん毛穴に詰まっていきます。だから、ブラッシング、マッサージ、シャンプーをきちんとやりましょう。マッサージは以下の要領で行います。
毛穴の奥の皮脂を掻き出す機能に着目してプロのハンドテクニックを再現した家庭用ヘッドスパ器具を使うのも効果的です。

頭皮マッサージのポイント(全部で5分程度が目安です)1.湯船に浸かり首や肩をもむ。2.両手の親指でこめかみをマッサージ。3.左右どちらかの親指で頭のてっぺんにある「百会 (ひゃくえ)」のツボを押す。4.10本指でトントンと頭皮全体を軽くたたく。5.10本の指の腹を頭皮に当て力を入れて小さく円を描くように動かし、少しずつ指の位置を変えて頭全体を刺激。1箇所に付き3~5秒が目安。6.10本の指の腹で頭皮をつまむようにし、パッと離す。これを5~6回繰り返す。7.あごを下げ、両手を組んで後頭部に当て、息を吐きながら、親指の腹で首のつけ根をグ-ッと押す。

印象アップにチャレンジ 印象アップにチャレンジ

小野秀夫(パナソニック(株)アプライアンス社 ビューティ・パーソナルケア事業部)が小林先生に実際に肌や眉毛を整えていただきました。

写真:美容講義風景
小林照子さん

小野さんは柔和で優しいイメージですね。穏やかで、お人好しで、その分少し自己主張が足りないように見えるかもしれませんね。よく人から無理難題を頼まれたりしませんか。

小野秀夫

はい、思い当たります(苦笑)。

小林照子さん

眉尻が下がっているのがお人好しなイメージにつながっていますね。ほんの少しだけカットして、上昇線を補うように少し色を足しましょう。女性の場合は眉毛を1本ずつ描き足すようにしますが、男性の場合は底に色を入れるのがコツです。
どうですか? キリッとして、でも自然に見えるでしょう。

小野秀夫

(鏡を覗いて)おぉ~。

小林照子さん

では、フェイシャルマッサージで肌を元気にしましょう。
クリームや乳液をたっぷりつけて、肌を軽くなでるようにマッサージしていきます。皮膚が薄い目元口元はとくにやさしく。顔の表情筋は中心部から外へ外へと流れています。マッサージも中心部から外へ(図2の矢印を参照)が基本です。横ジワが気になる場合は縦方向に広げるように。時間は1~2分で十分です。

写真:フェイシャルマッサージを施す小林さん
写真:ホットタオルで顔を蒸す様子

マッサージが終わったらティッシュでそっと吸い取り、ホットタオルを載せて蒸してから、丁寧に拭き取ります。女性の場合はホットタオル2枚で拭き取りますが、男性は皮脂が多いので3枚使います。見てください、この肌のツヤ!

ホットタオルで毛穴が開いているうちに美容液や乳液を入れて、最後に化粧水で冷やして毛穴を引き締めます。肌がキレイになるだけでグッとハンサムになりましたね。

写真
【Before】柔和でやさしい印象 
写真
【After】眉がキリッと、顔全体もスマートな印象に
小野秀夫

引き締まったような表情になり、自分の顔なんだけど自分ではないように感じました。

写真:小林さんとのツーショット写真

自分の未来を設計する 自分の未来を設計する

男性の全盛期は50代と言われています。50代というのは、キャリアを積み、体力も気力もあり、いい仕事ができる年代です。介護職の方にきくと、ご高齢の男性はご自分の50代の頃の話しかされない方が多いといいます。

歳を重ねれば、体力も見た目もどんどん衰えていきます。でも、プライドだけは全盛期のまま衰えない。そのギャップに無自覚でいると、ぼやきや嘆きばかりの、とても不幸な老後を迎えることになってしまいます。そうならないために、自意識と美意識を持って生きていくことが必要なのです。
ここらで一度自分を客観的に振り返って、人に「どんなふうに見えているか」を知ってください。世の中の変化や自分の変化を受け入れたうえで、これから自分を「どんなふうに見せたいか」を意識してみてください。これは「自分の未来を設計する」ということであり、「美容の力」だと私は思います。
今は「人生百年時代」と言われています。60歳になっても、まだ40年も残っているのです。
「老後」や「定年後」などという言い方はやめて、むしろ「ここから新しい人生を築いていくんだ」という意識を持って、未来を創っていってください。

写真:講演で話す小林さん 写真:講演で話す小林さん
新しい人生を築いていくために ・自分を客観的に振り返り、人に「どんなふうに見えているか」を知る・世の中の変化や自分の変化を受け入れたうえで、自分を「どんなふうに見せたいか」を意識する・「老後」や「定年後」などという言い方はやめて、「ここから新しい人生を築いていくんだ」という意識を持つ
小林照子さんプロフィール
写真:小林照子さん 写真:小林照子さん

美容研究家・ヘア&メイクアップアーティスト

1935年生まれ。株式会社コーセーにおいて35年以上にわたり美容について研究、時代をリードする数多くのヒット商品を生み出す。85年に同社初の女性取締役に就任。91年、56歳で同社を退任後、美・ファイン研究所を設立。また、[フロムハンド]メイクアップアカデミー、青山ビューティ学院高等部 東京校・京都校で多くの後進を育成中。著書に『人を美しくする魔法』(マキノ出版)、『これはしない、あれはする』(サンマーク出版)『きれいはげんき』(宝島社)『小林照子流 ハッピーシニアメイク』(河出書房新社)、『人生は「手」で変わる』(朝日新聞出版)、『50歳から始める「きれい!」の習慣』(きずな出版)、『48歳からの「いい男」の条件』(きずな出版)などがある。

編集後記 編集後記

人物イラスト:中尾洋子 パナソニック(株) 全社UD推進担当主幹

中尾洋子 パナソニック(株) 全社UD推進担当主幹

男性の化粧も珍しくなくなってきたとはいえ、美容に気を使うのに抵抗がある男性も多いのではと思います。先生が講演で行われた施術は、身近なもので行う丁寧なケアが中心で、正に自分の素材を磨く、という感じでした。これでなりたい姿に近づけられるなら、試してみる価値はあるのではないでしょうか。自分をプロデュースして、いつまでもいきいきとした人生を送って頂きたいです。