導入前の課題と背景

九州大学は旧帝国大学の一つとして知られ、伊都キャンパスは272ヘクタールという国内最大級の単一キャンパス。最先端の研究設備を誇る総合大学で学ぶ学生たちにとって、フレシールベガは学びと生活を支える大切な拠点となっています。
しかし、築30年近くを迎えたこの施設において、長年の懸案事項がありました。それが3階に設置された共用ランドリールームの問題です。
「正直に言うと、洗濯物が乱雑に置いてあって、とてもきれいとはいえない状態。放置された洗濯物が籠に入ったまま大量にあって、足の踏み場もないくらいでした」
丸山さんは、『LAUNDROOM』導入前のランドリールームをこう振り返ります。

▲フレシールベガで7年にわたり寮母を務める丸山直美さん

ランドリールームには以前、縦型洗濯機5台と乾燥機5台が設置されていました。一体型ではないため、洗濯が終わったら乾燥機に移し替える必要があります。また、洗濯・乾燥が終わるまでに５～６時間かかるため、使いたいときに洗濯機が使えず、稼働状況を確認するために何度も無駄足を運ばなければなりませんでした。とくに1階や5階に住む寮生にとってこの移動が小さくないストレスになっていました。
利便性をあげるため、完了していると思われる衣類は取り出して使用するというルールにしましたが、その結果、完了した洗濯物をそのまま放置する寮生が後を絶たなかったのです。
丸山さんは改善のため、定期的に処分の日を告知して回収を呼びかけましたが、「時間が経つとまた同じ状態になり、改善策が見つけきらずの状況でした」と、抜本的な解決には至らなかったと言います。

なぜランドルームが選ばれたのか

転機が訪れたのは、2024年11月のことでした。管理会社である株式会社ヴィータの担当者が賃貸住宅新聞で『LAUNDROOM』を目にしたことがきっかけでした。パナソニックの営業マンとともにフレシールベガのオーナー会社である株式会社ベガに提案したところ、即座に採用が決定しました。
『LAUNDROOM』はパナソニック製の最新のななめドラム式洗濯乾燥機をネットワークで接続し、利用状況の通知をLINEで受け取ることができるクラウドサービスです。特にヒートポンプ乾燥方式を採用した洗濯機は、洗濯から乾燥までを約98分で完了。通常のヒーター式に比べて乾燥時間を約38%短縮し、電力消費も約70%カットできる省エネ性能を備えています。

▲LINEで洗濯機の空き状況を確認し、洗濯完了の通知を受け取ることができます

丸山さんは「寮生みんな困っていたから、導入が実現したら嬉しいなと思いながら話を聞いていました。クラウドから通知が来るというのは画期的で、心が躍るくらいワクワクしました」と『LAUNDROOM』の概要を初めて聞いた時の印象を語ります。
導入決定後、せっかく洗濯機を新しくするならと、ランドリールーム全体のリニューアル工事も実施することになりました。コンセプトは「カフェのような空間」。壁や床を明るく、清潔を保ちやすい素材に変更し、壁面の一部は黒板ボードにして寮生が自由にメッセージを書き込めるように。「ランドリールームを楽しい場所にしていきたかったんです」と丸山さん。

▲寮生たちはチョークを使い、思い思いのメッセージを好きに書き込むことができます

そして2025年6月12日、ヒートポンプ式ドラム式洗濯乾燥機7台を備えた新しいランドリールームが稼働を開始しました。以前の5台から実質的に台数も増え、より多くの学生が利用できる環境が整ったのです。

『LAUNDROOM』の使い方と使用者の声

3階のランドリールームにずらりと並ぶ7台のパナソニック製最新の洗濯乾燥機。入居者63名の学生たちは、『LAUNDROOM』によって効率的に洗濯できるようになりました。

▲カフェのような雰囲気に生まれ変わったランドリールーム

使用方法は極めてシンプル。スマートフォンでQRコードを読み取り、LINEの友達登録を行うだけで利用開始できます。LINEのメニューから「空き状況・通知」ボタンをタップすると、リアルタイムで各洗濯機の稼働状況を確認可能。使用した洗濯機の番号の通知を「オン」にしておけば、洗濯終了時にLINEトークで通知が届きます。
「洗濯乾燥がとても速い」「仕上がりがふんわりしていて衣類も傷みにくくなった」「洗濯と乾燥が一気にでき、ランドリールームへの往復回数が減って楽になった」「洗濯をかけてから忘れていることも多かったので、通知がとても助かっている」など、寮生からはポジティブな声が多く寄せられました。

▲ななめドラム式洗濯機は背の低い学生にとって奥まで見やすく、洗濯物の取り忘れが減ったとのこと

また、管理する側の丸山さんにとってもメリットがありました。
「フィルターの掃除が簡単になり、寮生にも協力してもらうことで清潔が維持しやすくなりました。以前は日々の清掃が大変でしたが、今では負担が半分以下になったと感じています」

▲利用後に寮生が乾燥フィルターを清掃、排水フィルターは丸山さんが週に2回清掃しています

予想外のメリットもありました。「入居者から『ランドリールームが空いているのはいつ？』と問い合わせがあったんです。いただいていた稼働状況のレポートから、具体的な時間帯を伝えることができました」と丸山さん。クラウド管理により、利用者にも管理者にも有益な情報が可視化されるようになったのです。

今後の展望について

導入から3ヶ月が経過し、現在では入居する寮生の約8割が『LAUNDROOM』のLINEアカウントを追加して利用しています。

▲管理室横の掲示板にもQRコードを貼り出し、丸山さんはできるだけ対面で使い方を説明するよう心がけたそうです

『LAUNDROOM』の導入で、洗濯に関する不満は大きく解消され、生活の質が向上しました。しかし、少ないながらも洗濯物の取り忘れは残っています。放置衣類をゼロにしたい。それが今の目標だと丸山さんは語ります。
「あまり口うるさく言いたくないんです。気持ちよく暮らしてほしいから、どういう伝え方が一番いいかなと考えています」と、寮生たちへの温かい配慮を忘れません。
さらに、リニューアルしたランドリールームにWi-Fi環境やビリヤード、ボードゲームの設置など、寮生が楽しみながら過ごせる空間へと進化させたいという構想もあるのだとか。
「入居者、オーナー、管理会社、管理人の皆の満足度も高く、悪い点が思いつきません。導入費用に対してそれ以上の満足度を得ることができました」
導入を検討している施設へのアドバイスを求めると、丸山さんは迷わずこう答えます。

▲「ずっとこの環境で洗濯ができる今の1年生がうらやましい」と、上級生たちは口を揃えます

「これからも新しい技術や仕組みを取り入れて、寮生が快適に生活できる場所であり続けたいと考えています。親元を離れて暮らす学生たちが、安心して元気に充実した学生生活ができるよう見守っていきます」
丸山さんのこの言葉には、7年間にわたって学生たちを支えてきた寮母としての深い愛情が込められていると感じました。
『LAUNDROOM』は単なる洗濯設備ではなく、学生たちの充実した学生生活を支える重要なインフラとして、今日もフレシールベガで稼働を続けています。