導入前の課題と背景

医療施設を併設する白金キャンパスでは、衛生品質ついて高い水準を求められます。北里メディカルサービスの木全さんは近年の社会情勢の変化に伴う人件費の上昇、および人材確保の困難化により、業務遂行に必要な体制の維持・強化にかかる費用の増加に悩んでいました。そんな中、2023年2月に北里大学側から「清掃業務の一部をロボット化することで業務委託費の削減できないか検討してほしい」との要請がありました。これが、ロボット導入のきっかけとなり、木全さんはインターネットで清掃ロボットの情報収集を開始しました。

▲ロボット導入を担当した北里メディカルサービス株式会社事業推進部執行役員木全健さん

『RULO』導入の決め手となった他社との違い

複数メーカーの製品を比較検討し、キャンパス内でのデモンストレーションも行いましたが、その結果はいずれも木全さんを満足させるものではありませんでした。『RULO』についても懐疑的であったと木全さんは当時を振り返ります。しかし、実際のデモでは風によって壁際に集まった細かいホコリまでしっかり回収する様子を見て、清掃能力の高さを実感できました。

▲「隅は人がバキュームで吸い上げなければならないのでは」木全さんの思いは杞憂でした

導入の決め手となったのはパナソニックの提案した運用プランにあったといいます。
「当時は各社1機種の取り扱いしかなく、またロボットの性能については詳しい説明をいただけたのですが、購入後にどう使うかはお任せといった感じでした。『RULO』は中型の『Pro』と小型の『Biz』と2種類があり、それらを組み合わせて広いエリアと狭いエリアを効率良く清掃できるプランをご提案いただきました」
ロボットを購入後にどう使うかの知見がなかった木全さんにとって、図面と工程表の提出だけで、機器を知り尽くした専門の清掃ロボット担当者がどこに・何台・いつ動かすかまでプランニングしてくれたのは非常にありがたかったとのこと。
もともとは病院側からの要請ということもあり、導入はスムーズに決まりました。

▲テーブル、イスの多い学生食堂。イスを上げることなく清掃しきれたのは『RULO Biz』だけ

「実際に走らせてみるとロボットが清掃する時間帯に、物が置かれていたり、什器が移動されていたりで、完走できてないことがありましたが、その度マッピングを調整していただきました。そのおかげで、今はほぼ完走できています」
アフターフォローはさすがパナソニックと、木全さんは満足げな表情でした。

『RULO』導入後の運用方法

白金事業部おいて施設管理・環境整備・人材派遣の取りまとめを担っている小山さんによると、導入前は7名体制でプラチナタワー、薬学部1号館・2号館、大村智記念研究所では週3回、各棟全体のモップ清掃を実施。北里研究所病院では、広いエリアは毎日モップ清掃、狭いエリアはバキューム清掃を行っていました。清掃スタッフは夜間から早朝にかけて作業を行い、授業や診療が始まる前に作業を完了させる必要がありました。

▲インタビュー取材にご協力いただいた北里メディカルカービス株式会社事業推進本部の小山さん

現在『RULO Pro』は薬学部1号館、薬学部2号館、プラチナタワー、北里研究所病院に計4台。建物間の移動がないよう、建物ごとにそれぞれ1台ずつ設置されています。常設のものもありますが、曜日、時間帯で作業エリアが決まっており、清掃スタッフが事前に決められたスタート位置に移動させるのだとか。
『RULO Biz』は薬学部2号館に2台、白金図書館に2台、大村智記念研究所に1台、北里研究所病院に1台、アネックス棟に1台、北里柴三郎記念博物館に1台と計8台が使用されています。

▲各所で働く『RULO』たち。小山さんは「スタート操作はワンタッチで容易」とその操作性を評価。『Biz』に至っては遠隔で自動スタートできる

「『Pro』は人のいる時間帯でも遠慮なく稼働できるため、時間帯に左右されず安定した清掃が可能です。さらに、事前に設定されたルートに従って清掃を行うため、清掃の抜け漏れがなく、常に一定の品質を維持できる点でも安心して任せられます。一方『Biz』はスケジュール設定により、利用者のいない時間帯に清掃を行うことで、業務や動線に影響を与えません。机や椅子などが固定されていない環境でも、障害物を回避しながら清掃が可能です」
それぞれの利点を小山さんはこう語ります。

『RULO』導入後の現場の変化

当初、ロボットに業務を任せることで人員削減が期待されていました。
実際には、ロボットの管理業務を一人に任せきりにすると不在時に混乱が生じることがわかり、複数名が対応できる体制を整えることで、より円滑な運用を実現しています。
「突発的な業務（トイレの詰まりやゴミ箱周辺の清掃、机の移動など）に即応するためには、引き続き人の力が欠かせません。ロボットは人の力を最大限引き出すパートナーであると実感しています」と小山さん。

▲フロア間の移動は人の手で行っている。バッテリー交換、ロボットにたまったゴミの除去も人の仕事となる

人員の最適化は進みましたが、白金キャンパスでは設置環境が多種多様なこともあり、ロボットを有用活用するための介助など、一人ひとりの仕事の「質」や「役割」に変化が生じたといいます。
木全さんは「ホール、廊下、学生ホール、図書館など広いエリアを中腰で掃除機をかける必要があった床清掃をロボットに任せることができるようになり、スタッフの身体への負担は大幅に軽減されました」と導入効果を評価。その結果、離職率の改善を図ることができました。

今後の展望とまとめ

「的確な提案をしてくれるのでロボットを導入したいが、どう使ったらいいかわからないといった不安をお持ちの企業様におすすめ。また導入後も完了率を上げるために一緒になって取り組んでくれるのでアフターフォローも安心です」と『RULO』導入後の感想を語る木全さん。
ノンストレスで安定的な運用をしていくためには、さらなる調整と一定の時間が必要としつつも、3月からここ半年にかけての作業完了率は90％越えと高い水準をキープできています。
ロボットは障害物などの環境的な要因やシステム的な要因で、途中で止まってしまうことが多々あります。作業完了率80％というのが一つの指針になるのですが、それを大きく上回ったのは北里メディカルサービスがパナソニックとともに改善を繰り返していった結果といえます。
清掃ロボットは導入したら終わりではないため、機種選びだけでなく、どこと伴走していくかも重要です。

▲稼働後の検証、マップの修正、ロボット運用のための人員体制づくり、ロボット特性の理解を施設側に周知するなど互いの取り組みが完了率90％超えという結果を生みました