30. 砲弾型電池ランプを考案 1923年(大正12年)

製品考案の面でも、このころ画期的な商品が完成した。砲弾型電池ランプである。

かつて自転車店に勤めていた所主は、自転車の灯火が風ですぐ消えて困った体験をもっていたが、いまだになおローソクや石油ランプが使われているという状況だった。電池式ランプもあったが、寿命は3時間ほどで、故障も多く、実用性に乏しい。そこで考案に熱心な所主は、この電池ランプの工夫を思い立った。

それから半年の間、数10個の試作品をつくった末に、従来品に比し、約10倍の30時間から40時間も点灯し続ける砲弾型電池ランプをつくった。

しかし、この画期的な製品をどこの問屋も取り扱ってくれない。窮した末に、直接小売店に無償で置いて回り、実際に点灯試験をした上で、結果が良ければ買ってもらうことにした。そのために、所主は「1万個もバラまけば、反響はあるだろう」と覚悟した。これは、当時の金で1万5、6,000円余りになる。これがだめなら工場はつぶれるという画期的な売り出しである。

この社運をかけた実物宣伝が効を奏し、その真価を知った小売店から次々と追加注文が入って、2、3カ月後には月2,000個も売れるようになった。