グループが目指す姿と地球環境問題の解決

当社グループの真の使命は、創業者の松下幸之助が生涯をかけて追い求めた「物心一如の繁栄」、すなわち「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現です。今からおよそ90年前の1932年、創業者は250年かけて10世代にわたって「理想の社会」の実現を目指すと宣言しました。以来、私どもはこの想いを受け継ぎ、時代時代の社会課題の解決のため、またお客様お一人おひとりの幸せのために事業を通じたお役立ちを果たしてきました。

現在、私どもの使命達成を阻む最大の課題は地球環境問題です。使命達成の到達点である約160年後に、私たちの子孫が幸せどころか、地球上でくらすことができない状況は絶対に避けなければなりません。環境汚染、限りある資源の枯渇、なかでも最も深刻かつ喫緊の課題である地球温暖化を少しでも早く食い止めるためには、社会全体のCO2総排出量を一刻も早く実質ゼロにすることが必要です。当社グループはその貢献においていち早くより大きなお役立ちを果たし絶対に解決へと導く、この思いからグループ長期環境ビジョン「Panasonic GREENIMPACT(PGI)」を2022年1月に発表し、事業活動の排出削減と、社会やお客様の排出削減に貢献する取り組みを加速しています。

Panasonic GREEN IMPACT

PGIは、温暖化阻止のために、当社グループが持つ「責務」である事業活動の排出削減と「機会」である社会の排出削減への貢献の両面の大きさと向き合い、一つひとつの取り組み(ACT)の積み重ねによって、自社と社会のCO2排出を削減し、社会とともにカーボンニュートラル(CN)を目指す―その思いを込めて制定されました。2050年のCN社会を見据えて、各事業の領域で2030年の社会変革からバックキャストした戦略を構築し、2022年4月、PGIを、責務の遂行を意味するOWN(❶)と、貢献の機会を意味するCONTRIBUTION(❷)とFUTURE(❸)、および社会やお客様へのポジティブな波及効果を意味するINFLUENCE(+)に分類し、❶❷❸を合わせて現在の世界のCO2総排出量317億トン※1の約1%にあたる年3億トン以上※2の削減インパクトを2050年までに創出することを宣言しました。そして2022年7月、マイルストーンとして、2030年度に「全事業会社の排出量(❶のスコープ1,2)の実質ゼロ化」と「約1億トンの削減貢献量(❷)の創出」を目指すとともに、2022-2024年度の行動計画「GREEN IMPACT PLAN 2024」を策定しました。

※1 2020年エネルギー起源CO2排出量(出典:IEA)
※2 CO2削減貢献量の排出係数は2020年基準

❶ OWN IMPACT
バリューチェーンの全排出量(1.1億トン※3)を、社会の脱炭素効果※4とともに実質ゼロにします。工場(スコープ1,2)の2030年度までのゼロ化をはじめ、部品や材料の生産時の排出量(スコープ3カテゴリ1)や製品使用時の排出量(スコープ3カテゴリ11)など、事業活動の全排出量(スコープ1,2,3)をゼロ化します。効率的な排出削減は競争力の源泉となり得ます。

※3 2020年度実績値
※4 各電力供給事業者の脱炭素化が進むことで電気のCO2排出係数が良化すること

❷ CONTRIBUTION IMPACT
現在の事業領域で、社会やお客様の排出削減に1億トン以上貢献(Avoided Emissions)します。例えば車載電池の性能/コスト力向上による環境車の普及促進、街や家庭で化石燃料から電気を使うヒートポンプ式給湯暖房機への置き換え、お客様企業の材料調達から市場供給までの在庫や輸送の最適化ソリューションなど、製品・サービスごとに排出削減の貢献量を可視化し、これを社会と共通のモノサシにします。そして貢献に資する領域に投資し、競争力を高め、事業成長と貢献の拡大を目指します。

❸ FUTURE IMPACT
新技術、新事業の創出により1億トン以上の貢献(Avoided Emissions)を目指します。

+ INFLUENCE
PGIの取り組みと関連するコミュニケーションによって、お客様や他事業者、さらに国や投資家の需要や行動の変容を通じて、社会全体のエネルギー需給の変革や脱炭素化に波及的にポジティブな影響をおよぼします。これらは、現時点で直接的な削減インパクトを算出できるものではありませんが、一刻も早いカーボンニュートラル社会の実現のために当社グループが果たす使命の一部と自覚して取り組みます。

サーキュラーエコノミーグループ方針

Panasonic GREEN IMPACTは、地球環境問題に正面から向き合い、様々な事業活動のインパクトを拡げることで、その解決に貢献していくという決意を込めた、パナソニックグループの長期ビジョンです。
私たちは、資源効率が脱炭素化に寄与するとともに、地球上の限られた天然資源の消費を削減することが必要であることを認識し、持続可能な社会の実現に貢献するため、パナソニックグループのサーキュラーエコノミー方針を定めます。

サーキュラーエコノミーは、製品ライフサイクル全体で、材料資源の最も効率的な利用を目指す経済システムです。
パナソニックグループ各社は、以下の循環の原則に基づき、それぞれの事業特性に合わせたアプローチや、目標、個別の行動計画を定めます:

  1. 製品をお使いいただける期間を出来るだけ延ばし、ライフサイクルを通じて資源の生み出す価値を維持し高めていきます。そのために、製品設計やデザイン、ビジネスモデルをサーキュラー型に変革、サービスを拡充すると同時に、リサイクル活動にもさらに力を注ぎます。
  2. 材料の使用を最小化するとともに、リサイクル材料や再生可能材料の使用割合を拡大します。
  3. 顧客やパートナーと協力して、循環志向の経営、情報共有、製品使用の新しいあり方を共につくります。

パナソニック内外におけるグリーントランスフォーメーション(GX)の一環として、このサーキュラーエコノミー方針を策定することにより、私たちはリニア型からサーキュラー型ビジネスへの転換を推進していきます。

環境行動計画「GREEN IMPACT PLAN 2024」

長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」で定める2050年の目標に至るマイルストーンとして、グループ全社の事業戦略に連動した2030年度の目標値と、2022年度から2024年度までの3ヵ年の環境行動計画「GREEN IMPACT PLAN 2024」(GIP2024)を策定し、取り組んでいます。GIP2024では重点課題を、自社バリューチェーン(VC)全体(スコープ1,2,3)のCO2排出の削減量(OWN IMPACT)と、社会へのCO2排出の削減貢献量(CONTRIBUTION IMPACT)、ならびに資源/サーキュラーエコノミー(CE)として2024年度の目標値を設定しました。
OWN IMPACTでは、VCの全体で2020年度に1.1億トンあった排出量から、事業成長とともに、2030年度に排出量3,145万トン、2024年度に1,634万トンをそれぞれ削減します。その中でも、事業活動によるCO2排出量(スコープ1,2)を実質ゼロにした工場(「CO2 ゼロ工場」)を2030年度までに全事業会社で達成する計画においては、2024年度に37工場を目指します。
CONTRIBUTION IMPACTでは、社会への削減貢献量を2030年度に9,300万トン、2024年度に3,830万トン創出します。なお「削減貢献量」は当社グループも参画して算定方法の国際標準化が進められる途上にあり、これから標準化されていく算定方法が当社グループで採用の方法と異なった場合は、その説明とともに目標を修正した上で達成に取り組みます。
資源/CEの取り組みは3つあり、1つ目が工場廃棄物のゼロエミッションを目指した、グローバルでのリサイクル率99%以上の常態化です。2つ目の再生樹脂の使用量は、3年間で前中期計画(GP2021)の期間(2019-21年度で実績43,300トン)の2倍となる90,000トンに増やします。3つ目として、資源の有効活用とお客様価値の最大化を目指す「CE型の事業モデル」は2024年度までに累計13以上の事業で新たに展開します。
さらに、継続課題として、社会課題の大きさと社会・お客様との共感を考慮し、事業領域や地域の特性・ニーズに合わせて「生物多様性」「水」「化学物質」「地域社会」「順法」の各課題に取り組みます。

※PGI 策定時点の排出係数(IEA2021)で算出

▪GIP2024初年度の状況

自社バリューチェーン(VC)全体のCO2排出量は2020年の1億751万トンが1億2,921万トンと、計2,170万トンの増加(OWN IMPACTはマイナス)となりました。スコープ1,2は、省エネと再エネがともに進展して、CO2ゼロ工場は31拠点、削減量は36万トンとなりましたが、スコープ3は、対象とする領域の拡大等により製品使用時(910万トン増)やその他のカテゴリでも増加した結果です。一方で、お客様・社会への削減貢献量は拡大し、新たな可視化も進んで3,723万トンとなりました。また資源/CEの領域では、廃棄物リサイクル率はグローバル99.1%となり、目標水準を維持、再生樹脂使用量は1.24万トン、そしてCE型事業モデルは新たに4事業が立ち上がり、累計10事業となりました。

GREEN IMPACT PLAN2024 (2024年度、2030年度目標と2022年度実績)

重点課題 CO2/エネルギー OWN IMPACT 項目:自社バリューチェーンのCO2削減量 2024年度目標 1,634万トン※2、スコープ 1,2※1 CO2ゼロ工場37工場、CO2削減量26万ton※2 スコープ 3※1 顧客の製品使用におけるCO2削減量1,608万ton※2 2030年度目標 3,145万ton※2 項目:CONTRIBUTION IMPACT 社会へのCO2削減貢献量※3 2024年度目標 3,830万ton※3、電化:脱化石燃料、環境車の普及 電化:2,510 ※3、エネルギー効率:エネルギー利用の効率化・最適化 エネ効率:630、水素:脱炭素エネルギーの普及 水素:60、製品置換:製品の置換により脱炭素効果 等 製品置換等:630 2030年度目標 9,300万ton※3 資源/CE(Circular Economy)、工場廃棄物のリサイクル率※4 99%、再生樹脂の使用量※5(2022-24年度計) 90,000トン、サーキュラーエコノミー型 事業モデル/製品13事業 継続課題 生物多様性 ネイチャーポジティブをめざして 事業活動が生態系に与える影響を低減・回復、持続可能な原材料調達、生物多様性に貢献する事業緑地、生物多様性に貢献する製品・サービス 水 事業活動および製品・サービスでの 水使用量の削減 化学物質事業活動および製品の 化学物質による環境負荷の低減 地域社会地域社会への環境貢献 および 次世代の育成 順法環境法規制の順守徹底

※1 GHGプロトコル(排出量の算定・報告の基準)による区分
※2 2020年度の排出量から当該年度の排出量を減算した量
※3 当社グループの製品・サービスが導入されなかったと仮定した場合のライフサイクル排出量から、導入後の排出量を差し引いた量。電気の排出係数はIEC2021で算出
※4 再資源化量/(再資源化量+最終処分量)
※5 当社グループの製品に利用された再生樹脂に含まれる再生材の質量
※6 スコープ1,2とスコープ3カテゴリ11に加えてカテゴリ1(調達)やカテゴリ12(廃棄)などの増減分を含む。カッコ内は2020年度(起点)を2022年度対象と同じバウンダリで算定した場合
※7 電気の排出係数はIEA World Energy Outlook 2℃シナリオで算出

▪GIP2024:2022年度の変化点

CO2排出量(図上段)
自社バリューチェーン全排出量の約8割を占める製品使用時の排出量(スコープ3カテゴリ11)は、2020年度の33製品8,593万トンから、2022年度には製品エネルギー効率向上、販売増減、算定式の精緻化、排出係数の良化などによって7,286万トン(1,307万トン削減)となりました。一方で当社グループの責務としての削減対象を的確に認識するため、新たに可視化した17事業の排出量が1,314万トン、また空質空調社(HVAC社)とコールドチェーン社(CCS社)の冷媒関連機器について、低環境負荷冷媒(CO2/プロパン)の普及による使用時フロン放出の低減と、お客様が廃棄される際の冷媒の回収拡大を目指して、冷媒関連の影響の算定を精緻化しました(計1,581万トン)。このほか調達額の増加(500万トン増)などを合わせて、2020年度の1億751万トンが2022年度に1億2,921万トンとなり、2,170万トン増加(OWN IMPACTはマイナス)です。2022年度と同じ対象範囲で比べた場合は、2020年度から939万トンの削減です。継続してスコープ3の算定範囲や算定方法の見直しによる精度向上に積極的に取り組みます。

CO2削減貢献量(図下段)
社会やお客様への削減貢献量(Avoided Emissions)は、対象事業は2020年度の28事業から、2022年度は49事業にまで可視化が広がりました。全体では3,723万トンとなり、2024年度の目標水準(3,830万トン)に近づいています。過去から可視化に取り組んできた26事業(2020年度時点で28事業)で貢献量が大きく拡大しているとともに、新たに23事業が可視化(計261万トン)されPDCAが回り始めました。

Panasonic GREEN IMPACTは、喫緊の温暖化阻止のために、責務と機会の両面に向き合い、一つひとつの取り組み(ACT)の積み重ねによって社会とともにカーボンニュートラルを目指すための指標を示しています。「排出量」と「削減貢献量」はその概念や目的が異なり、自社の責務(排出量)はお客様への貢献(削減貢献量)で相殺するものではなく、表裏一体の関係として把握した上で、ともに加速すべきものと考えます。特に「削減貢献量」は算定条件の自由度が高く、現時点では国際標準化されていませんし、この指標が社会共通のモノサシとなるためには実務的な課題も多く残されていますが、当社グループは、電化・省エネ・エネルギー転換・資源循環などにかかる競争力を高めて、脱炭素化の早期達成に貢献し、変革と成長を加速していることを示すものとして、進捗を報告していきます。

GREEN IMPACT PLAN2024(GIP2024):2022年度の変化点

削減貢献量

Panasonic GREEN IMPACTのCONTRIBUTION/FUTURE IMPACTは、一般的にCO2削減貢献量と呼ばれ、当社グループが提供する製品やサービスを導入いただくことで、導入されなかった状態(ベースライン)と比較して、お客様や社会のCO2排出の削減に貢献した量(排出を回避した量)の価値を示す指標です。2022年度のCONTRIBUTION IMPACTは、同年に販売した製品・サービスを対象とした49事業で3,723万トンでした。この大部分がエアコンや照明などの「くらし事業」とEV用充電池等の「エナジー」の分野で、グループ売上高の約50%を占めます。当社グループは電化された製品やサービス(電気・電子機器)の提供を主な生業にしており、化石燃料を使う機器よりもエネルギー利用効率に優れる電化機器への変換によってCO2削減効果を生み出します。電化機器が広く普及することで電力需要は高まりますが、機器や空間のエネルギー利用効率を継続的に高めることや蓄エネ、エネマネなどによる需要の抑制や最適化で各地域の系統電力の負荷量の削減と再エネ化の促進につなげます。
一方で、削減貢献量は国際的に統一された規格がありません(2023年8月時点)。当社はWBCSD※1やIEC※1、GXリーグ※1に参画し、同じ志を持つ政府部門や企業とも協力して、削減貢献量の必要性の対話を進めてきました。2023年3月にはWBCSDとGXリーグから削減貢献量のガイダンス・指針※2が発表され、国際規格化を目指すIECでの議論※3の状況と合わせてこれらに準拠した算定に取り組んでいます。ベースライン(比較対象)は、各事業で想定する市場平均的な状態と比べた、当社グループ製品・サービスの使用期間(耐用年数など)や設計上の年間電力消費量などですが、グループ内で協議して、客観的に妥当と判断した条件で合理的に算定します。算定式は、活動量(販売台数など)×活動量あたりの年間削減量(ベースラインと比較したエネルギー使用量の差など)×期間(寿命など)×当該のCO2排出係数を基本構造としています。この算出方法と根拠となるデータは、第三者の検証を受けて、本レポートでの当社グループとして初の開示となりました。
「排出量」と「削減貢献量」の2つの指標は、その概念や活用目的が大きく異なります。「排出量」(削減が自社の責務。中長期の削減目標はSBT1.5度目標※4の認定を受けています)は「削減貢献量」(お客様への削減の貢献)によって相殺はできません。当社グループは、責務と貢献の双方のPDCAサイクルを加速し、脱炭素社会の早期実現を目指します。

※1 WBCSD:持続可能な開発のための世界経済人会議、IEC:国際電気標準会議、GXリーグ:経済産業省主催の脱炭素と成長の両立を目指す企業が参加する協働の場
※2 WBCSD「Avoided Emissions Guidance」とGXリーグ「気候変動の機会における開示・評価の基本指針」
※3 IEC63372(2024年の国際規格発行を目指す「削減貢献量」の標準)
※4 Science Based Targetsの略で、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べ1.5度未満に抑えるという目標に向け、科学的知見と整合した削減目標。2023年5月に認定された

CONTRIBUTION IMPACT

単位:トン

算定例

:下記で詳しく記載

CONTRIBUTION IMPACT

※5 Building Energy Management System
※6 Home Energy Management System

電化 ヒートポンプ式 給湯・暖房機器(エコキュート、A2W※1

※1 A2W: Air to Water

主な削減対象となる製品ライフステージ

原材料・素材 製造 輸送 使用 廃棄・リサイクル

主な販売地域:エコキュート日本A2W欧州

■概要
ヒートポンプは、気体を圧縮や膨張させると温度が変化するという性質を利用して大気中の熱エネルギーを水や空気に移動する電化技術で、化石燃料燃焼による熱の利用と比較して利用効率に優れる(約2.44.3※2)。さらに、ガス機器からは都市ガスの燃焼時に必ずCO2が排出される一方、本電化機器が普及し、使用される個々の電源で再エネ構成が年々高まることを前提に脱炭素社会への移行の加速に寄与する。

※2 経済産業省「トップランナー制度」の情報から当社試算

■削減貢献メカニズム
各市場に普及している平均的なガス燃焼式の給湯・暖房と比べて、同量の能力を持つ本機器がライフタイムで使用する電気のCO2排出量は少なく、その差分が削減貢献量。

給湯・暖房エネルギーによる1台あたり平均CO2排出量
(A2Wの場合)

■CO2削減貢献量の算定式

活動量 活動量あたりの削減量 CO2排出関連数値・係数 期間

■ベースライン(比較対象)
同量の給湯・暖房に要する熱量を獲得するためのガスの燃焼によるCO2排出量。
寒冷地の多い欧州などではガス燃焼による従来型の給湯・暖房が主流である。
(A2Wは既存ガス機器の配管を利用して電化に移行可能)

■定量化の範囲(考え方と合理性)
使用時。ヒートポンプ機器とガス機器ともにCFP※4は「使用時」が相対的に大きい※5ため、カットオフできる範囲と当社判断。

※5 当社ヒートポンプ機器のバリューチェーン(VC)での排出量で「使用時」は79.9%(2020年度当社実績)

※4 CFP(Carbon Footprint of Products):製品・サービス(1単位)が原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出する温室効果ガス排出量のCO2換算値

■活動量
(エコキュート)
日本での年間販売台数にガス機器からの置き換え率70%※6を乗じた数(台)

※6 日本の工業会データ。推定寿命を終えたエコキュート同士の置き換えを計上から除外

(A2W)欧州における年間販売台数※7(台)

※7 2008年より販売開始のためA2W同士の置き換え率は無視できると当社判断

■活動量1単位あたりの削減貢献量(原単位)
ヒートポンプ機器とガス機器の双方で、同量の給湯・暖房効果をもたらすために要した年間エネルギー使用量のCO2換算量の差分

■期間(フロー方式:販売年度にその生涯分の排出量を一括計上)

  • 補修部品の保有年数
  • 期間中、CO2削減効果は持続する。

電化 EV用 円筒形充電池

主な削減対象となる製品ライフステージ

原材料・素材 製造 輸送 使用 廃棄・リサイクル

販売地域:北米

■概要
ICE(内燃機関車)からEV(電気自動車)への移行はエネルギー効率の優位性※1に加え、直接CO2を排出しないため世界の運輸部門の脱炭素化をもたらすことが期待される。内燃機関車でないEVは電気によりモータを駆動させて動力とすることからICEの燃料タンクに相当する充電池はEVにおいて最重要な部材の1つと認識されている。

※1 エネルギー効率(消費エネルギー量のうち車輪に届く割合)EV:87-91% ICE:16-25%
出典:Yale Climate Connections. August, 2022 “Electrifying transportation reduces emissions AND saves massive amounts of energy”

■削減貢献メカニズム
当社の充電池を搭載したEV(電気自動車)とICE(内燃機関車)が同じ距離を走行した場合、EVはエネルギーの動力への変換効率が高いため、燃油消費量と充放電量をCO2に換算した量の差分が削減貢献量。

ICEとEV各1台平均のCO2排出量
(米国。EVは電力グリッドを利用)

■CO2削減貢献量の算定式

活動量 活動量あたりの削減量 CO2排出関連数値・係数 期間

■ベースライン(比較対象)
ICE(内燃機関車)の走行時のCO2排出量

■定量化の範囲(考え方と合理性)

  • 走行時(使用時)のCO2排出量の差分量
  • 本事例ではEVの走行時に限定。電池のCFP※2は別途算定

※2 CFP(Carbon Footprint of Products):製品・サービス(1単位)が原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出する温室効果ガス排出量のCO2換算値

■活動量
EV用円筒形充電池の年間販売容量をEV台数に換算した値(台)

■活動量1単位あたりの削減貢献量(原単位)
ICEとEVの1kmあたりの走行によって排出されるCO2の差分量

■期間(フロー方式:販売年度にその生涯分の排出量を一括計上)

  • EVの生涯走行距離(EVの走行時での削減効果を示すため)
  • EVの生涯走行距離
    =日、米、欧の年間走行距離の平均値×自動車の寿命(10年)

■2022年度のCO2削減貢献量:1,417万トン

置き換え 電化製品同士の置き換えによる使用時の省エネ効果

主な削減対象となる製品ライフステージ

原材料・素材 製造 輸送 使用 廃棄・リサイクル

主な販売地域:日本、中国、北米、中南米、欧州、東南アジア、中近東 など

■概要
普及が進んだ大量の電化製品が消費するエネルギーの利用効率性を向上することは、製品が使われる地域の系統電力の負荷を低減し、電源の再エネ化のハードルを下げて、需要側から脱炭素社会への移行を促進する。様々な耐久性の高い電化製品の特徴が、ライフサイクルCO2排出量(CFP※1)の支配的なステージが、顧客や社会で製品が使用される期間全体を通じたエネルギー利用によることである(照明、冷蔵庫などの大型製品で8-9割を占める)。
充分な耐用年数を経た製品は、使用時に同等の機能・性能を持っているエネルギー効率が向上した新製品への更新によって、顧客と電源側のCO2削減効果を生む。

■削減貢献メカニズム
耐用年数が経過した電化製品が、同等機能を持つ新製品に置き換えられた前後での、生涯(ライフタイム)使用時の省電力量をCO2に換算した量の差分が削減貢献量。

照明器具の例

自社バリューチェーンのCO2排出量と削減量(トン)

従来蛍光灯と比較して同等以上の明るさで約60%省エネ

自社バリューチェーンのCO2排出量と削減量(トン)

一体型LEDベースライト「iDシリーズ」
一般施設・汎用(省エネタイプ ライトバー)
直付XLX450DHNU LE9 昼白色(5000K)

【例】照明1台あたり置き換え前後の使用電
力によるライフタイムの平均CO2排出量

自社バリューチェーンのCO2排出量と削減量(トン)

■CO2削減貢献量の算定式

活動量 活動量あたりの削減量 CO2排出関連数値・係数 期間

■ベースライン(比較対象)
新製品と同等の機能を持つ電化製品の、販売地域ごとの普及状態※3での市場の平均的な機器が消費する生涯(ライフタイム)電力量のCO2換算量。

※3 例:LEDの国別の普及率 など

■定量化の範囲(考え方と合理性)

使用時。電化製品の平均的なCFPは「使用時」が支配的※4であり、
置き換え前後の使用時以外のCO2排出量の差分の影響はカットオフできると当社判断。

※4 電化製品のバリューチェーンでの排出量で「使用時」は平均で約8~9割を占める

■活動量
新製品の販売地域ごとの置き換え前の状況(普及率等)に応じた年間販売数量

■活動量1単位あたりの削減貢献量(原単位)
販売地域ごとの当該製品と比較対象の生涯(ライフタイム)使用での消費電力量※5のCO2換算量の差分。

※5 例:設計上の定格電力×年間の使用時間など

■期間(フロー方式:販売年度にその生涯分の排出量を一括計上)

  • 製品ごとに設定。補修部品の保有年数(7~10年)や基本性能が維持できる
    稼働時間など。
  • 期間中、CO2削減効果は持続する。
  • 電化製品は適切な使用やメンテナンスにより耐用年数は伸びるため、7年から10年間という期間は保守的な見積りとして当社判断。
  • 耐用年数の伸長によって資源有効利用によるCO2削減効果も期待される。

ソリューション 熱交換気システム

主な削減対象となる製品ライフステージ

原材料・素材 製造 輸送 使用 廃棄・リサイクル

主な販売地域:日本、中国、北米、欧州

■概要
民生部門/業務部門の脱炭素化には居住空間やオフィスの冷暖房負荷低減が重要であり、熱交換気システムは室内からの熱ロス低減、空質維持による快適性を同時に実現する。換気時に熱交換素子で室内外の熱を交換して、室内に送り込む空気の温度をあらかじめ冷やす/温めることで冷暖房負荷を低減し、さらに空気清浄も付与した高機能システムであり、高い気密性が求められる日米欧や中国などの住宅や店舗、ビルなどで幅広く利用可能。

■削減貢献メカニズム
同じ条件下の室内空間において、本システム導入により市場平均的な換気方式と比べて空調機器の運転で消費される電力・燃油の使用が削減された量のCO2換算値。

熱交換気システムの仕組み(冬季)

※熱交換率は機種によって異なります

換気由来の熱ロス分を補ったエネルギーのCO2排出量

■CO2削減貢献量の算定式

活動量 活動量あたりの削減量 CO2排出関連数値・係数 期間

■ベースライン(比較対象)
現在の市場平均的な通常換気方式のシステムを導入した住宅などでの空調機器の運転による販売地域ごとの消費電力量と燃油使用量のCO2換算値。

■定量化の範囲(考え方と合理性)

使用時の差分。換気機器本体同士のCFP※1では使用時の比率が支配的(約8割)であり、かつ使用時以外の影響は同等であることから、カットオフできる水準と当社判断。

※1 CFP(Carbon Footprint of Products):製品・サービス(1単位)が原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出する温室効果ガス排出量のCO2換算値

■活動量
本システムの中核機能である熱交換気ユニットの年間の販売台数

■活動量1単位あたりの削減貢献量(原単位)
日本の住宅の居住空間における通常の換気システムを使った平均的な空調負荷量を、販売地域ごとに当社シミュレーションによって算出。
通常の換気方式と熱交換方式における居住空間の空調機器の運転で消費されるエネルギー量の差分に、販売地域ごとの電力や燃油※2のCO2排出係数を乗じる。

※2 燃油:灯油を採用

■期間(フロー方式:販売年度にその生涯分の排出量を一括計上)

  • 熱交換気ユニットの設計寿命
  • 期間中、CO2削減効果は持続する。

その他 真空断熱ガラス

主な削減対象となる製品ライフステージ

原材料・素材 製造 輸送 使用 廃棄・リサイクル

販売地域:日本

■概要
民生部門や業務部門等の脱炭素化には、建築物の断熱性向上によって室内温度を維持して居住空間やオフィス等における冷暖房負荷を低減することが有効な手段である。当社試算では日本の平均的な戸建住宅におけるすべての熱ロス量のうち「窓」からの熱ロスは30-40%におよぶ。本製品は薄さと高断熱性を同時達成したことで、既存の建築物の開口部(窓)にもそのまま採用できるため、既存の建築物をはじめ幅広い室内空間に対して適用拡大するポテンシャルを持つ。

■削減貢献メカニズム
真空断熱ガラスは単板ガラスやLow-E複層ガラスと比較して大きく断熱性に優れる※1ため、これを建物の窓材に採用することで、空調機器の運転に必要な電力を削減した量のCO2換算値。

真空断熱ガラスの導入有無による住宅の冷暖房エネルギーのCO2排出量とガラスのCFP※2の比較

■CO2削減貢献量の算定式

活動量 活動量あたりの削減量 CO2排出関連数値・係数 期間

■ベースライン(比較対象)
日本の各住宅における空間全体の空調運転に消費される電力量のCO2換算値。
本製品の導入が、リフォーム時は単板ガラス、新築時はLow-E複層ガラスと設定。

■定量化の範囲(考え方と合理性)

  • 使用時:住宅全体の冷暖房で消費される電力に起因したCO2排出量。
  • ガラスのCFP※2:真空断熱ガラスのCFP※2は単板/Low-E複層ガラスより大きい。
    (ただし使用時はガラスからのCO2排出量はゼロ)真空断熱ガラスと、単板ガラスのCFP※2の差は削減貢献量の31%、Low-E複層ガラスの差は同じく19%を占めることから、CFP※2の差はカットオフせずに削減貢献量より減ずる。

■活動量
年間の真空断熱ガラスの販売量(m2

■活動量1単位あたりの削減貢献量(原単位)

  • 使用時:各ガラス窓ごとに住宅の冷暖房で消費される電力量を算出した差分
    ※日本建築学会の標準気象データと冷暖房熱負荷計算ソフトを用いて木造2階建/床面積120m2の戸建住宅の年間消費電力量を当社でシュミレ―ションして試算
  • ガラスのCFP※2:各ガラスごとに日本板硝子協会データより当社算定

■期間(フロー方式:販売年度にその生涯分の排出量を一括計上)

  • 真空断熱ガラスの設計寿命。
  • 期間中、CO2削減効果は持続する。
  • 日本の住宅の寿命は一般的にさらに長いと考えられるため、CO2削減効果を保守的に見積っていると当社判断。

※2 CFP(Carbon Footprint of Products):製品・サービス(1単位)が原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出する温室効果ガス排出量のCO2換算値

その他 宅配ボックス

主な削減対象となる製品ライフステージ

原材料・素材 製造 輸送 使用 廃棄・リサイクル

販売地域:日本

■概要
日本の家庭部門では電子商取引の増加と生活様式変化に伴って不在時間が増加し、宅配便の再配達回数が増えることによって宅配事業者の物流負荷量が増加している。家庭に宅配ボックスを設置することで、再配達が回避され、荷物を受け取る人の煩わしさの解消や宅配事業者の労働時間短縮と同時に、配達にかかる車の燃料等のエネルギーの消費に伴うCO2排出量が削減され、地域物流網の負荷量軽減と低炭素化に貢献する。

■削減貢献メカニズム
再配達の回避によって宅配事業者が再配達のために車で移動するために用いるエネルギー消費(ガソリンなどの化石燃料の燃焼)のCO2排出量を削減する。

宅配ボックス1台有無によるCO2排出量
(再配達による宅配事業者の車両からのCO2排出量と宅配ボックス自身のCFP※1

■CO2削減貢献量の算定式

活動量 活動量あたりの削減量 CO2排出関連数値・係数 期間

■ベースライン(比較対象)
宅配ボックス非設置の住宅で受取人が不在時、宅配便を受け取れなかった場合宅配事業者が再配達に要する平均エネルギー使用量のCO2換算量

■定量化の範囲(考え方と合理性)

使用時(宅配ボックスの使用による宅配事業者の配達にかかる削減貢献量)。
宅配ボックスは使用時の排出量はゼロだが、CFP※1全体では削減貢献量に対して20%(当社試算)あり、これは追加的な影響であるため削減貢献量より減ずる。

■活動量
年間の宅配ボックスの販売台数

■活動量1単位あたりの削減貢献量(原単位)

  • 再配達1回あたりのCO2削減貢献量:0.46kg(国土交通省実証データ)
  • 再配達回数:29.5回/年(当社実証データ。福井県あわら市103世帯4か月間の実測より)

■期間(フロー方式:販売年度にその生涯分の排出量を一括計上)

  • 宅配ボックスの設計寿命。
  • 期間中、CO2削減効果は持続する。
  • 本製品は適切な使用やメンテナンスによって耐用年数はさらに伸びることから設計寿命を採用することはCO2削減効果の保守的な見積りであると当社判断。

※1 CFP(Carbon Footprint of Products):製品・サービス(1単位)が原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出する温室効果ガス排出量のCO2換算値

削減貢献量の取り組み

現状、GHGプロトコルは、自社の事業活動に伴うCO2排出量を計測できますが、事業を通じた社会への貢献(機会:ビジネスチャンス)は含まれません。一方、削減貢献量の考え方はあるが、統一基準が未確立、社会の認知度が低いのが実情です。よって、企業の脱炭素貢献が適切に評価される環境を整備することで、そのための企業努力(技術開発・イノベーション)を促進し、カーボンニュートラル社会実現の加速に寄与していく仕組みづくりが必要です。環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」(PGI)は自社だけでなく社会全体のCO2排出量削減を対象として目標設定しており、企業の脱炭素貢献を適切に評価する「モノサシ」としての削減貢献量の意義や認知拡大を、同じ志を持つ企業、金融機関とでグローバルに進めることが重要です。そこで、グローバルな統一基準化・認知拡大・周知に向けて以下の活動を推進中です。

▪標準化活動

■IEC(国際電気標準会議)
2023年3月、IEC規格の標準化活動が日本提案により始まりました。具体的には、新技術(AI、IoT、デジタルツインなど)の削減貢献量の算定、算定方法の要求事項の提供、コミュニケーションと情報開示の要求事項の確立を行い、国際規格番号:IEC63372、タイトル:「電気電子製品およびシステムからの温室効果ガスの排出、排出削減、削減貢献の算定とコミュニケーション -原則、方法、要求事項およびガイダンス」を作成しています。当社グループはこの初期段階から参画して取り組んでいます(規格発行:2024年予定)。

■WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)
WBCSDは、持続可能な開発を目指す先進的な企業約200社が加盟するグローバルな組織で、持続可能な社会への移行に貢献するために協働しています。パナソニック ホールディングス(株)(PHD)はWBCSDが目指す理念に共感し、グループのPGI活動を加速させるためWBCSDに加盟しました。また、2023年3月に発表した「削減貢献量ガイダンス」の発信に関与するとともに、現在、改定版の策定に向けて連携中です。

■GXリーグ
PHDは、GXリーグにおける取り組みの1つである「市場創造のためのルール形成」において、PHDを含む6社のリーダー企業および73社のメンバー企業とともに『GX経営促進ワーキング・グループ(以下、「GX経営促進WG」)』に参画しました。GX経営促進WGでは、世界全体のカーボンニュートラル実現に向けて、日本企業が市場に提供する製品・サービスによる排出削減等が適切に評価される仕組みを構築することを目的とし、2023年3月に「気候関連の機会における開示・評価の基本指針」を公表しました。

※GXとは、「グリーントランスフォーメーション」の略。2022年2月に経済産業省 産業技術環境局が「GXリーグ基本構想」を発表。GXに積極的に取り組む「企業群」が、官・学・金でGXに向けた挑戦を行うプレイヤーとともに、一体として経済社会システム全体の変革のための議論と新たな市場の創造のための実践を行う場として「GXリーグ」を設立。

▪国際的イベントでの削減貢献量の訴求

■国際GX会合
2022年10月、経済産業省主催の国際GX会合にて、企業の脱炭素貢献を適切に評価する削減貢献量の意義や認知拡大を、グローバルに進めることの重要性について言及しました。

■ICMA(国際資本市場協会)
2022年11月、国際資本市場協会(ICMA)と日本証券業協会(JSDA)が共催する「Annual Sustainable Bond Conference 2022」にて、事業による社会課題解決という経営基本方針の下、当社グループは喫緊の最優先事項として地球環境問題の解決を掲げ、事業を通じて削減貢献を拡大する意志を表明しました。その上で、環境対応車向けの電池を一例に挙げ、生産拡大に伴って増大するCO2排出量の抑制(=リスク)の視点だけでなく、環境対応車の普及に伴う削減貢献量の拡大(=機会)が評価される意義を強調しました。

■COP27(第27回気候変動枠組条約締約国会議)
2022年11月、当社グループは削減貢献の意義をテーマにしたセミナーに登壇しPGIの背景・目的と削減貢献量の意義と課題について発表し、他の登壇者とともに、Green Wash(企業がうわべだけ環境保護に熱心にみせること)とされないよう、いかに削減貢献量の測定方法を確立し透明性と信頼性を確保した上で企業評価の機会として評価されるか、議論を交わしました。

■CES2023
2023年1月、CES2023のプレスカンファレンスにて、削減貢献についてWBCSDやIECに参画し、算定方法の規格化を進めていることを説明し、出席者にも賛同を呼び掛けました。