8-1. 立志伝の人

幾度もの困難を見事に克服し、経営者としてまれに見る成功を収めてきた松下幸之助を、いつしか世間は「経営の神様」と呼ぶようになっていた。しかし、飽くなき向上心が身上である幸之助には、まだまだ満足という気持ちはなかった。

経営活動を通し、そしてPHP研究を通して、いつしか幸之助は、「人間とは何か」という根源的なテーマと向き合っていた。これこそ、経営活動を通して半世紀もの間、追い求めてきたものではないか。 経営者としての成功が揺るぎないものになればなるほど、探求心は募った。そして昭和47年、長年、思索してきた「新しい人間観」について、一つの答えを一冊の本にまとめた。 書き終えたとき「自分は結局このことが言いたかったのだ。自分の考え方の根本はこれに尽きる」とさえ思った著書、「人間を考える----新しい人間観の提唱」である。