静電気の除去に効果的な装置とは?静電気対策にはミストシステムを活用しよう
作成日:2024年10月15日
乾燥しがちな冬の屋内施設や、複数の機械を扱う製造現場などにおいては、静電気によってさまざまな弊害がもたらされます。一方で、静電気を対策するには具体的に何をすれば良いのかわからないという方も多いのではないでしょうか?
今回は、静電気の発生メカニズムから、一般的な静電気対策の方法と、有効な静電気予防・除去装置を紹介します。
静電気のメカニズム
静電気の対策方法を体系的に理解するために、まずは静電気のメカニズムについて解説します。
静電気とは
物質を構成する原子は、プラスの電荷を持った陽子とマイナスの電荷を持った電子、電荷を持たない中性子で構成されています。通常、電子と陽子の数は同じであり、原子全体でみると電気的に中性な状態です(図1)。
電子は陽子との間に働く引力(クーロン力)で捕縛されています。しかしながら、他の原子との作用で原子から電子が離れていく、もしくは他の原子から電子を奪うことがあります。この電子の授受によって電子数・陽子数のバランスが崩れ、電子を受け取った原子はマイナス、電子を失った電子はプラスに帯電します(図2)。

静電気とは、以上のように電子数・陽子数のバランスが崩れて帯電した状態、または帯電した電気そのものを意味します。
原子で構成されるマクロな物質も、電子数と陽子数のバランスが崩れることで帯電します。ここで注意すべきは、静電気は電気的に不安定な状態であるということです。
静電気の発生原因
先ほど解説したように、静電気は物質間で電子を授受することで生じます。では、具体的にどのような状況で電子の授受が発生するのでしょうか?具体例を3つ解説します。
①接触帯電
物質がただ接触するだけでも、静電気が発生することがあります。これが「接触帯電」です。先に解説したように、原因は電子を引っ張る力の差異です。普段気づいていないだけで、我々はさまざまなものに触れる度に電子のやり取りをしているのです。
②剥離帯電
接触している物質が剥離する際にも、静電気が発生することがあります。
異なる2つ以上の物質が接触しているとき、全体で電荷のバランスを取るために電子が配置を変え、その過程で物質間を電子が移動します。この接触している物質を切り離すことで、個々の帯電した物質が残るのです。これを「剥離帯電」と呼びます。
③摩擦帯電
「摩擦帯電」は、①接触帯電と②剥離帯電を組み合わせた帯電方法です。つまり、異なる物質が接触と剥離を繰り返すことで電子をやり取りする方法です。①接触帯電、②剥離帯電と比較して激しく電子を授受することができ、帯電量が多いことが特徴です。
静電気による弊害
静電気を放置すると、人体だけでなく機械や製造品にさまざまな弊害が生じます。静電気によってもたらされる主な弊害は次の3点です。
静電破壊
電子機器の中には、微小な電気が流れるだけで異常をきたすデリケートなものがあります。「静電破壊」とは、静電気に起因して電子機器が故障することを指し、機器の故障に直結するため徹底的な対策が必要です。
電磁ノイズによる機器の誤作動
静電気(厳密にいえば放電)に起因して、機器が誤作動することがあります。これは、電子回路の周辺で放電が起こると、電磁誘導によって電子回路に電磁ノイズが走るためです。
粉塵や埃などの付着
反対の電荷を持つ者同士はクーロン力によって引き合う性質があります。下敷きを頭に擦りつけて持ち上げると髪の毛が逆立つのは、このクーロン力によって下敷きと髪の毛が引き合っているからです。同様に、静電気によって粉塵や埃などの軽い物体が付着することがあります。
半導体やフィルムなどのデリケートな製品を扱う場合、粉塵や埃などの付着は致命的な品質低下につながります。取り扱う機器・製品によって、厳格に静電気対策を施すべきか否か判断しましょう。
一般的な静電気予防・対策
続いては、一般的に工場で実施されている静電気予防・対策の方法を4つ紹介します。
- ①アースを取る
- ②加湿する
- ③除電装置(イオナイザー)を使う
- ④帯電防止剤を塗布する
①アースを取る
物体をアースに接続することで、物体とアースが電子のやり取りをし、電気的に中性な状態を維持します。
ただし、この方法は導体にしか効果がありません。絶縁物の静電気を対策したい場合は、この後紹介する別の対策を試してみましょう。
もう一つ注意が必要なのは、アース箇所の定期的なメンテナンスです。アースは導体にしか効果がないとお伝えしましたが、アース箇所が絶縁物で部分的に汚れていても効果がありません。既にアースで静電気対策をしているという場合は、今一度アース箇所を確認してみてください。
②加湿する
多くの人が「夏よりも冬のほうが静電気が起こりやすい」と経験的に知っていることでしょう。その理由は湿度にあります。
「湿度が高い」とは、(気温によりますが)空気中に含まれる水分量が多い状態を指します。このとき、物体表面には高い確率で水分子が接触しています。実は、水には電気を通す効果があり、物体周囲が水分を多く含む空気である場合に、空気を通して静電気を放電することができ、静電気の予防ができます。
下図は、各種繊維素材で構成されるシャツの帯電量と相対湿度の関係を表したものです(※1)。湿度が高くなるほど帯電量が小さくなる、つまり静電気が発生しにくい状態となることがわかります。

③除電装置(イオナイザー)を使う
除電装置(イオナイザー)とは、静電気を除去したい対象物にプラスもしくはマイナスに帯電したイオンをぶつけることで、静電気を中和する装置のことです。一般的なイオナイザーは、コロナ放電によって装置周辺の空気をイオン化し、送風などの手段でイオンを衝突させる方式を採用しています。
イオンは電気的に不安定な状態であるため、積極的に電子の授受を行い中性に戻ろうとします。つまり、プラスイオンがマイナスに帯電した物体に触れると余分な電子を奪い、マイナスイオンがプラスに帯電した物体に触れると電子を分け与えます。
下図は、イオナイザー(送風タイプ)の使用イメージです。作業者の手や部品から静電気を除去し、異物付着や静電破壊を抑制します。

④帯電防止剤を塗布する
静電気を予防するための薬剤として、帯電防止剤というものもあります。界面活性剤を含む薬剤であり、物体の表面に塗布することで表面に親水性を持たせ、水分子が付着しやすくなります。水分子が付着すると空気中に電気を逃がしやすくなるため、加湿と同様に静電気予防になるのです。絶縁体であっても効果を発揮するため、プラスチックや合成繊維などの材料に有効な静電気対策です。
ただし、帯電防止剤は時間が経つと剥離して効果を失ってしまうため、定期的に塗布しなおす必要があります。
静電気対策に効果的な装置
先述の対策方法を踏まえ、ここでは静電気の予防・対策に有効な装置を2種類紹介します。
加湿装置
その名のとおり加湿によって静電気を予防・対策する装置ですが、加湿装置には蒸気式、気化式、水噴霧式の3種類があります。各方式の特徴について解説します。
①蒸気式
蒸気式は、水蒸気を用いて加湿を行う方式です。装置内のタンクに水を蓄え、この水をヒーター加熱して水蒸気を生成します。
蒸気式は加湿能力が高いだけでなく、ヒーター温度の調整によって加湿量を容易に制御できます。また、熱プロセスを挟むため装置内での細菌・カビの繁殖を抑制できることも大きなメリットです。一方で、水蒸気に触れると火傷のリスクがあること、ヒーターを使うため他方式よりも消費電力が大きいこと、CO2排出量が多いことがデメリットです。
②気化式
気化式は、加湿装置内のフィルタに水をしみこませ、このフィルタに風を当てて気化させることで加湿を行う方式です。
ヒーターを使用しないため、蒸気式と比較して消費電力を抑えることができ、火傷のリスクもありません。ただし、メンテナンスを怠ると細菌・カビが繁殖してしまうこと、他方式と比較して加湿能力が低いことに注意が必要です。
③水噴霧式
水噴霧式は、ミストの噴射により加湿を行う方式です。工場への適用例は下の写真のとおりです。天井から吊り下げたノズルからミストを噴射し、室内へ拡散させています。

水噴霧式は蒸気式に匹敵する高い加湿性能を誇りつつ、消費電力を抑えることもできる加湿方式です。ただし、ミストの粒径が大きい場合、局所的に水滴が残って人やものが濡れてしまう恐れがあります。
加湿装置の特徴
加湿したい空間の広さや、取り扱う機器・製品の種類によって適切な加湿方式を選択する必要があります。
ただし、いずれの加湿方式にも共通していえることは、個別のものではなくエリア単位での静電気予防・対策が可能ということです。静電気の管理が容易になるためこれは大きなメリットだといえます。また、空気中の水分が埃をキャッチして舞うのを防ぐ、感染症予防に効果があるなど、副次的な恩恵もあります。
しかしながら、過剰に加湿してしまうと局所的に水が溜まる・濡れる恐れがあります。加湿装置を使用する場合は、適切な空調管理を行うようにしましょう。
除電装置(イオナイザー)
先述のとおり、イオナイザーは発生させたイオンを対象物にぶつけることで除電を行う装置です。イオンの生成には主に電極からの軽微な放電(コロナ放電)を用います。
イオナイザーの特徴
イオナイザーの特徴は、特定の対象物に対して確実に除電を行うことです。前項で解説した加湿装置はエリア単位で静電気対策を行うものですが、加湿エリア内で完全に静電気を防止・除去できるとは限りません。
これに対し、イオナイザーは除電できる範囲は加湿装置と比較して狭いものの、特定の対象物にイオンを十分に接触させ、確実に除電を行います。また、加湿装置と比較して除電効果がすぐに表れるのも魅力の一つです。
ただし、これはイオンが帯電している物体に十分に衝突しなければ効果を発揮しないことと同義です。イオナイザーと除電対象物との距離・位置関係によってはうまく除電できない可能性があり、注意深く除電時の条件を管理する必要があります。
加湿装置と除電装置(イオナイザー)のメリット・デメリット
加湿装置とイオナイザーのメリット・デメリットを下表にまとめました。
それぞれの特徴を一言で表すと、「広範囲で静電気を予防する加湿装置」、「特定の対象物を除電するイオナイザー」となります。また、加湿装置は水が溜まらないように空調管理が必須になること、イオナイザーは対象物と装置の位置関係を気にしなくてはならないことを覚えておきましょう。
加湿装置 | 除電装置(イオナイザー) | |
概要 |
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メリット |
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デメリット |
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加湿による静電気対策には「シルキーファインミスト」がおすすめ
静電気対策におすすめの加湿装置として、弊社の「シルキーファインミスト」とその特徴を紹介します。
速やかに蒸発する微細なミスト
シルキーファインミストは、先に紹介した水噴霧式の加湿装置です。さらに細かく分けると、ミストには水のみで生成される一流体ミストと、圧縮空気と混合して生成される二流体ミストがあります。
イメージは下図のとおりです。二流体ミストは、一流体ミストに比べて粒径が小さいという特徴があります。

シルキーファインミスト(二流体ミスト)
水圧に空気圧を混合し微細化する方式
微細なミストのため蒸発しやすく、濡れにくい

一流体ミスト
⽔圧のみで微細化する⽅式
ミストが粗いため蒸発しにくく、濡れやすい
当社のシスキーファインミストは、この二流体ミストと独自のノズル構造により、平均ミスト粒径約6μmを実現しています。この粒径のミストは、温度28℃・相対湿度60%の一般的な労働環境にてノズルから約70cmの位置でほぼ完全蒸発します(下図参照)。

省エアによる省エネ
当社の二流体式ミストシステムは液加圧方式を採用しています。サクション方式と比較して必要になるエアが少ないというメリットがあるため、省エアによる省エネルギー化が期待できます。
まとめ
静電気対策に有効な装置の種類を、静電気のメカニズムを交えて解説しました。解説内容をまとめると次のとおりです。
- 静電気とは、電子と陽子のバランスが崩れて帯電した状態である。
- 静電気を放置すると、電子機器の静電破壊や誤作動、埃などの付着による製造品の品質低下を招く可能性がある。
- 静電気対策には加湿装置とイオナイザーが効果的であり、加湿装置はエリア単位での静電気予防、イオナイザーは特定の対象物の除電に有効である。
- パナソニックのシルキーファインミストは、直径約6μmの微細なミストで加湿を行う。この微細なミストはノズル付近ですぐに蒸発するため、人員や設備が濡れるリスクが低く、幅広い現場に適用可能な静電気対策装置である。
皆様が静電気対策を講じるうえで本記事が参考になれば幸いです。パナソニックのミストシステムに関するお問い合わせは、下記問い合わせフォームよりお願いいたします。