精密機械の静電気の除去方法は?静電気が及ぼす影響と対策

作成日:2024年9月27日

精密機械はとても繊細なので、少しの静電気でも機械に悪影響を与える恐れがあります。そのため、工場内の静電気はできるだけ除去しなければなりませんが、一体どうすればよいのでしょうか?

今回は、静電気の概要、その影響について説明し、静電気除去のためにどのように対策すれば良いのかを解説します。また、静電気除去に効果的な当社パナソニックの「シルキーファインミスト」を紹介します。

静電気とは

そもそも静電気とは何でしょうか?まずは、静電気の概要と測定方法について解説します。

静電気の概要

まず、下の図1を見てください。

この図には、5つの陽子と5つの電子が描かれています。陽子とは、正の電荷を持つ粒子で、原子の性質に大きく関係します。また、陽子の周りには、電子が存在しています。電子は、負の電荷を持つ粒子で、静電気に限らず、電気に関わる現象すべてに関わる粒子です。なお、ここで電荷とは、電気を帯びた粒子のことを指し、さらに正の電荷を持つものを正電荷、負の電荷を持つものを負電荷といいます。

では、図2を見てみましょう。図2は、中和状態にあった2つの原子が接触した様子を表しています。

2つの原子が接触すると、一方の電子がもう一方の原子へ移動することがあります。その結果、左の原子は、5つの陽子と4つの電子で構成されるようになりました。すると、陽子の方が電子より数が多いので、原子は全体として正に帯電します。なお、帯電とは電気を帯びることを意味する言葉です。

一方、右側の原子は、5つの陽子と6つの電子で構成されるようになります。この場合、全体として負に帯電します。ここで、正に帯電した原子をプラスイオン、負に帯電した原子をマイナスイオンといいます。また、このように、帯電した状態を「静電気」といいます。

静電気は、日本の夏のように湿度が高い状態では、すぐに空気中に放電するので、帯電した状態が長続きしません。しかし、冬のように乾燥した空気ではあまり放電しないため、身体が帯電した状態が続きます。そのときに、ドアノブのような電子が移動しやすい物質に触れることで、身体とドアノブの間に電子の流れ、すなわち電流が生まれ、バチッと痛みを感じるのです。

物質がどれだけ帯電しやすいかは、その物質によって変化します。以下の図は物質の帯電のしやすいさについて説明しています。図1の場合、正電荷である陽子と負電荷である電子の数は等しいです。このようなときは、全体として原子は電気を帯びていません。このような状態を中和状態といいます。

この図のとおり、左側に進むほど正極性(正に帯電しやすい性質)を持ちます。つまり、電子を放出しやすいです。一方、右側にいくほど負極性(負に帯電しやすい性質)を持ちます。つまり、電子を取り入れやすいです。

先ほど、静電気が発生するには、原子の接触が必要だとお伝えしました。この接触の方法は、次の6種類に分けられます。

静電気の測定方法

静電気の測定方法は主に2つあります。

  • 電圧を測定する
  • 電荷量を測定する

これらの手法を利用することで、工場にどれだけの静電気が存在しているかを測定できます。また、静電気除去対策の前後の測定結果を比較することで、その手法がどれだけ有効であるかを分析できます。

電圧を測定する

電圧を測定することで、測定する物質がどれだけ帯電しているかがわかります。電圧とは、電子を流す度合いを表し、その値が大きいほど電子をよく流します。単位はV(ボルト)で、身近な例でいうと、アルカリ乾電池の電圧は1.5Vです。

電荷量を測定する

静電気の測定には、電荷量が使われることもあります。電荷量とは、その名のとおり、物質にどれだけの電荷が帯電しているかを測定する手法です。この手法は測定する物質がある程度の大きさを持つ場合に利用できます。また、理論的には導体であっても、絶縁体でも測定が可能です。なお、導体とは電気をよく通す物質で、絶縁体とは、逆に電気が通りにくい物質を意味します。

静電気が精密機械に及ぼす影響

先ほど解説したように、静電気は物質が帯電している状態を表す用語です。では、静電気は製造現場ではどのような影響を与えるのでしょうか?静電気が精密機械に及ぼす影響は次のとおりです。

  • 放電現象によるトラブル
    • 静電気破壊(ESD破壊)
    • 誘電による放電
    • 火災
  • 力学現象によるトラブル
    • 静電気による斥力、引力の発生
    • ゴミの付着

このように、静電気が精密機械に及ぼす影響は、「力学現象によるトラブル」と「放電現象によるトラブル」に大別されます。また、それぞれのトラブルはさらに複数に分けられます。それでは、それぞれの影響について具体的に解説します。

放電現象によるトラブル

まず、放電現象によるトラブルについて解説します。

放電とは、物質から電子が放出される現象です。意図的でない電子の流れが発生することによって、精密機械に大きな影響を与えます。

静電気破壊(ESD破壊)

ESD(Electrostatic Discharge)とは、帯電した物体同士が接触することで発生する静電気の放電のことです。帯電した人間や導体が偶然、半導体素子に触れ、また、半導体素子が接地(アース)されていた場合、半導体素子に意図しない電流が一気に流れます。

このような状況になってしまうと、精密機械である半導体素子が完全に破壊されてしまう可能性があります。静電気破壊は、半導体素子に触れる対象別に3つに分類されます。

  • 人体帯電モデル
  • マシンモデル
  • デバイス帯電モデル

誘導による放電

物質が過剰に帯電していなくても、放電現象が発生する場合があります。

帯電した物質の近くに導体を置くと、誘導現象というものが発生します。誘導現象とは、絶縁体が電場の影響によって、内部で正電荷と負電荷に偏りが生じ、全体として電圧を持つようになる現象です。ここで、電場とは、電荷が空間に及ぼす影響を表したものです。

このようなときに、絶縁体をアースすると、放電が確認されることがあります。

火災

静電気の量が多くなり、帯電した物質が増えると、放電時に火花が発生することがあります。この発生した火花によって、ガソリンなどの危険物に引火した場合、火災が発生します。このように、危険物を扱う工場はさらなる注意が必要です。

力学現象によるトラブル

静電気はこれまで解説したような電気現象によるトラブルだけでなく、力学的なトラブルの原因にもなります。なぜなら、電荷の間にはクーロン力という力が発生するからです。

クーロン力とは、電荷の間にはたらく力で、同じ符号の電荷同士の場合は反発し、異なる電荷の間には引力がはたらきます。たとえば、磁石のN極とS極のようなものだと考えれば想像しやすいでしょう。クーロン力は電荷の大きさが大きいほど、また、電荷同士の距離が近いほど大きな力を発生させます。

他にも、帯電していない物質でも力が発生する場合があります。それが、グレーディエント力(分極力)です。

上の図のように、帯電していない物質でも物質内部で電気的に偏りが生じた結果、引力が発生する場合があります。

静電気による斥力、引力

光ファイバーや合成樹脂、紙片などが同じ符号の電荷をもつと、互いに反発するようになります。また、逆に異なる符号の電荷を近くに置いた場合物質同士で近づき、くっついてしまう場合があります。このような、意図しない斥力や引力は製品の品質に悪影響を与えます。

ダストの付着

ゴミ、ダストなどの粒子が静電気により精密機械に付着してしまいます。これにより、精密機械に問題が発生する可能性があります。下の図のように、帯電量が多い物体の方がより付着数も多くなり、それだけ精密機械に悪影響を与えます。

精密機械から静電気を除去する方法

ここまで解説したように、静電気は精密機械に大きな悪影響を与える現象です。では、静電気はどのように対策すればよいのでしょうか?ここでは、精密機械から静電気を除去する方法を説明します。精密機械から、静電気を除去する方法は主に以下の4つです。

  • 接地(アース)
  • 除電
  • 帯電防止剤
  • 加湿

接地(アース)

最も一般的な対策としては、接地(アース)をすることです。アースとは、物質に存在する電荷を外部へ逃がす方法です。これにより、物質の帯電を防げます。

たとえば、固定された導体にアースをすると、その装置は帯電しづらくなります。他にも、人体が帯電することを防ぐためにストラップや、腕時計、靴型のアースの装置が存在しています。

しかし、絶縁体などの電子があまり移動しない物質には不向きです。また、アースは物質の一部分に固定しなければならないため、工場内で移動する装置には不向きです。

除電

除電とは、帯電している物体にさらに、電荷を加えることで全体として電気を中和する方法です。たとえば、除電したい対象が正に帯電していた場合はマイナスイオンをくっつけることで中和します。一方、負に帯電している物質にはプラスイオンをくっつけることで中和します。

帯電防止剤

界面活性剤のような帯電防止剤を塗ると、帯電を防ぐことができます。たとえば、搬送装置などに塗っておくと有効です。帯電防止剤を塗ると、塗った物質の表面の摩擦係数が小さくなり、摩擦による静電気の発生が抑えられます。また、物体表面の伝導性が高くなり、溜まった電荷を外に逃がしやすくなるという効果があります。

一方で、帯電防止剤は使用するにつれて剥がれていくため、時間が経つと効果が薄れてしまいます。また、移動する部品に塗ることはできません。

加湿

静電気は、空気が乾燥していると発生しやすいです。実際、冬のような乾燥した季節で静電気はよく発生します。なぜなら、湿度が高い場合は物質表面の水分子からの放電によって、物質の帯電が抑えられているのに対し、空気が乾燥しているとこのような水分子の放電が行われないからです。

絶縁体の場合は、ほとんどが空気中の水分を伝って逃げていく。

そのため、加湿して、空気中の水分を増やすことで、静電気の起こる確率を減少させられます

一方、加湿しすぎによる装置の腐食や結露には注意が必要です。また、過度な加湿は作業員の不快感にもつながります。

パナソニックの「シルキーファインミスト」で静電気除去しよう

このように、静電気対策には複数の方法があります。その中でも、特に加湿を効率的に行えるのが、当社パナソニックの「シルキーファインミスト」です。最後に、精密機械の静電気除去に有効な当社の「シルキーファインミスト」について解説します。

シルキーファインミストとは

シルキーファインミストとは、当社独自の二流体ノズルから生み出される極微細ミストの技術商標です。

現在、シルキーファインミストはさまざまな分野で活用されています。たとえば、屋外で利用すると水の気化によって夏の暑さを軽減します。また、エンタメ業界ではスモークの代わりに使用されこれまでにない没入感を作り出します。そして、工場内で使用することで、室内が加湿され静電気の対策にも利用されています。

シルキーファインミストで静電気を除去する

先ほども解説したように、静電気除去には加湿が有効です。当社では、模擬実験を通じて空間への放電特性と温度の関係を調査しました。その結果、下の図のように湿度が高いほど、電位の下がり具合が大きいという結果が示されました。

つまり、シルキーファインミストを活用して加湿することで、静電気対策ができます。

シルキーファインミストの導入事例

シルキーファインミストは、さまざまな場所で活用されています。

たとえば、2024年3月には、松下音像科技有限公司 様の工場にシルキーファインミストを納入いたしました。お客様からは「加湿ムラの解消」「ランニングコストの削減」「パナソニックグループの品質や対応の良さ」などが評価されました。

また、他にも「パナソニックコネクト㈱ 佐賀工場 様」、「パナソニック㈱ くらしアプライアンス社 神戸工場 様」にも導入されており高評価をいただいています。

まとめ

精密機械の静電気除去法について解説しました。

静電気は、ゴミの付着や、斥力、引力の発生など精密機械に大きな悪影響を与えます。この静電気を防ぐためには、除電やアース、加湿などがあります。

中でもシルキーファインミストを利用すると工場内を加湿でき、静電気を起こりにくくさせる効果があります。

みなさまもシルキーファインミストを精密機械の静電気除去手法を選ぶ際の選択肢の一つとして検討していただければ幸いです。

参考文献・リンク

二澤正行, 静電気対策マニュアル, オーム社, 1989
Panasonic INDUSTRY, 製造現場の静電気対策徹底ガイド

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