
ミストの冷却効果とは?原理や測定指標、導入事例をわかりやすく解説
作成日:2024年7月20日
ミストの冷却効果として、ミストシャワーの冷却効果についてわかりやすく解説します。冷却効果の指標や、当社パナソニックが提供する最新ミストシステムも紹介します。
ミストシャワーとは?
近年、ミストシャワーが夏季の暑さ対策としても注目されています。 特に屋外の不特定多数の人が集まるような施設や、場合によっては街中や駅前などで、ミストシャワーと呼ばれる冷却装置を目にすることもあるのではないでしょうか?
昨今、夏季の気温が上昇傾向にあり、気温が35℃を超える猛暑日の日数が非常に多くなりました。戸外での活動における快適性の面のみならず、熱中症対策など安全の面からも屋外の暑さ対策が求められています。そのため、水の気化潜熱を利用するミスト冷却が特に注目されているところです。
今回は、ミストシャワーの冷却原理や実証例のみならず、特に従来のミストシャワーを越えた「シルキーファインミスト」と呼ばれる最新のミストシャワーについて解説します。
ミストシャワーによる冷却の原理・実証例
ミストシャワーが駅前などの屋外で稼働しているのをみる機会が増えていますが、どのような装置なのでしょうか?まずは、その冷却の原理と、実証実験の結果について解説します。
冷却の原理
ミストシャワーは、水の気化熱を利用して空間の温度を下げる蒸発冷却法という原理を使用しています。空間でミストを発生させることにより、気化冷却の効果により、噴霧空間の温度が低下することになります。
なお、ミストシャワーには大別して2つの方式があります。
一つは、一流体ミストの呼ばれ、ポンプなどで加圧された水をノズルから噴霧する方法です。ミストの粒径がやや大きく、人によっては水濡れ感を感じることがあります。
もう一方は、二流体ミストと呼ばれエアコンプレッサーで圧搾した空気を使用する方法です。一流体ミストに比べて、より微細なミストを噴霧することが可能です。
ミストシャワー冷却の実証実験
群馬大学では、一流体ミストを使用したミストシャワー冷却に関する屋外実証実験が行われています。同大学の構内で、夏の時期のオープンキャンパスを用いて、屋外噴霧実験を実施しています。
大学構内での水道圧力0.45MPaを利用して、立ち木を使用してミスト用ノズルの噴霧口が、地上高さ2mとなるように複数設置し実験しています(ミスト公称粒径:35μmと45μmの2種類を実験)。
ミスト体験者に対して、水濡れ感を含む体感を調査したところ、ミストの粒径が小さいほど、水濡れ感が小さくなることがわかりました。なお、水濡れ感と快適感の間には、有意な相関があったとされています。ただ、快適感が高いと 感じる人ほど濡れたと感じやすいという傾向も明らかになっていることから、濡れないと快適と感じないという点が、一流体ミストのデメリットとも言えます。
冷却に二流体ミストを活用するメリット
続いては、冷却に二流体のミストシャワーを活用する主なメリットについて解説します。
- 近くでミストを浴びても濡れ感がない
- 風の影響を受けにくい
近くでミストを浴びても濡れ感がない
二流体ミストシャワーのメリットに、近くでミストを浴びても「濡れ感」がほとんどないということが挙げられます。水濡れ感なしで、気化熱による冷却効果を得ることができます。
パナソニックが行った実験では、ザウター平均粒径約6㎛のミストをノズルから約50~60㎝の距離で体感してもらい、快適感を7段階、濡れ感を4段階評価で回答してもらいました(一般回答54名)。その結果、快適感については約95%以上の方から快適側の回答があり、濡れ性については約90%の方から受け入れられるとの回答が得られました。
参照元:極微細化ミスト技術を用いたミスト式冷却機の開発
風の影響を受けにくい
二流体ミストシャワーのもう一つのメリットとして、風の影響を受けにくいという点が挙げられます。一流体ミストは粒径が大きいため、2m程ノズルから離れたところでミストを浴びても濡れを感じてしまいます。濡れないようにするためには、より遠くからミストを浴びる必要がありますが、そうすると風の影響を受けやすくなりミストが殆ど人に届かなくなるということになります。
その一方で、粒径が細かい二流体ミストは50~60㎝の距離からミストを浴びても殆ど濡れ感を感じないため、風の影響をうけにくく、しっかりとミストによる冷却効果を感じることが出来る点がメリットです。
ミストシャワーの冷却効果とその指標
地球温暖化の影響で、東京都では100年前と比べて気温が3℃以上上昇しています。それに比例するように熱中症による死亡率が増加しており、そのうち40%は屋外で発生しています。
また、東京消防庁が発表している統計資料によると、令和5年(2023年)6月~9月の熱中症による救急搬送人員は7,112人と、過去5年で最多となっています。過去5年の推移を見ても、増加傾向になっていることが確認できます。
参照元:熱中症に注意!(東京消防庁)
今後も、地球温暖化による気温の上昇が予想される中、さらなる対策が求められています。
では、冷却効果の高いミストシャワーに関して、その効果の測定指標としてはどのようなものがあるでしょうか?ここでは、暑さ指数WBGTと、標準新有効温度SETについて解説します。
暑さ指数「WBGT」とは
暑い時期の人への影響を示すため、環境省では、暑さ指数(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature)を導入しています。 この指標は、人の熱バランスに影響が大きい「気温
「湿度」「輻射熱」の3つの測定値を取り入れて算出する指標です。アメリカで1950年代に軍隊の訓練で、熱中症を予防することを目的として提案されました。
屋外での暑さ指数WBGTは、次の式で算出されます。
- WBGT(屋外)=0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度
なお、湿球温度、黒球温度および、乾球温度は、それぞれ専用の温度計で測定した数値です。
国際標準化機構(ISO7243)においては、WBGT指数を用いて、作業場の暑熱環境評価を迅速かつ簡便に実施する方法が提案されています。
作業時の暑熱条件がこの基準値を超えていることは、熱中症の発生リスクが高いと判断し、次に示す暑熱対策を入念に行う必要があります。ただし、この基準値は最高直腸温38℃を許容限度とし、通気性があり水蒸気を通す標準的な作業服の着用を前提としています。
標準新有効温度「SET*」とは
標準新有効温度SET*は、広く使用されている体感温度指標であり、実在環境と温熱的に同等な標準環境の気温です。基本的概念は1971年に発表されており、研究者や空調分野の技術者などの間で広く使われています。
SET*は標準新有効温度「Standard new Effective Temperature」の略称であり、気温、湿度、風速、放射に加え、着衣量や代謝量等の人体側の条件、熱収支も考慮しています。
環境省「まちなかの暑さ対策ガイドライン」では、このような体感温度(SET*)を下げる⽅法が提示されています。各対策を組み合わせることで相乗的な効果があるとされています。
なお、当社パナソニックでは、シルキーファインミストを浴びた涼しさの指標としてSET*を採用しており、客観的な実験結果などを表示できるようになっています。
パナソニックの「シルキーファインミスト」で得られる効果
このように効果の高いミスト冷却ですが、当社パナソニックでは、より微細なミストをつくりうる「シルキーファインミスト」を新たに開発しています。ここでは、「シルキーファインミスト」について詳しく解説します。
シルキーファインミストの原理
「シルキーファインミスト」は、パナソニック社の独自技術であり、ミストの粒径が極めて小さいことが特徴です。通常のミストは粒径10~40μm程度が多いですが、約6㎛という超微細なシルキーファインミストを実現しています。
また、シルキーファインミストでは、肌への直接噴霧という新しい冷却方法を提案しており、「気化冷却」と「疑似発汗」の2つの効果を用いています。
気化冷却効果では、ミストが蒸発する際に周囲の空気から熱を奪うことによって気温を下げることができます。
また、疑似発汗効果では、シルキーファインミストの平均粒子径が約6㎛であるため、肌の温度ですぐ蒸発します。その際に、⾝体の熱を奪うことによって冷感をもたらします。
シルキーファインミストの導入事例
続いて、シルキーファインミストを暑さ対策に使用した事例を紹介します。スタジアムの観客席や遊園地の乗り物の待機列など、屋外においてクールスポットが必要な空間に快適な冷却効果を届けています。
ZOZOマリンスタジアム

ZOZOマリンスタジアムでは、スタジアム内の一角にグリーンAC Flexを使用したクールスポットが設けられています。試合のイニング間の休憩や食事を購入する際に、ちょっとした休憩スポットとして大変好評となっています。
同球場では、ミストタイプや扇風機のように冷気を出すタイプのものもある中、より広いエリアを観客が休憩できるクールスポットにしたかったことから、ミストタイプのシルキーファインミストを選んでいただいています。
また、ミストタイプは「水道直結式」と「タンク式」に分かれますが、ZOZOマリンスタジアムではタンク式が必須であり、メンテナンス対応も納得のいくものであったことから「グリーンAC Flex」を設置いただいています。
北千住駅西口美観商店街振興組合

続いての事例は、東京都足立区千住にある、北千住西口美観商店街振興組合様です。北千住駅西口駅前から、日光街道までつながる北千住駅西口美観商店街の両側、約800メートルにミストを設置しています。
お年寄りも小さいお子さんも、安心・安全にお買い物できる商店街づくりに貢献しています。
シルキーファインミストが選ばれる理由
最後に、当社パナソニックの「シルキーファインミスト」が選ばれる理由を紹介します。
「超微細」だから
通常のミスト(一流体ミスト)は水圧のみで微細化する方式ですが、「シルキーファインミスト」では水圧に空気圧を混合し微細化する方式(二流体ミスト)を採用しています。
一流体ミストでは、ミスト粒径30μm程度が多く、噴霧ノズルから170cmをかけて蒸発します。これに対して、シルキーファインミストでは、平均粒径約6㎛と1/5の大きさとなります(粒の容量としては1/125レベルとなり、約1/100の小さなミストです)。
超微細なシルキーファインミストを実現しており、通常のミストでは蒸発が不完全となりやすいのに対して、完全蒸発による冷却効果が非常に大きくなっています。
濡れにくいから
「シルキーファインミスト」は非常に微細ですが、さらに濡れにくいというメリットも有しています。
先ほど紹介した群馬大学での実証実験でも、ミスト粒径が小さい方が、濡れ感が少ないことがわかっています。シルキーファインミストでは、濡れ感がほとんどなく、濡れることを嫌がるお客様にも向いています。そのため、広範囲の場所でご利用いただけます。
導入事例で紹介したZOZOマリンスタジアムにおいても、「ミストが細かく気化が早いため、床面が水でぬれにくく安心・安全」との評価を頂いています。
まとめ
冷却ミストの原理や測定指標、導入事例について解説しました。
特にシルキーファインミストは、従来のミストの欠点である濡れ感などをなくした、画期的な技術です。昨今の地球温暖化などによる暑さ対策、特に開放空間や準開放空間における従来技術を凌駕する試みともいえます。
当社パナソニックが提供する「シルキーファインミスト」は、独自ノズルで微細なミストを噴射するミストシステムです。簡単かつフレキシブルな設置が可能でエネルギー効率が高いことが特徴です。ぜひ導入をご検討ください。