子ども分野・総評(2010年)

選考委員長 明石要一
選考委員長 明石要一(千葉大学)

1 新規助成の公募は4回目・継続助成の募集は3回目を迎える
 本プログラムは、子どもに関わるNPO・NGOの組織基盤強化を目的とした助成事業の公募を2006年に開始し、新規助成は今年で4回目の公募を迎えました。
また、継続助成は、2007年に初めて助成2年目の募集を行った結果、10件の応募があり、3件の継続助成が決定しました。2008年は8件の応募に対し、助成2年目は2件、同3年目は1件、計3件の継続助成が決定するなど、1年だけでなく複数年の継続した助成によって組織基盤強化の取り組みを支える仕組みが定着しつつあります。継続助成は今年で3回目を迎え、助成2年目の応募件数は11件、同3年目は1件、計12件の応募がありました。

2 応募状況
 本年度は新規助成(助成1年目)への応募が157件、継続助成(助成2年目・同3年目)への応募が12件、計169件の応募がありました。新規助成の応募は昨年より13件減少しましたが、継続助成の応募は8件から12件へと4件増加したため、応募数自体はそれほど大きな変化は見られませんでした。地域別に見ると、「関東」(34.3%)と「近畿」(23.7%)が双璧をなし、これらの地域に「東海」(10.1%)、「九州」(7.7%)が続きました。
 応募事業種別では「人材育成」(39.1%)が他に比べ突出しています。これに「事業開発」(16.0%)、「拠点充実」(14.8%)が続きました。
 応募団体の概要では、「NPO法人」が最も多く、76.9%に達しています。これに「任意団体」の21.9%が続き、社会福祉法人・社団法人などの「公益法人」はわずか1.2%に止まりました。本プログラムは応募団体の要件に「民間非営利組織であること」とし、「法人格の有無や種類は問わない」としていますが、NPO法人からの応募の多さが特徴となっています。なお、任意団体からの応募も2割を超えており、今後、組織基盤強化に取り組む任意団体からの応募も期待します。

3 選考プロセス
 新規助成の選考は、毎年応募件数が多いため、二段階で選考を実施しています。一次選考では、選考委員1名と事務局3名の計4名で、各委員が157件の応募に対して、約3週間を掛けてじっくりと読み込み、「応募内容が組織基盤強化の内容に相応しいか」「応募内容が助成の趣旨にあっているか」など、10項目の基準に照らし、書面による評価を行いました。一次選考会に各委員の評価結果を持ち寄り、審議した結果、51件を二次選考の対象としました。各委員からは毎年応募内容のレベルが上がっているとの報告がありました。惜しくも二次選考に進めなかった団体に対しては、昨年と同様、この段階で通知を差し上げました。
 継続助成の選考は、助成1年目、同2年目の助成を受けた団体が応募資格を有し、応募数が少ないため、応募期間を新規助成より遅くし、12件の応募すべてを二次選考の対象としました。
 二次選考では、新規助成で一次選考を通過した51件に対し、NPOの実践者2名、NPO支援組織の職員2名、研究者1名、パナソニックの職員1名の計6名の体制で選考を行いました。各委員が約3週間を掛けて書面を丁寧に読み込み、推薦6件と準推薦4件の計10件の案件を選出し、評価できる点や課題などのコメントを作成してもらいました。その結果、推薦または準推薦があった応募案件は昨年とほぼ同じ34件でした。一次選考を通過した案件の実に7割にあたる応募案件が、推薦または準推薦として取り上げられたことになり、それぞれの応募案件の実力が伯仲していたため、選考委員の評価が割れる状況となりました。
 二次選考会では選考委員6名が集まり、新規助成の34件を対象に、5時間にわたり、集中して審議を行いました。推薦数が多かったものとそうでないものに分けられました。評価が割れた応募案件については、「助成することの社会的意義」「計画性」「実現性」「助成によって期待される効果」について重点的に議論を重ね、内容について再度吟味しました。その結果、12件を新規助成の対象候補とし、事務局による団体への訪問調査を経て、委員長決裁により、8件を助成対象として決定しました。
 継続助成では応募のあった12件に対し、同じ審査方法で審議を重ね、特に、「助成1年目、助成2年目の活動実績や成果」「継続助成することで期待される効果」を重点的に議論し、4件の助成対象を決定しました。

4 選考結果
 新規助成(助成1年目)が8件、継続助成が4件(助成2年目が3件、助成3年目が1件)、計12件を2010年子ども分野の助成対象団体・組織基盤強化事業として決定しました。
 新規助成では、発達障害に関わる若手専門家の育成や、フリースクールのスタッフ・ボランティアの育成など「人材育成」に関する内容が5件、児童・生徒が自らの力で自主性や協調性を育む場の強化など「拠点充実」に関する内容が1件、キャリア教育コーディネーター育成プログラムの開発と実践など「事業開発」に関する内容が2件ありました。また、海外で活動を行うものが2件、国内で活動を行うものが6件ありました。
 「どこでもやっていること」や「誰でもできそうなこと」ではなく、「団体の社会的な意義はどこにあるか」「なぜその活動が必要なのか」「組織基盤のどこを強化することによって何を創造したいか」を明確に示せたものが、選考委員会で注目を集めました。
 継続助成で対象となった4件はいずれも選考委員会で、「これまでの助成事業の実績や成果」「継続して助成されることの効果」が高く評価され、助成されることになりました。この4件ついては委員の評価は一致しました。
 助成3年目の「アクセス―共生社会をめざす地球市民の会」は、組織基盤強化の手法が明確で、その成果を測る指標をしっかりと掲げ、着実に取り組んでいる点が高く評価されました。助成2年目の「こどもコミュ二ティケア」は、1年目の取り組みで達成した点、今後取り組むべき課題が明確に分析できている点が高く評価されました。また、「福岡プレーパーク」は、助成2年目への再チャレンジでしたが、今回の取り組みよって、行政との連携が更に展開されると期待され、評価されました。
 NPOが活動する上で、「ミッション」(使命)と「ビジョン」(目標・目的・計画・立案・効果)、「パッション」(情熱・意欲)が必要と言われます。継続助成を受ける団体は多かれ少なかれ、この三つを兼ね備えていると書面からも感じられました。残念ながら選考に漏れた団体も今一度、この三つを基準にして活動を振り返り、再度チャレンジしていただけることを期待します。

選考委員

明石 要一

千葉大学 教育学部 教授 (★選考委員長)

大森 智恵子

特定非営利活動法人子ども劇場千葉県センター 事務局長

坂口 和隆

特定非営利活動法人日本NPOセンター 事務局次長

三好 悠久彦

特定非営利活動法人リベラヒューマンサポート 理事長

米田 佐知子

特定非営利活動法人神奈川子ども未来ファンド 事務局長

小川 理子

パナソニック株式会社 社会文化グループ グループマネージャー