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Panasonic NPOサポート ファンド for アフリカ 2015年報告会、広報に関する勉強会

各団体発表者 / 広報勉強会WSの様子

パナソニックは、貧困や飢餓、教育、保健医療などあらゆる分野で問題を抱えるアフリカ諸国において、課題解決に挑むNPO/NGOの広報基盤強化を支援するプログラム『Panasonic NPOサポート ファンド for アフリカ』を2010年より実施しています。
2016年1月21日、本プログラムの2015年報告会をパナソニックセンター東京で開催しました。報告会の後には博報堂から講師を招き、NPOの広報活動に関する勉強会も行いました。

■ファンを増やし、スタッフのやる気につながる「広報」

2015年に『Panasonic NPOサポート ファンド for アフリカ』の助成を受けた6団体が、それぞれに一年間取組んだ内容や成果について発表しました。

まず登壇したのは、ニジェールの子どもたちを支援する一般社団法人 コモン・ニジェール 代表理事 福田英子さんです。
「私たちが取り組んだのは、パンフレットとウェブサイトの刷新です。特にウェブサイトは日本語・英語・フランス語の3ヵ国語をすべて新しくしました。
これまでもSNSは活用していたのですが、日本語のサイトでは自らの日々の活動をブログ中心に発信するように変更したところ、アクセス数は倍に増えました。講演に呼んでいただくことも多いので、日本の方にニジェールをもっと身近に感じてもらえるよう、これからも発信に力を入れていきます」

続いては、ザンビアで主に母子保健分野で活動する徳島県の特定非営利活動法人 TICO事務局 近森由記子さんからの報告です。
「当団体のザンビアにいるスタッフともも交えて時間をかけて議論を重ね、ウェブサイト、ロゴ、名刺、展示会用のパネルと広報ツールのリニューアルを実施し、広報活動スローガン『未来(“これから”)を作らんで』が誕生しました。アフリカのために何かしたいと考えている人に、徳島弁で「一緒に未来を作りませんか?」と呼びかけているものです。数は少ないのですが、これまでにないスタッフウェブサイトからの会員申し込みがあり、その中の1人は、何か自分にできることがないか考えていたと、待ち望んでいたコメントが届きました。今後もこのスローガンと共に頑張っていきます。

3番目は、2年目の助成となった公益社団法人 日本国際民間協力会(NICCO)広報マネージャー 佐藤瞳さんです。
「私たちは感染症の拡大を防ぎ、し尿を肥料化する“エコサントイレ”という高床式トイレの普及を行っています。アフリカは遠くてイメージしにくいという声を多くいただいていたので、行ったことのない人にも身近でわかりやすく感じられる発信に取り組みました。具体的には写真や絵を多用したアフリカ特集ページを開設し、煩雑だったウェブサイト全体も整理しました。結果、ページビューが30%、“いいね!”数が倍増しました。現地駐在スタッフの広報に対するモチベーションも上がり、ブログの投稿数も倍に増えるなど、社内の広報に対する認識も変わってきています」

続いて、紛争を未然に防ぐしくみづくりや、紛争地の人々への支援を行う特定非営利活動法人 日本紛争予防センター(JCCP)事業担当 新井さつきさんが登壇しました。
「当団体の活動に共感と支援を得るための動画を作成しました。その内容は、企業と協働するもので企業からの支援を増やすことに取り組みました。治安の関係で、当初予定していたプロのカメラマンを派遣できず自力で撮影から編集まで行いましたが、なんとか2本を完成させることができました。動画を携えて企業訪問を重ねた結果、2015年は企業や団体からの新規寄付が5件あり、寄付額は前年比で3.3倍も増えました。今後は企業からの支援をさらに増やしていくべく、精力的に企業訪問を続けていきます」

5番目は、タンザニアの孤児院支援を行う特定非営利活動法人 ムワンガザ・ファウンデーション事務局長 小林一成さんです。
「私たちはタンザニア人の代表者を中心に現地での孤児院建設に取り組んでいます。創設5年目の小さな団体のため、まずは活動を多くの人に知ってもらえるよう広報に力を入れようと本ファンドに申請しました。パソコンやビデオ、カメラなど機材一式を整備し、現地の様子や活動を伝えるコンテンツ作りに取り組んでいます。全国から講演に呼んでいただいた際に撮影した映像を流しているほか、近隣の短大生がその写真を活用して新しいパンフレットを製作してくれました。今回ハはード面の充実ができましたが、今後は現地スタッフとのコミュニケーションなどソフト面の改善に取り組んでいきたいと思います」

最後は、ルワンダで洋裁技術指導に取り組む特定非営利活動法人 リボーン・京都 マネージャー 牧田宏子さんです。
「2015年のテーマとして、オンラインとオフラインでの効果的な情報発信、訓練生が製作した商品の販売促進、広報体制の強化に力を入れました。オフラインでは百貨店での展示即売会の開催が増えたほか、高齢の支援者向けに通販カタログをつくることで通販での購入もアップしました。広報担当者を新規に雇用したことで、滞りがちだったSNSでの情報発信が倍増し、活動紹介の動画も作成できました。Facebookや製品販売の数値を指標としながら、今後も積極的な広報活動を展開していきます」

■社会へのインパクトを示し、共感得られる発信を

選考委員からの講評や意見も寄せられました。

「相手が自分について知っていればいるほど、関心を持ってもらいやすいという法則があります。アフリカ支援をする皆さんがより多くの共感を得るには、まず情報量を一定量まで増やすことが大切です。日本ではアフリカについて知らない人が多い中、キャッチコピーの一言だけで支援を受けることは難しい。リアルなストーリーがある現場や創設者などからたくさん話を聞いている広報担当者は、多くの話題、情報量を持つことができるはずです。どんどん引き出して外に発信し、蓄積してください」

株式会社 博報堂 PR戦略局
部長 加藤昌治さん

特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター(JANIC)
事務局長 定松栄一さん

「皆さんの報告の中で『何を伝えるか悩んだ』という声がありましたが、利益の追求ではなくミッションに基づいて活動するNPOは、まずそのミッションを明確にし、共感してもらうことが大切です。広報の仕事の第一歩は、それを徹底して考え抜くことから。時間が経つにつれて目標が不明確になってしまう組織もありますが、大きく成長したNPOは、分かりやすいミッションを持っています。広報活動で迷った時は、原点に立ち返って考えてみてください」

「広報活動の成果は、ホームページの改修や訪問者数の増加など数字に表すことはできても、社会にどんなインパクトを与えたのか、効果を測るのは難しい。本日皆さんの発表を聞いて、広報面の改善とともに社会における変化が垣間見られました。本ファンドの主催者として、これからも皆さんとともに社会のお役に立てるよう、この取り組みを継続していきます」

パナソニック 株式会社 ブランドコミュニケーション本部
CSR・社会文化部 部長 福田里香

特定非営利活動法人 アフリカ日本協議会
国際保健部門ディレクター 稲場雅紀さん

「発表を聞いて、大手NGOでも敬遠することもあるアフリカ支援に対する強い意欲と、現場の課題を多くの人に伝える方法を考え抜いてきた皆さんの努力を感じました。一時、“最後のフロンティア”と言われたアフリカの成長は、近年、テロや紛争、エボラ出血熱などにより後退しています。社会情勢が不安定な中では、個人の能力を引き出すサポートや中小農民への技術移転など草の根レベルの支援がますます、重要になっていくでしょう」

■広報活動の第一歩は「自己紹介」から

発表の後には、博報堂の牧志穂さんによる勉強会「自己紹介から学ぶ広報発想」が行われました。
牧さんは、「自己紹介は、お金がかからず誰にでもできる広報活動の第一歩。初めて会った人にも興味を持ってもらうには、伝えたい多くの情報から取捨選択し、必要に応じて情報を足しながらストーリーをつくっていくことが重要」と強調します。
その自己紹介に活用できる広報発想として、「異常性(意外性)」や「物語性」、「記録性」など『10の視点』が紹介されました。
「例えば、コモン・ニジェールの福田さんは、昨年の活動報告の中で“サハラ砂漠に住んだ唯一の日本人女性”というフレーズを使って、ご自身を紹介されていました。その中には“サハラ砂漠”と“日本人女性”との間にある『意外性』や、“唯一の”という『記録性』、なぜサハラ砂漠に住んだの?と思わせるような『物語性』など、人を惹きつける要素がたくさん入っています。このように、もっとこの人の話を聞きたいと思わせるような広報発想を応用すると、自己紹介も広報ツールになりえるのです」。

「魅力的な自己紹介をすることは、ファンの獲得や寄付の増加のきっかけになります。まず、第一印象で相手を引きつける事ができなければ、団体に興味を持ってもらう事もできませんから」(牧さん)。

勉強会では、実際に『10の視点』を使って自己紹介を作ってみるワークショップを実施しました。参加したNPOの人からは、「勉強となった」。「このような勉強会を継続して開催して欲しい」。などの意見がありました。

牧さんは、相手に合わせて使い分けられるよう複数の自己紹介を用意しておくことも、「“結果”につながる広報の第一歩」と締めくくりました。