認定NPO法人 テラ・ルネッサンスの組織基盤強化ストーリー

ウガンダやカンボジアなど6ヵ国で紛争の被害を受けた人々への支援に取り組む。 広報基盤を強化し3年後、収入1.5倍、会員1.4倍に ——認定NPO法人 テラ・ルネッサンス

ウガンダやカンボジアなど6ヵ国で紛争の被害を受けた人々への支援に取り組む。
広報基盤を強化し3年後、収入1.5倍、会員1.4倍に —認定NPO法人 テラ・ルネッサンス

ウガンダやカンボジアなど世界6ヵ国で、地雷や紛争の被害者や元子ども兵の生活再建・啓発活動に取り組む「認定NPO法人 テラ・ルネッサンス」。永続性ある組織にステップアップするために広報基盤を強化した3年間の取り組みを、鬼丸昌也さん(創設者・理事)と栗田佳典さん(アウェアネス・レイジングチームマネージャー)に聞いた。
[THE BIG ISSUE JAPAN ビッグイシュー日本版 第313号(2017年6月15日発行)掲載内容を再編集しました]

家族やコミュニティを
破壊し続ける地雷に衝撃。
伝える会90回、団体立ち上げる

写真:テラ・ルネッサンス 創設者・理事 鬼丸 昌也さん

テラ・ルネッサンス
創設者・理事 鬼丸 昌也さん

鬼丸昌也さんは大学在学中の2001年2月、地雷除去の支援活動をしているNGOに同行して、初めてカンボジアを訪れ1週間滞在した。
「現場は地雷除去作業員の息づかいと金属探知機の音以外、何も聞こえない世界。地雷の被害者は手足を失ったことで働けなくなり、高利貸しに手を出し、子どもを売ってしまうことさえある。地雷が家族やコミュニティまで破壊することに衝撃を受け、自分の生まれた年(1979年)に終わったポルポト独裁政権について何も知らなかったことに気づき、社会課題について当事者でありたいと思いました」

まだ学生の自分にできることは何かと考えた鬼丸さん。翌月から、まずは知り合いのNPOなどに出向き、「カンボジアで見聞きしたこと」を伝える活動を始めた。手作り講演会は10ヵ月で90回にも及び、聴衆の中から「寄付をしたい」「一緒に活動をしたい」という人も現れ、10月には「テラ・ルネッサンス」を立ち上げていた。
現在は日本、カンボジア、コンゴ民主共和国、ウガンダ、ブルンジに事務所を置き、ラオスを加えた6ヵ国で総勢約60人のスタッフとインターン生、ボランティアが活動を支えている。

「ラオスとカンボジアでは、地雷・不発弾を撤去する現地の団体と一緒に活動をしています。地元の人が被害を受ける背景には、地雷があるとわかっていても田畑として利用したり、薪を拾わざるをえない貧困がある。そのため、収入向上に利用できるマイクロクレジットの提供や教育の支援も行ってきました。コンゴ、ウガンダ、ブルンジでは、元子ども兵や紛争の被害を受けた女性が社会復帰・自立できるように職業訓練や識字教育をしています」

また、複数の国際NGOと連携して武器取引の可視化と規制を国際社会に求め、「不十分な部分はあるものの、2014年には「武器貿易条約」(※)の発効という形で実を結んだ」という。
日本国内では平和教育や啓発活動にも力を入れる。「たとえば、コンゴの紛争の一因であるレアメタルを消費しているのは日本を含む先進国。紛争の背景にある構造に関心をもち、日々の生活や選択を変えてもらう講演やワークショップを企業や自治体、教育機関、労働組合などを対象に、昨年は183回実施しました」

写真:授業の様子
写真:元子ども兵と鬼丸

※武器貿易条約:2014年に発効された、戦車や小型武器といった通常兵器の移転や移譲を規制する条約

多様な資金調達をめざし
活動をリアルタイムで発信。
子ども兵の現状描くDVDも作成

2011年の東日本大震災の際には、「津波の映像を見たウガンダの事務所から電話がありました。彼らは、日本の幼稚園児が1ヵ月おやつを我慢してお金を寄付してくれたことなども知っている。だから今度は自分たちに何かできないかと、支援を受けて働き始めた元子ども兵たちが稼いだお金を出し合って、『毛布を買ってほしい』と5万円を寄付してくれました」
そんな気持ちに後押しされて、2011年6月には「大槌復興刺し子プロジェクト」の運営を引き継いだ。刺し子の手仕事をつくり、被災した女性の生活再建と心のケアを目指す活動で、現在も続いている。

活動が広がる一方で、課題もあった。「市民が市民を支える」ことをコンセプトに財政の約8割は寄付や会費を中心とする自主財源でと決めている。しかし、その調達方法は主に鬼丸さんの講演収入に頼っていた。「組織の永続性を担保するには、多様な資金調達方法の確立が不可欠。特定の人に依存しない広報を実現する人材育成や組織基盤の整備を進める必要がある」と考えた鬼丸さんらは「アフリカ分野」の助成枠が設けられたばかりのPanasonic NPOサポート ファンドに、2010年に応募した。

インターン生を経て、2009年に広報担当の職員となり、いま啓発活動を担当している栗田佳典さんは、その3年間の取り組みをこう話す。「私が職員になった頃はウェブサイトの仕組みが複雑で、なかなか更新ができませんでした。そこで助成1年目の2011年は私が専門家のレクチャーを受けて、ウェブ制作にかかわるすべてのノウハウを学び、スタッフと共有し、活動をリアルタイムに発信できるようにしました」

2012年には広報ツールを充実すべく、子ども兵の現状を描いたDVDを制作した。2004年から支援してきた元子ども兵の問題について、多くの人から映像資料の要望があったからだ。「映像制作が得意な芸大生やテレビ局でのAD経験があるインターン生、絵や音楽が得意なボランティア、再現映像では特殊メイクサークル所属の大学生」などが加わって40分の動画を制作。この作業を通じて、専門的な力を集め質の高い情報発信をする重要性を理解できた。その一方、参加メンバーは「こんな形で国際協力できるんだ」と、感激してくれたという。作成したDVDは学校や支援者などに配布し、YouTubeでも一般公開した。

写真:テラ・ルネッサンス アウェアネス・レイジングチームマネージャー栗田 佳典さん

テラ・ルネッサンス
アウェアネス・レイジングチームマネージャー栗田 佳典さん

中期ビジョンめざし
質の向上と多言語化
台湾での講演も実現

写真:テラ・ルネッサンス アウェアネス・レイジングチームマネージャー栗田 佳典さん

さらに2013年には英語版・中国語版のホームページを開設。「グローバルに活動するNGOとして、多様な人材や資金調達先を海外にも求めていくこと」が目的だった。狙い通り、台湾では昨年までに3度の講演が実現し、寄付にもつながった。この年は、紛争が絶えないため“世界で最も貧しい国”といわれるブルンジも活動地域に加わった。ここでは、「アマホロ・ハニー(平和の蜂蜜)」というブランドの蜂蜜づくりを支援。
助成後の2015年にはホームページを「写真を多用した、視覚に訴えるデザイン」に一新。3年の助成で培ったノウハウを活かし、作業はスムーズに進んだ。リニューアル後は、インターン生を含む10人がリアルタイムで情報を更新できる体制も整えた。

「助成前8500万円だった収入が、3年間の助成を受けた後には1億2800万円になり、1193人・団体だった会員も1693人・団体に増えました。広報基盤の強化は確実に組織の底上げにつながっています」と鬼丸さん。
昨年、団体設立15周年を迎えた「テラ・ルネッサンス」は「2031年までに、すべての子どもが紛争に巻き込まれない社会を実現する」という中期ビジョンを立てた。「これは、1団体では達成できない目標ですが、広報ツールの多言語化や多業種の方々とのコミュニケーション強化を図り、海外との連帯・連携をさらに強化し、実現したいと思っています」

写真:テラ・ルネッサンス 創設者・理事 鬼丸 昌也さん
写真:認定NPO法人 テラ・ルネッサンス活動の様子

[団体プロフィール]認定NPO法人 テラ・ルネッサンス
「すべての生命が安心して生活できる社会(世界平和)の実現」を目的に、2001年10月に設立。「地雷」「小型武器」「子ども兵」「平和教育」という4つのテーマに対し、現場での国際協力と同時に、国内での啓発・提言活動を行うことで課題の解決を目指している。
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