Meet the IOC Young Leaders! Meet the IOC Young Leaders!

IOCヤング・リーダーズ・プログラムは、それぞれのコミュニティで実施されている草の根スポーツプロジェクトへのコーチング、資金援助、メンターシップのサポートを通じて、影響力のある若者たちの育成・支援をしています。彼らのプロジェクトの様子を覗いてみましょう!

Vol.01 The Champ Camp Vol.01 The Champ Camp

ウォリード・アブ・ナダ(ヨルダン)

世界最大のパレスチナ難民キャンプでチャンピオンを育てたい

私は2019年にIOCヤング リーダーズの一員に選ばれたパレスチナ系ヨルダン人で、ウエイトリフティングスクール「The Champ Camp」の創立者として、恵まれない地域の若者たちを支援しています。また、世界中の若者を対象にしたワークショップを定期的に開催し、スポーツや起業家精神、イノベーションを通じて社会的な一体感の醸成を目指して活動中です。

The Champ Campとは

「The Champ Camp」は世界最大のパレスチナ難民キャンプの中心部、アルバカアで2017年に誕生しました。約5,000のテントと約26,000人の難民が集まる緊急避難所として1968年に設立されたアルバカア。以後半世紀の間に22万人を超えるまでになったその住民は、今も経済的・社会的な問題に直面しています。当初の「The Champ Camp」は、青少年育成のためのスポーツ参画支援に特化した活動をしていましたが、現在は深刻な社会問題に地域社会全体で取り組む組織へと発展しています。

スポーツを軸とした私たちのプログラムが目指すのは、青少年に社会参加の機会を与えることです。彼らの成長を長い目で見ることによって、これまでにないやり方で難民キャンプとの積極的な関わりを育んでもらうことができるようになりました。“人生におけるチャンピオン”を育成しようとする「The Champ Camp」は、「難民」や「貧困」といった既成の社会的立場から若者たちを解き放ち、心理的に安心できる居場所となっています。この場所で、彼らは一人ひとりの人生の目的を探求し、成長していくことができるのです。

The Champ Camp

具体的な活動について

「The Champ Camp」の核となっているのは、オリンピックを目指すウエイトリフティングスクールとしての側面ですが、その一方で、単なるメダリスト育成の場に留まらない価値を提供しています。それは、私たちの理念である“人生におけるチャンピオン”を育くむ環境です。「The Champ Camp」では、青少年の成長に寄与する総合的な草の根プログラムを豊富に提供しています。その中には、複雑な問題を解決するために起業家精神を持ち寄れる機会や、個性的なスキルを取得するための学修キャンプ、女性たちだけで地域の課題に取り組むための場、対人スキルを身につけるための自己啓発プログラムなどが含まれています。

競技の実績でも、私たちが育成した選手たちがヨルダン代表チームの大多数を占めるようになっており、国内および5か国での国際大会で計300個以上のメダルを獲得しています。また、男子のスポーツという先入観の強かったウェイトリフティングにおいて、アラブ諸国で最も規模が大きく、実力ある女子チームを創設できたことも、私たちがスポーツを通じて既成概念を打破しようとしていることを示す好例となりました。

「The Champ Camp」の活動やその成果は、王室関係者の表敬訪問から国連での表彰まで、多岐にわたる国際的な評価を受けています。中でも特筆すべきは、人道支援などの社会的貢献を行った青少年に贈られるFilippas Engel賞で、史上初のアラブ人受賞者になったことです。

女子ウエイトリフティングチーム
女子ウエイトリフティングチーム

今後の展望

私たちの目的は、アルバカア難民キャンプの青少年への社会的・教育的支援およびスポーツ支援を通して、彼らの成長を積極的に促し、勇気づけることです。競技でのチャンピオンに留まらず、“人生におけるチャンピオン”育成を目指す本プロジェクトは、世界中の人々支援者からのサポートを受けて、アルバカアにおける自立型のソーシャルビジネスとしての活動に移行しつつあります。このビジネスモデルを成功させることができれば、私たち自身が掲げる長期的目標の達成にもつながると考えています。あらゆるコミュニティにおいて、スポーツを通じて偏見やステレオタイプを打破し、地域社会の中から変革を起こす人材を輩出するというビジョンの達成に向けて、これからも活動を続けていきます。