イオンリテール株式会社様
長時間労働の要因をデータでつかみ働き方の改革・改善に生かす
イオングループの中核企業として総合スーパー(GMS)事業を展開するイオンリテール。同社では従業員の働き方の可視化を目的にパナソニック ソリューションテクノロジー(以下、パナソニック)の長時間労働抑止システム「Chronowis」を導入しました。これにより、働き過ぎの抑制とあわせて、労働報酬の未払いリスクを低減させています。また、Chronowisに蓄積されたデータを分析して長時間労働を生む要因を突き止め、働き方のさらなる改革・改善に生かそうとしています。
イオンリテール株式会社様
| 【本社所在地】 | 千葉県千葉市美浜区中瀬一丁目5番地1 |
|---|---|
| 【社長】 | 古澤 康之 |
| 【設立(発足)】 | 2008年8月 |
| 【従業員数】 | 7万3,648人(2024年8月末時点) |
| 【事業内容】 | 総合スーパー(GMS)の運営 |
導入前の課題
- 社員IDカードのスキャンによる勤怠管理を導入していたが、より正確な実労働時間の把握には限界があった。
- 実労働時間の正確な把握が困難であったため、労務管理上の不備が生じる可能性があった。
- どの部門・部署のどういった業務で多くの残業が発生しているかをデータで示すのが難しかった。
導入後の効果
- 従業員の労働時間や働き方がリアルタイムで可視化され、管理・改善が図りやすくなった。
- 実労働時間の把握と長時間労働のシステム的な抑止により労働報酬の未払いリスクが大幅に低減された。
- 業務内容と労働時間の相関分析を通じて、長時間労働を生む要因をデータで示すことが可能になった。
働き方のさらなる改革に向けて
イオンリテール株式会社
人事総務本部 人事部
門間 俊也氏
イオンリテールでは東北を除く本州エリアと四国エリアで372店舗(2024年8月末現在)のGMSを展開し、7万人を優に超える従業員を擁しています。同社ではかねてより働き方改革に力を注いできました。その取り組みについて、人事総務本部人事部の門間 俊也氏は次のように説明します。
「当社は、小売業は『人間産業』だと考えており、人を尊重することを基本理念として掲げています。その理念に則るかたちで、従業員が健康的かつ安全に暮らせて、さらに柔軟かつ効率的に仕事ができる制度や仕組み、環境を整えてきました」
また、働き方改革の取り組みでは、働き過ぎ(長時間労働)を抑止することもテーマになっています。
「従業員の健康維持のためには、働き過ぎの抑止が必要です。仮にそれが発生したならば、原因を速やかに割り出して、改善につなげていくことが求められます」と門間氏は明かします。
こうした考えを具現化する一手として同社が活用しているのが、パナソニックの長時間労働抑止システム「Chronowis(クロノウィズ)」です。同社では2024年1月に人事部とIT部門の従業員を対象としたChronowisのトライアルを経て、同年6月から商品部の従業員など、店舗従業員を除く全従業員約4,000人の労働時間管理にChronowisを使用しています。
適切な労働時間管理のためにChronowisを採用
イオンリテール株式会社
人事総務本部 人事部
石井 祐介氏
Chronowisを導入する以前から、イオンリテールでは従業員IDカードのスキャンを通じて、オフィスや店舗における出退勤管理(勤怠管理)を行っていました。しかし、この方式による管理にはいくつか問題がありました。1つは、後方スタッフや商品部で働く人など、オフィス外で働くことも多い従業員の実労働時間を正確に捉えるのが困難な点です。また、従業員がスキャンをし忘れると、その人の労働時間が正しく把握できなくなります。
これらの課題について門間氏は「従業員の労働時間を正しく把握できないと、労働時間の適正化を図ることが困難になります。また、絶対にあってはならない『見えない残業』、あるいは『未払いの残業』が発生するリスクも膨らみます」と指摘し、こう続けます。
「労働報酬の未払いリスクを低減させるためにも、適切な労働時間管理を可能にするシステムを導入すべきと判断しました。それが、PCの稼働状況から従業員の労働時間をリアルタイムにモニタリングできるChronowisの採用につながりました」
PCの稼働をモニタリングするツールはChronowis以外にもある中、本製品を採用した理由を門間氏はこう明かします。
「Chronowisは直感的に使いやすく、PCに対するポップアップアラートや強制シャットダウンなど長時間労働を抑止する機能が整っている点が魅力でした。加えて、パナソニックのサポート品質は高く、トライアル期間中はシステム面において当社の困りごとへ的確かつクイックに対応してくれました。例えば、シフト制の勤務計画を採用している当社において一人ひとりが多種多様な働き方を実施しているため、さまざまなシフト形態が存在しています。導入に当たってはそのシフト内容をChronowisと連携するする必要があり、パナソニックのサポートを受けつつ実現することができました。Chronowisの選択は正解でしたね」
長時間労働の可視化と抑制に効力を発揮
Chronowisの導入は、さまざまな効果を同社にもたらしています。その1つが長時間労働の抑制です。同社では「残業申請がない場合、業務終了時間の16分後にPCを強制シャットダウンする」という設定でChronowisの機能を使っています。また、そのシャットダウンを警告するポップアップを勤務終了時間の30分前・10分前・5分前および勤務終了時間の5分後・10分後・15分後の計6回に分けて従業員のPCに表示させています。
「この仕組みによって、長時間労働への意識は確実に変わりつつあります」と、門間氏は明かします。
また、以前は残業申請が紙ベースで行われており、事前申請も100%徹底とはいきませんでした。しかし、ChronowisによってPC利用の場合にはデジタルでの申請をすることができ、迅速かつ効率化が図られたといいます。そして、さらに大きな効果として、門間氏と同じ人事総務本部 人事部で働く石井 祐介氏が強調するのが、労働時間のリアルタイムな可視化です。
「これまで、上司が部下の働き方をリアルタイムに把握する手段は“目視”だけでした。それがChronowisの導入により、たとえ部下がリモートワークをしていても、その人の労働時間をリアルタイムに捉え、どのように働いているかを知ることができます。また、部下も自分の労働時間をリアルタイムに把握可能です。これは、上司と部下の双方が自分たちの部門・部署、ないしは一人ひとりの働き方を見直す機会が増えたことを意味します。その効果は大きいでしょう」
長時間労働の要因を分析し一層の改革・改善につなぐ
Chronowisは2025年4月のバージョンアップでデータ分析の機能が強化されたほか、残業申請時に「どのような業務」で残業をするかをメニュー選択で簡単に入力できるようになりました。門間氏はこの機能強化による効果に期待をかけます。
「残業の業務内容をメニュー選択で選べるようなり、業務内容の記述形式が標準化され、データとして分析がしやすくなると期待しています。今後はChronowisに蓄積されているデータを分析し、例えば『どの部門・部署の、どんな業務が、長時間労働を生んでいるか』『残業の多い従業員は、どのような業務を担っており、どのような状態にあるのか』といったことを割り出していきたいと考えています。これは、長時間労働を生む要因をデータで示すことでもあり、その取り組みを仕事の進め方や内容の見直し、効率化など、働き方の一層の改革・改善につなげていければと願っています」
さらに同社では、働き方の改革・改善に役立つデータの収集、分析を主眼に、Chronowisによる管理対象を店舗へと広げることも視野に入れています。同社におけるChronowis活用の幅はこれからも広がりを見せそうです。
※ 本文中に記載されている内容は、2025年4月の取材時点のものです。