36協定

労働基準法違反とは?
労働時間超過を含め違反の例と罰則

公開日:2023 / 11 / 28更新日:2024 / 1 / 18

労働者の権利を守るための法律である労働基準法は、企業で人事労務管理を担当する方であれば、必ず把握していなければならない法律の一つです。しかし、ひと口に労働基準法といってもその内容は多様で、気づかないうちに違反しているケースも少なくありません。そこで本記事では、労働基準法の概要や具体的な違反例、違反してしまった場合の罰則について解説し、労働基準法を遵守するための対策をお伝えします。

労働基準法とは?

労働基準法とは、労働者の権利を守るための法律です。具体的には、労働時間や賃金の支払い、解雇などについて最低の基準を定めたもので、1947年に制定されました。

雇用者と労働者は主従関係ではありますが、労働の対価として賃金を得るという点では対等です。しかし、どうしても賃金を支給される労働者の立場が低くなってしまう傾向にあることから、労働者の権利を守ることを主目的に制定されました。そのため、仮に労働基準法に違反した内容で契約した場合は、その契約は無効となり、雇用者には罰則が発生します。

労働基準法は、世の中の状況に応じて何度かの改正が行われていますが、現時点での主な基準は次のとおりです。

  • 労働時間:1日8時間・1週40時間
  • 賃金支払:直接払い・通貨払い・全額払い・毎月払い・一定期日払い
  • 割増賃金:時間外・深夜(午後10時以降)2割5分以上・休日出勤3割5分以上
  • 解雇予告:労働者を解雇する場合は、30日以上前の予告もしくは30日以上の平均賃金の支払い など

近年では上述した以外に働き方改革の推進により、残業時間の上限規制や有給休暇の取得について大きく改正されています。

また、労働基準法で注意すべき点は、労働基準法の対象者となるのが正社員だけではない点です。契約社員やアルバイトなど日本国内での事業に従事しているもので、請負・委任契約など以外は基本的に労働基準法の対象となります。ただし、請負・委任契約であっても労働基準法が適用される場合もあるため、最終的には専門家に確認するようにしましょう。

労働基準法違反となった場合の罰則

どのような時に労働基準法違反となってしまうのか、また違反となった場合、どのような罰則があるのかについて解説します。

  労働・休憩時間の違反

前述したように労働者の労働時間は1日8時間、週に40時間までが原則です。ただし、労働基準法36条いわゆる36協定(さぶろくきょうてい)により、雇用者と労働者の合意があれば、職種によっても異なりますが原則として月45時間、年間360時間までは時間外労働が認められます。これを超えてしまった際には、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

36協定について詳しくは、「建設業も対象となる36協定とは?2024年4月施行に向けて建設業が抱える課題と解決策を解説」

また、労働時間には、休憩時間に関する決まりもあります。具体的には6時間を超えて労働をする場合は45分、8時間を超えて労働する場合は60分以上の休憩を勤務時間のなかで与えないとなりません。違反した場合は6ヵ月以下の懲役あるいは30万円以下の罰金です。

  休日・有給の違反

雇用者は1週間で1日以上の法定休日を労働者に与える必要があります(36協定によっては4週間で最大12日、変則休日制の場合は24日まで連続で勤務させることも可能)。違反した場合は、6ヵ月以下の懲役あるいは30万円以下の罰金です。

また、有給休暇は年間で10日以上付与される労働者の場合、年5日については、雇用者が労働者の意見を聞いたうえで時季を指定して取得させなければなりません。

違反した場合は、労働者1人につき30万円以下の罰金です。また、労働者の請求する時季に所定の年次有給休暇を与えなかった場合は、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。

  通常以外の賃金に関する違反

通常以外の賃金とは、時間外労働、休日出勤、深夜労働などでの賃金です。例えば、法定時間内労働終了後、22時までは法定時間外残業として1時間当たりの賃金から25%割増、22時から翌5時までは深夜労働として50%割増賃金を支払わないとなりません。

また、休日出勤の場合は、出勤時から22時までは35%割増、22時から翌5時までは60%割増賃金となります。違反した場合、6ヵ月以下の懲役あるいは30万円以下の罰金です。

  賃金未払いの違反

労働契約や就業規則で定められた賃金が所定の支払日に支払われなかった場合も労働基準法違反です。この場合、30万円以下の罰金となります。また、支払われたとしても金額が不足していた場合や各地域で定められている最低賃金を下回っている場合は、50万円以下の罰金です。

なお、未払い賃金の対象は、定期賃金のほか、退職金・一時金(賞与・ボーナス)・休業手当・割増賃金・年次有給休暇の賃金・その他労働基準法11条に定める賃金に当たるものとなります。

  労災(労働災害)に関する違反

業務中もしくは通勤中に、労働者がケガをしたり病気になったりした場合、あるいは死亡した場合、労災(労働災害)として、雇用者は療養補償、休業補償、遺族補償、埋葬料など、労働基準法上の災害補償責任を負うことになります。労災保険に加入していれば、保険で補償されますので、災害補償責任は免れます。

ただし、労災保険に加入している場合でも、労働者の休業が4日未満の場合の休業補償については、労災保険から給付されないため、雇用者が、平均賃金の60%を支払う必要がありますので注意が必要です。

適切に補償しなかった場合は、6ヵ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金です。

  労働条件・就業規則の違反

雇用者は労働者を雇い入れる際、労働条件の提示や就業規則を誰もが閲覧できる状態にしておかなければなりません。また、入社後に労働者の同意を得ずに労働条件を変更する、就業規則がない、ある場合でも労働基準監督署に提出していないといった場合、30万円以下の罰金です。

  妊娠や出産に関する違反

労働者による産前産後休暇[産前6週間(多胎妊娠は14週間)・産後は8週間]の求めに応じない、妊婦による残業や休日・深夜労働、危険な業務拒否の求めに応じない、生後満1年未満の子どもの育児に携わる女性労働者が休憩時間以外に1日2回最低30分の育児時間を求めた場合に応じない場合、6ヵ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金です。

  解雇に関する違反

雇用者が労働者を解雇する場合、解雇の30日前から告知しないとなりません。また、やむを得ず守れなかった場合でも、30日分の賃金は支払う必要があります。これに違反した場合、6ヵ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金です。

  差別に関する違反

雇用者は、労働者の国籍、性別、宗教や信条、社会的身分などを理由に雇用条件に差を付けると、6ヵ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金です。

  労働の強制に関する違反

雇用者は労働者に対し、暴行や脅迫、監禁のほか、精神や身体の自由を不当に拘束し、労働者の意思に反して強制的に労働をさせることはできません。

例えば、強制貯蓄や借金制度の導入、退職を求める社員に対し、賠償金を要求して退職をさせないといったことが考えられます。これに違反した場合、1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金です。

労働基準法違反の具体例

企業規模にもよりますが、労働基準法違反による罰則は、内容自体はそれほど厳しいとはいえないものがほとんどです。ただ、労働基準法違反による社会的信用の失墜は、決して小さなものではありません。取引先や消費者から新たに信用を取り戻すには多大な労力が必要です。しかし、それでも労働基準法に違反してしまう企業は後を絶ちません。ここでは、特に労働時間超過による違反の具体例を紹介します。

  • 流通業者の事例
    労働者2名に対し、36協定の延長時間を超え、1ヵ月間に最大165時間の時間外労働を行わせました。その結果、同社と同社社長が書類送検されています。
  • 中古車販売業者の事例
    海外からの技術実習生1名に対し、月100時間以上かつ月平均80時間を超える違法な時間外・休日労働を行わせました。同社はこの事実を隠微するため、虚偽のタイムカードを提出した疑いも持たれています。
  • アパレル業者の事例
    労働者10名に対し、適法に締結された36協定なく、違法な時間外労働を行わせました。同業者はほかに海外からの技能実習生に対する賃金未払いなども発覚し、取締役(当時)の男性が略式起訴されています。

労働基準法違反にならないための対策

労働基準法違反にならないためには、労働基準法を熟知することが重要ですが、同時に次の点をしっかりと抑えておく必要があります。

  • 就業規則の作成・提出
    就業規則が労働基準監督署に提出されていない時点で労働基準法違反となるため、必ず作成し、提出しなくてはなりません。
  • 法定三帳簿の作成
    労働者名簿、出勤簿、賃金台帳は法定三帳簿といわれ、会社内に備え付けておくのが義務です。仮に立ち入り検査が合った場合、これらの帳簿がないもしくは適切に管理されていないと労働基準法違反となる可能性も高まります。残業や賃金管理の基本となる帳簿のため、必ず作成し適切に管理しましょう。
  • ITツールを利用する
    残業や賃金管理も含め、労務管理が疎かになってしまうと、気が付かないうちに労働基準法違反を犯してしまう可能性が高まります。そのため、労務管理を明確に行う必要がありますが、手作業では手間がかかるうえ、ミスが生まれるリスクも少なくありません。

そこで、これらの業務はITツールを利用して自動化するのがおすすめです。労務管理ツールで適切に労働時間を管理できるようになれば、労働基準法違反のリスクを低減できます。また、ITツールを活用すれば、複雑な複合条件も漏れなく管理することができ、担当者の負担軽減も可能です。

労働基準法を遵守するには適切な労務管理が重要

労働基準法とは、労働者の権利を守ることを目的とし、労働時間や賃金の支払い、解雇などについて最低の基準を定めたものです。労働基準法違反は労働者の意欲を削ぐだけではなく、精神や身体的にも大きな負担になります。また、企業としても社会的信用の失墜リスクがあるため、法令をしっかりと把握し防がなくてはなりません。

労働基準法を遵守するには適切な労務管理の徹底が重要ですが、手作業ではどうしても手間がかかるうえ、ミスが生まれるリスクも高まります。そこで、労働基準法違反を防ぐために必要なポイントは正確性であり、それを効率的に実施するために欠かせないのがITツールの導入です。業務効率化はもちろん、労務時間の管理も適切に行えるようになるため、労働基準法違反の低減が可能になるでしょう。

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