建設業の2024年問題とは?
課題や有効な対応方法を解説
公開日:2023 / 7 / 26

建設業が直面している問題のひとつに「2024年問題」があります。働き方改革の一環として、2019年4月(中小企業は2020年4月)から時間外労働時間の上限規制が適用されていますが、建設業に対しては5年間の猶予期間が設けられていました。
本記事では、建設業の2024年問題について説明するとともに、問題点や課題にどう対応すべきかを解説します。
建設業の2024年問題とは?
建設業にとっての2024年問題とは、猶予されていた時間外労働上限規制が適用された後、従業員に今までのような長時間労働させることができなくなり、労働力が不足することから業務遂行が困難になる問題を指します。
2019年4月、働き方関連法(正式名称:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)の制定・施行により、労働基準法や労働安全衛生法などの法律が改正されました。その目玉として設けられたのが、以下を内容とする時間外労働の上限規制です。
時間外労働の上限規制
認められる時間外労働時間は原則として月45時間・年360時間
臨時的な特別な事情があり、労使の合意がある場合でも、以下の範囲しか認められない- 時間外労働時間が年720時間
- 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
- 時間外労働と休日労働の合計の平均が、2ヵ月・3ヵ月・4ヵ月・5ヵ月・6ヵ月全て80時間以内
- 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年に6ヵ月
この時間外労働の上限規制は、すでに2019年4月1日(中小企業は2020年4月1日)より施行されていますが、建設業や自動車の運転業務、医師などに対しては5年間の猶予期間が与えられていました。
しかし、2024年4月からは上限規制適用の対象となり、建設業に対しては以下の取り扱いで時間外労働時間が規制されます。
- 災害の復旧や復興の事業を除き、上限規制が全て適用される。
災害の復旧や復興の事業に関しては「時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満」「時間外労働と休日労働の合計の平均が、2ヵ月・3ヵ月・4ヵ月・5ヵ月・6ヵ月全て80時間以内」は適用されない。
上限規制の導入前までのように、労働者に長時間の時間外労働をさせることはできなくなります。そのため、事業に支障が出ないように労働環境を整備して業務の効率化を図るといった対応が求められているのです。
建設業の抱える課題
現状、建設業はさまざまな課題を抱えていますが、そのなかでも特に深刻とされているのが、人材不足と長時間労働です。この2点について、2023年4月18日に国土交通省不動産・建設経済局が発表した「最近の建設業を巡る状況について【報告】」のデータに基づいて説明します。
人手不足
日本は、少子高齢化が進んで労働人口が減少することから、社会全体で労働力が不足する問題を抱えています。特に建設業は他産業よりも人手不足が深刻な状況にあります。その理由として、労働環境が過酷であること、3K(汚い・キツい・危険)や新3K(帰れない・厳しい・給料が安い)と言われるようにイメージが悪いことなどが挙げられます。
同報告によると、建設業従事者数は次のように減少していることが示されています。- 1997年685万人
↓ - 2010年504万人
↓ - 2022年479万人
また、建設業就業者を年代別に集計すると、2022年データで55歳以上が35.9%であるのに対し、29歳以下は11.7%です。実数ベースでは、2021年と比較して55歳以上が1万人増加したのに対し、29歳以下は2万人減少しており、高齢化が深刻に進んでいます。このため、高齢を理由とした離職により、建設業はさらに人手不足に陥ることが懸念されています。
- 1997年685万人
長時間労働
建設業は決まった工事期間内で必要な施行を全て完了しなければなりません。完工予定を遅らせることは許されず、無理をしてでも間に合わせることが求められます。また、先に述べた人手不足の影響もあり、建設業では長時間労働が常態化していると考えられます。同報告には、以下のデータが示されています。
- 産業別年間出勤日数
建設業の年間出勤日数は、製造業と比べて16日、全産業と比べて12日多い - 産業別年間実労働時間
建設業の年間実労働時間は、製造業と比べて68時間、全産業と比べて90時間長い
- 産業別年間出勤日数
また、年間実労働時間について約20年前と比較すると、全産業では約90時間減少しているのに対し、建設業は約50時間しか減少しておらず、今後も差が開き続けていくことが懸念されています。
休日の取得状況も、建設業は「4週6休程度」の回答が44.1%ともっとも多く、他産業ではあたりまえになっている週休2日制も実現困難な状態なのです。
ITツールをうまく活用していない
上記2つの課題のほかに、建設業が抱える課題として、ITツールを有効活用していないことが挙げられます。あらゆる業界でDXが叫ばれている現在でも、紙などアナログな方法で勤怠管理をしている企業が多くあります。原因としては、建設業界はいまだ業務において紙の使用が一般的で、長年アナログな方法に慣れているためデジタル化への抵抗感が高いためです。
建設業の2024年問題への有効な対応方法
建設業の2024年問題対策にまだ着手していないのであれば、早急に取り組まなければなりません。現場の管理業務で労働時間が長くなりがちな施工管理・現場監督の2024年問題に対する有効な対応方法としては以下のことが考えられます。
職場環境を改善する
建設業といえば業種の特徴として、どうしても過酷な環境で労働しなければならないことが多くなります。ただし、改善の余地がないわけではなく、事業主側の努力によって働きやすい職場へと変えることが可能です。例えば、社内でコミュニケーションをより促進できるような時間を積極的に設け、問題を早期解決できるような環境作りをしたり、業務を均等に振り分け、過度な労働を防いだりと、さまざまな手段で職場環境の改善を図ることが大切です。職場環境改善の実現によってイメージアップも図れ、労働力不足の問題解決につながるでしょう。
労務管理を適正化する
建設業は社内・在宅・現場というように勤務場所が複数あり、労働時間の把握が難しい業種です。資材調達の遅れなどの理由による工程変更も珍しくなく、従事する作業員の労務管理が難しいことも課題のひとつとして常につきまといます。
この問題の解決方法として挙げられるのは、何が労務管理上の問題となっているのかを具体的に洗い出して適正化に向けて対策することです。さまざまな問題解決に向けて一つひとつに真摯に取り組み、適正な労務管理をすることが時間外労働の削減につながるでしょう。
生産性を向上させる
効率化に役立つ技術・システムを導入して、従来は人の手で行っていた業務を自動化して生産性向上を図ります。例えば、工程管理や安全管理、原価管理を効率的にできて、役所へ提出する各種届出・申請書をスムーズに作成可能な業務管理システムを導入して、業務に関する情報を一元管理することで、書類や口頭で伝達する手間を省くことが可能です。また、行き違いや伝え忘れから余計な作業が増えることも防げます。
建設業には工程表作成や見積書作成、受発注業務など、さまざまな業務が存在しますが、これらの業務の効率化に役立つ技術やシステムを活用することにより、生産性は大きく向上します。従業員の負担も大幅に軽減でき、時間外労働時間を削減できるでしょう。
労働時間管理にITツールを活用する
DXが加速する現代では、業種を問わずITツールを適切に導入し、業務に生かす必要があります。労務時間の管理には、勤怠管理システム、労務管理システムなどのソフトウエアの導入が業務効率化に有効です。
いろいろなシステムやソフトウエアがあり機能も多様であるため、よく比較、検討したうえで最適なツールを導入・活用することが重要です。
建設業の2024年問題を正しく理解して対策しよう
時間外労働時間の上限規制には強制力があり、猶予期間を過ぎた2024年4月以降は例外が認められなくなります。未対応の企業は早急に対策を講じ、時間外労働の削減に向き合わなければなりません。2024年問題を解決するための取り組みとして、ITツールの活用は効果的な対応方法のひとつです。
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