働き方改革
2025年の崖とは?
指摘されている課題や克服するポイントを解説
公開日:2024 / 6 / 8
2018年、経済産業省が発表した「DXレポート」の中で触れられた「2025年の崖」。システムの老朽化やIT人材の不足などからDXを実現できなければ、大きな経済的損失が生まれるとされるものです。その後、経済産業省は2022年7月に「DXレポート2.2」を発表し、DX推進は進んでいるものの、成果が出ている企業はまだ少ないとしています。
今回は、改めて「2025年の崖」の概要、克服が必要である理由、克服するためのポイントなどについてお伝えします。
「2025年の崖」とは?
2025年の崖とは、経済産業省が2018年9月に発表した「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」で提示したものです。
激化する市場競争の中、あらゆる産業において、デジタル技術による新しい価値の創出が求められています。
しかし日本企業においては既存システムの複雑化やブラックボックス化、IT人材の不足など課題が山積みで、DXはあまり進んでいません。経済産業省では、既存システムを刷新できずにDXが進まなければ、2025年以降毎年最大で12兆円の経済損失が生じると予測しています。
これが2025年の崖です。
「2025年の崖」で指摘された課題
DXレポートでは、企業が抱えるDXに関連する主な課題について、「技術面」「人材面」「経営面」に分けて言及しています。
技術面の課題
- 既存システムの複雑化やブラックボックス化
多くの企業がシステムの刷新を行わず、カスタマイズにより既存システムの延命を図ってきました。その結果、システムの複雑化が進むと同時に担当者以外は誰も使えないブラックボックス化も生み出してしまっています。 - 主要システムのサポート終了
Windows8.1のサポートが2023年1月に終了、Windows10も2025年10月にサポート終了予定(有償の拡張セキュリティ更新プログラム提供により3年間はサポートを継続)です。またSAP社のERPが2025年にサポートを終了(その後、2年間の延期を発表)など、2025年前後で多くの企業が活用する主要システムのサポートが終了することも技術面での重要な課題です。 - サイバーセキュリティのリスク増加
システムの保守運用を行う人材の不足から、サイバー攻撃を受けた際やシステムの故障、不具合が出た際の対応に時間がかかり、サイバーセキュリティのリスクが高まっています。
人材面の課題
- IT人材の不足
IT人材は2015年の時点ですでに17万人が足りないと言われていました。2025年には約43万人が不足すると予測されており、特にAIやIoTなど先端IT人材の不足が大きな課題です。 - 既存システムの担い手である人材の退職・高齢化
先端IT人材と同時に古いプログラム言語を扱える人材も、退職や高齢化により不足してしまうことが大きな課題となっています。現状でも複雑化やブラックボックス化が進む既存システムのカスタマイズや改修を行える人材がいなくなり、業務が滞ってしまうリスクが高まっています。
経営面の課題
- DXを推進できずデジタル競争に負ける
既存システムの複雑化やブラックボックス化、新しいシステムへの刷新が進まない企業では、DXがスムーズに進みません。その結果、新しい製品やサービスの開発、新規事業の創出ができず、DXが進んでいる企業に対しデジタル競争で後れを取っています。 - システム維持費の高騰
既存システムの維持管理費が高騰し、IT予算の9割以上を占める状況になることで、今まで以上に新しいシステムへの刷新を行うことが困難になっています。多くの企業で短期的な観点でのシステム開発が常態化し、長期的な保守・運用費が高騰してしまう技術的負債も課題です。 - システムトラブルやデータ喪失リスクの増加
サイバーセキュリティリスクの増加で、システムトラブルやデータ喪失リスクが増加します。その結果、経営面でも大きな損失を受けるリスクが高まるでしょう。また、サイバー攻撃でデータ窃取や漏えいが起きてしまえば、社会的信用が失墜してしまうリスクも高まります。
「2025年の崖」を克服するための対応策
2025年の崖を克服するには、複雑化・ブラックボックス化した既存システムを刷新し、DXの推進が必要です。DXレポートでは、2025年の崖の克服に向けて、次のような対応策を提示しています。
「DX推進システムガイドライン」の策定
DX実現の基盤となるITシステムに関する意思決定をする際、抑えておくべき事項を明確にしたり、取締役会のメンバーや株主が、企業のDX推進への取り組みをチェックできるようにしたりするために、「DX推進システムガイドライン」の策定を必要としています。「経営戦略におけるDXの位置付け」「DX推進に向けた新たなデジタル技術の活用やレガシーシステム刷新のための体制・仕組み」「実行プロセス」などを盛り込むようにします。
「見える化」指標・診断スキームの構築
ITシステムの現状やITシステム刷新のための体制・仕組み、実行プロセスなどの状況を「見える化」するための評価指標の策定と、その指標を活用した診断スキームの構築、診断結果の活用などについて例示されています。
ITシステム構築におけるコスト・リスク低減のための対策
ITシステムの刷新には膨大なコストと時間がかかる上、リスクも伴います。また、システム刷新後に再度レガシーシステム化する可能性もあるでしょう。そのようなコストやリスクを抑えるために、刷新後のシステムの導入によりどのような成果が見込めるかをステークホルダーで共有する、見える化指標を活用して不要な機能を廃棄する、マイクロサービスの活用やアジャイル開発を検討する、共通プラットホームを構築するといった対策を提示しています。
ユーザー企業・ベンダー企業の新たな関係の構築
ユーザー企業・ベンダー企業間でのトラブルを回避するため、それぞれが目指すべき姿を明確にし、契約ガイドライン策定も含め、新たな関係を構築のための環境整備について触れています。
DX人材の育成・確保
ユーザー企業に求められる人材、ベンダー企業に求められる人材を示すとともに、アジャイル開発やDXやITに関する資格の活用、求められるIT人材のスキルの明確化、学び直し、産学連携での人材育成など、DX人材の育成・確保のためのヒントを示しています。
ITシステム刷新の見通し明確化
ITシステム刷新には時間を要するため、その間のリスク管理も含めて見通しを整理するよう求めています。「2025年」までに既存システムの刷新に集中的に力を注ぎ、新たな価値創出につなげることで、2030年に実質GDP130兆円超の上積みに成功するとしています。
「2025年の崖」を克服するための第一歩を
多くの企業が抱える既存システムの複雑化やブラックボックス化、IT人材の不足などが解決しないと2025年以降、大きな損失が生じるとした「2025年の崖」。経済産業省が2018年に「DXリポート」で発表してから、数年経っているものの、いまだDXが進んでいるとは言えません。
2025年の崖はすぐそこまで来ています。まだ着手していないという企業は、DXレポートの内容を改めて確認し、DX推進システムガイドラインの制定やIT人材の確保・育成など、できるところからすぐにでも取り組む必要があるでしょう。
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