36協定 労務管理

労働時間の基準とは?
法定と所定の違いや割増賃金・計算方法などを解説

公開日:2024 / 6 / 8

働き方改革やコーポレートガバナンスへの取り組みなどの影響もあり、労務管理の厳格化に注力する企業が増加しています。企業として利益の追求は重要ですが、利益ばかりを求め、社会的信用を失っては意味がありません。社会的信用を得るために欠かせないポイントの一つが適切な勤怠管理です。社員の労働時間を把握し、適切に管理することで健康被害の防止やモチベーション向上につながります。

今回は、勤怠管理の基本となる労働時間について、基準や計算方法、遵守に欠かせないポイントを紹介します。

労働時間とは?

労働時間とは、労働者が雇用者の指揮命令下におかれている時間です。一般的には企業の就業規則や雇用契約書に記載された時間であり、雇用者側からみれば、労働者に対して賃金の支払い義務が発生する時間ともいえます。

労働時間に関して抑えておくべき基準

労働時間を正しく理解するには、「法定労働時間」「所定労働時間」などの把握や「拘束時間」との違いについても知っておかなければなりません。ここでは、労働時間を理解するうえで抑えておくべき基準を解説します。

  法定労働時間

法定労働時間とは、労働基準法第三十二条で定められた労働時間の上限で、1日8時間、週40時間です。原則として企業はこの時間を超えて社員を働かせる場合、労働基準法第三十六条、通称36協定を労使間で合意のもとに締結しなければなりません。

36協定について詳しくは「36協定とは?概要から締結の流れ、メリット・デメリットまで幅広く紹介」をご覧ください。

  所定労働時間

所定労働時間とは、会社が就業規則として定めたもので、始業から終業までの時間から休憩時間を差し引いた時間です。例えば、始業が10時で終業が19時、休憩時間が1時間なら所定労働時間は8時間になります。

なお、所定労働時間は、法定労働時間の範囲内であれば自由に設定可能です。1日の労働時間が5時間でも6時間でも就業規則で定めたものであれば、問題ありません。

  労働時間と拘束時間の違い

労働時間と混乱しやすい言葉に拘束時間があります。

労働時間は休憩時間を除いた実際に労働している時間です。一方、拘束時間は休憩時間を含む始業から終業までの時間といった違いがあります。

先の例でいえば、始業10時、終業19時ですから拘束時間は9時間となります。
拘束時間が法定労働時間の1日8時間を超えていても、休憩時間を除く労働時間が8時間以内であれば法律違反にはなりません。

  休憩時間と残業時間

続いて休憩時間と残業時間についてみていきましょう。

  • 休憩時間
    休憩時間は労働時間に応じて次のように定められています。
    1. 6時間以内:定めなし
    2. 6時間超8時間以内:少なくとも45分間
    3. 8時間超:少なくとも1時間
  • 残業時間(時間外労働)
    1. 法定内残業:法定労働時間内ではあるが所定労働時間を超えた残業
    2. 法定外残業:法定労働時間を超えた残業(36協定の締結が必要で、割増賃金の支払い義務も生じます)

多様な働き方に対応するための労働時間に関する制度

労働時間は多様な働き方に対応するため、次のような制度もあります。

  • 変形時間労働制
    1週間、1ヵ月、1年などの一定期間を平均し、1週間あたりの労働時間を法定労働時間内に収める労働時間制度です。例えば、月曜日と金曜日は9時間労働とする代わりに火曜日と木曜日を7時間労働にするといったもので、就業規則や労使協定で定めます。
  • フレックスタイム制
    1ヵ月以内の一定期間で1週間当たりの労働時間平均が法定労働時間を超えない範囲であれば、始業・終業時刻を労働者が自主的に設定できる制度です。会社によってはコアタイムを設定している場合があるものの、基本的には労働者の裁量で労働時間を決められます。就業規則で導入を定めたうえで、労使協定により運用するものです。
  • みなし労働時間制

    みなし労働時間制は、「事業場外みなし労働時間制」「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」の3つに分類されます。

    事業場外みなし労働時間制とは、会社以外で働いていて、労働時間の算定が難しい場合に、原則として会社が定める所定労働時間の労働をしたとみなす制度です。

    専門事業型裁量労働制とは、弁護士や建築士、デザイナーなど専門性の高い仕事で、実際の労働時間にかかわらず、労使協定で決めた労働時間を果したとみなします。

    企画業務型裁量労働制とは、企画、立案、調査及び分析などの業務を行うものに向けた制動です。実際の労働時間にかかわらず、労使委員会で定めた労働時間を果したとみなします。

労働時間の計算方法と賃金

労働時間の計算方法と賃金について、1日の所定労働時間が始業9時、終業18時、休憩時間1時間で8時間として解説します。

  20時まで働いた場合

20時まで働けば2時間の法定外残業となります。法定外残業時間の賃金は、残業をしない場合の1ヵ月の賃金を時間換算したうえで、その25%増しで支払わなければなりません。

仮に時給単価2,000円の場合、残業代は次のとおりです。

2,000円×1.25×2時間=5,000円

この場合の1日の賃金は次のようになります。
(2,000円×8時間)+5,000円=21,000円

  23時まで働いた場合

22時を過ぎると深夜残業の割増賃金として25%増しで支払う必要があります。法定外残業にかかる25%増しに、深夜残業にかかる25%も増し、合計50%割増です。

そのため、残業代は22時までの4時間の残業代と、22時から23時までの残業代をあわせて次のようになります。
(2,500円×4時間)+{(2,000円×1.5)×1時間}=13,000円

この場合の1日の賃金は次のとおりです。
(2,000円×8時間)+13,000円=29,000円

  所定労働時間が6時間で18時まで働いた場合

1日の所定労働時間が始業9時、終業16時、休憩時間1時間の6時間勤務で20時まで働いた場合、18時までは法定労働時間内となります。そのため、割増賃金は発生しません。

この場合の1日の賃金は次のとおりです。
(2,000円×6時間)+(2,000円×2時間)=16,000円

社員の労働時間を管理するポイント

労働基準法では、使用者(経営者や人事担当者など)に、社員の労働時間を適切に管理することを義務付けています。

労働時間を適切に管理するためには、法定労働時間や所定労働時間、拘束時間との違い、36協定、法定外残業に対する割増賃金など、必要な知識を整理し、正しく理解する必要があります。そのうえで、社員一人ひとりの始業時間や休憩時間、残業時間などを正確に把握し、「法定外残業があった場合の割増賃金」「時間外労働の上限規制」などを厳守しなければなりません。

しかし社員一人ひとりの始業時間や休憩時間などを正確に把握するには、労務担当者に大きな負担がかかります。全社員の勤怠管理を限られた人数の労務担当者が担う場合は、労務担当者の長時間労働につながってしまう恐れがあります。

そういった事態を避けるには、勤怠管理システムの導入が有効です。システムの活用により、勤怠管理にかかる担当者の負担を減らせるだけでなく、正確性も担保できます。長時間労働抑止システムを併用することで、より効率的な労働時間の管理が可能になります。

積極的にシステムやツールを活用することも、正しく労働時間を管理するためのポイントといえるでしょう。

労働時間の正しい管理にはシステム・ツールの活用がおすすめ

これまで猶予期間が設けられていた建設業や自動車運転の業務、医業などにおいても、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されています。すでに上限規制が適用されていた業種も含めて、あらためて法定労働時間や所定労働時間の意味、割町賃金率などについて確認し、正しく対応できるようにしておきましょう。

なお、社員の勤怠管理においてはシステムやツールの活用が有効です。労務担当者の負担やミスのリスクを抑えた管理が可能です。

勤怠管理に役立つシステムの一つとして長時間労働抑止システム「Chronowis」があります。Chronowisでは、パソコンの利用制限と稼働ログの取得により、勤怠管理システムとの併用で長時間労働の抑止が行えます。テレワークが定着しつつある今、上司に隠れての残業防止も可能です。労働時間の基準を抑え、正しい勤怠管理を目指す際には、お気軽にお問い合わせください。

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