中長期戦略の進捗

※このコンテンツは、2023年6月のPanasonic Group 事業会社戦略説明会 2023の発表内容を抜粋したものです。
掲載されている情報は2023年6月現在のものであり、変更される可能性があります。

※このコンテンツは、2023年6月のPanasonic Group 事業会社戦略説明会 2023の発表内容を抜粋したものです。
掲載されている情報は2023年6月現在のものであり、変さらされる可能性があります。

中長期戦略の全体像と経営目標

パナソニック エナジーは、2022年6月に中長期戦略を発表しています。車載事業、産業・民生事業の2つの事業での両輪経営の実践に加えて、環境貢献などのESG経営を推進し、社会へのお役立ちを高めていきます。経営目標としては、2030年度に、売上高は3兆円を超える水準を目指しています。また、EBITDA (注1)をKGIとして設定し、車載事業で成長性、産業・民生事業で収益性を牽引することで、IRA (注2) による影響を含まない実力値ベースで、20%のEBITDA 率を目指します。ESG経営については、E(Environment)・S(Social)・G(Governance)それぞれの高度化を図る中で、カーボンフットプリント(注3)をKGIとして掲げ、事業活動・サプライチェーンで排出するCO2の削減を中心に推進します。

足元の2023年度は、販売増を織り込むほか、材料価格と価格転嫁のバランス正常化や合理化等の推進により、成長投資に伴う固定費増をカバーし、IRAによる影響を含まない実力値でも増収増益、調整後営業利益では、550億円(昨年度比+154億円)を見込んでいます。2024年度までの中期経営目標では、IRAによる影響を含まない実力値でのEBITDAを1,500億円(EBITD率16%)、累積営業キャッシュフローを3,300億円と設定し、IRAも活用しながら次の投資に繋げていきます。

(注1)EBITDA:営業利益+減価償却費
(注2)IRA:Inflation Reduction Act(米国インフレ抑制法)。2022年に米国で成立した、過度なインフレを抑制すると同時にエネルギー安全保障や気候変動対策を迅速に進めることを目的とした法律。製造事業者に対して、電池セルの販売実績に基づいて税額控除を適用することが盛り込まれている。
(注3)カーボンフットプリント:原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2換算で表した数字

図:売上・EBITDA率推移
図:23年度調整後営業利益対前年分析と、24年度までの中期経営目標

2022年度総括

成長投資については、車載事業、産業・民生事業ともに着実に進捗しています。車載事業では米国カンザス州に北米第2拠点の建設を進めており、当初の計画通り2024年度内の量産開始を計画しています。生産品目は、お客様との協議の中で、4680サイズから実績のある2170サイズに変更していますが、生産能力を30GWh増強する点に変更はありません。新型電池の4680サイズは、高容量化技術の導入に目途が立ったことから、和歌山工場での量産開始時期を見直し、2024年度上期中に量産を開始する予定です。現在、量産設備の搬入および立上げを開始しています。産業・民生事業でも、電化・電動化や蓄電などの市場拡大に向けた成長投資を行っており、徳島工場や中国・無錫工場の新ラインで、2023年度中の量産開始に向けて設備導入を開始、順調に進捗しています。

競争力強化の面においては、車載事業では、ネバダ工場における熟練度に依存しない生産体制の構築により、生産性やロスの改善が進み、当初の目標を10%以上上回る成果を実現。2022年度は材料価格の高騰の一部を価格転嫁・合理化で打ち返すことができず減益となりましたが、2023年度は材料高騰と価格転嫁バランスの正常化を見込んでおり、サプライチェーンの強靭化や原価力の向上を進めます。産業・民生事業では、お客様へ高度なモジュール・システムソリューションを提案、蓄電装置等で用途が拡大しています。2022年度は下期からの市況悪化により減益となりましたが、2023年度は、外部環境変化に対して柔軟に対応する取り組みを加速します。

図:2022年度総括の表

車載事業の戦略

急速に拡大するEV需要に対応するため、2030年度までに、車載電池のグローバル生産能力を200GWhへ高めていきます。競争力強化やサプライチェーンの強靭化を推進し、カンザス工場の次の北米新生産拠点についても2023年度中に決定する予定です。売上高は2030年度に2.5兆円までの拡大を目指すほか、EBITDA率についても継続的に改善を進めます。これまで戦略パートナーとの連携により他社に先行して実績を積み重ねて来た北米市場において、生産能力を拡大させながら競争優位性を強固にしていきます。

図:車載事業における売上・EBITDA率推移グラフ、戦略骨子と主要取組みの表

具体的には、競争力強化、サプライチェーンの強靭化、および生産能力の拡大の3点に取り組みます。
競争力強化を図る重要ポイントは、「高容量化」と「生産性向上」です。高容量化では、バッテリー技術の先駆者としての技術革新を継続、2030年に体積当たりエネルギー密度を現行の25%アップとなる1,000Wh/Lへ高めます。2170サイズにおいては、容量を従来比で5%向上させた次世代セルを2025年度までに立ち上げるとともに、新材料を採用しさらなる高容量化の実現を目指します。4680サイズでは、当初の予定よりも高容量化技術を用いた製品で、和歌山工場での立ち上げを予定しています。

生産性向上に関しては、ネバダ工場では、継続的な生産能力改善に加えて次世代セルへの切り替えを進め、2025年度には生産能力を現行からGWh単位で10%向上させる計画です。カンザス工場では、ネバダ工場での経験を活かし工場の自動化率をさらに高める、GWhあたりで人生産性の20%向上と設備投資額の10%削減を盛り込んでいます。2023年度中に決定する次期新工場においても、ネバダ、カンザスの経験を活かした競争力の高い工場に進化させていきます。

図:30年までの電池の高容量化のグラフと、生産性向上/投資効率改善の表

加えて、技術・モノづくり力の強化に向けて、開発効率向上やリソース増強を図るべく、大阪の門真と住之江に新拠点を開設します。門真拠点では、次世代材料/プロセス開発から新商品開発までを行う「集約型開発拠点」として、DXやシミュレーションの活用により開発期間の短縮を図り、次世代セルの開発を加速します。住之江工場内に新設する拠点では、生産設備・工法開発に携わる人財と設備を集約・拡充します。次世代モノづくり開発から既存設備の生産性向上まで「電池モノづくりを支えるマザー開発拠点」として迅速な現場フィードバックと課題解決を可能にし、新しい技術をスムーズに量産化まで繋げていきます。技術・モノづくりのコア人財強化に向け、2025年度までに国内で1,000人の増強(2022年度比)を計画しています。

図:新拠点開設(住之江・門真)

2030年度までに生産能力を200GWhへ増強する計画の中で、サプライチェーンを量と質(環境性能)の両面から構築、強靭化していきます。2024年度に立ち上がるカンザス工場の増産については、材料調達の量の確保は目途がついており、2030年度に向けては、調達先の多様化を推進しながら必要な調達分を確保していきます。
北米での現地調達化や、戦略的オフテイク契約等による主要材料の長期確保に努めるほか、リサイクル材や再生可能エネルギーを利用した材料を積極的に活用することで、カーボンフットプリントを2030年度には2021年度比で半減させることを目指します。各国の政府や研究機関、サプライヤーとの連携を深め、世界規模での脱炭素への取り組みを推進していきます。

図:30年度までの生産能力増強計画/調達構成のグラフと取り組み

産業・民生事業の戦略

産業・民生事業では、中長期的に成長が見込まれる社会・生活インフラ分野に注力し、高い安全性規格に適合する信頼性をベースに、より高度なシステム事業を拡大していきます。2022年度に3,000億円であった売上高を、収益体質を強化しながら、2030年度には倍増の6,000億円まで引き上げていきます。

データセンター用蓄電システムは、今後も拡大が見込まれており、バックアップ電源機能に加え、省電力で運用できるような次世代システムも市場に投入していきます。本事業では、長期信頼性の高い電池セルと独自の制御アルゴリズムに加え、高信頼な安全機構設計での市場信頼性を武器に高い市場シェアを維持してきましたが、今後はこれらの技術を、家庭用蓄電システムにも横展開していきます。家庭用蓄電システムの展開においては、日本では2023年6月から量産および販売を開始し、米国では下期からの販売を計画しています。米国においてはIRA 25D (注4)の対象となっており、間接的に事業拡大の機会が増えるものと考えています。

将来に向けては、新規領域として、建設機械や二輪車等の電動化への貢献にチャレンジしていきます。業界をリードするお客様と、電動化に向けた新しいソリューションの創出を進めています。 

(注4)IRA 25D :IRAの成立により、従来からある家庭用クリーンエナジークレジットに家庭用蓄電池が追加された。補助金支給対象はエンドユーザーで、2035年までに設置されたものが対象。電池セルの生産国の要件はない。

図:産業民生事業における売上・EBITDA率推移グラフ、中長期戦略と取組み進捗

環境貢献への取り組み

パナソニックグループの長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」で定める、自社の製品や技術の使用により抑制できる「CO2削減貢献量」について、2030年度に約1億トンを削減するというグループ目標があります。そのうち6割を占める中核事業として、当社は6,000万トンのCO2削減に貢献していきます。EVに加え、EV以外の電動化機器の普及にも貢献を図り、さらなるCO2削減の拡大に努めていきます。

自社の事業活動におけるカーボンニュートラル化も推進しており、 2023年5月時点では全20拠点中10拠点で達成、今後国内では2025年度、グローバル全拠点では2028年度の達成を目指しています。国内においては電力会社とのPPA(注5)により、2022年度から消費電力の10%を再生可能エネルギーで調達しています。今後は、水素燃料電池などの新たな技術を導入しながら、早期に目標を達成していきます。

また、限りある資源を有効に活用するため、資源循環の取り組みをパートナー企業と連携し加速させていきます。2023年度より、従来使い捨てられていた乾電池を回収して電池材料に再生させるという、一次電池循環モデルの構築に向けた実証実験を国内外の流通企業(国内:イオンリテール株式会社様、タイ:CP All PCL様)と共同で開始しました。また、二次電池については、Redwood Materials Inc.様と正極材と銅箔のリサイクルを推進、今後も積極的に外部連携を強化し、資源循環の輪を形成していきます。

(注5)PPA: Power Purchase Agreement(電力販売契約)。企業などが直接発電事業者と再生可能エネルギーの電力を長期に購入する契約

図:CO2削減貢献量、自社カーボンニュートラル化、資源循環